4 / 39
第一章
【一】星夜ー開かずの部屋③
しおりを挟む
「みたなぁ~」
「ぎゃー!」
「みゃー!」
地を這う声が響き渡り、俺は叫んでしまった。パニクったルビーが一目散にドアの外へと走る。戸口には、メガネをかけたボサボサ頭のラン祖母ちゃんが……。
「星夜……見てしまったね」
「ばあちゃん、これは一体なに……?」
「これはね、BL漫画よ。しかも通販かイベントでしか手に入らない『薄い本』よ!」
叫んだのは祖母ちゃんではなかった。
「ル、ルカ……」
「ルカ叔母さん」
パジャマ姿のルカ叔母さんの解説が続く。
「しかもこれは、私が沼っていた二次創作ではなく、完全オリジナル。すなわち、一次創作ジャンルの作品ね。ふむふむ。発行が昨年の秋。てことは、『ジェイ庭INオータム』の新刊と見たわ」
「沼って……ジェイ庭? 一次創作?」
言ってることが、ちんぷんかんぷんだよ。
「ルカが若い頃に同人誌を書いているのは知ってたわ」
「うそー。バレてたのー?」
「叔母さん、漫画描いてたんだ……」
「おほほほ。カップリング、聞きたい?」
「ルカ、星夜はBLのことは分からないから、およしなさい」
祖母ちゃんが叔母さんをたしなめる。
「え、BLって、ボーイズラブだよね?」
「あら、星夜も知ってるじゃん」
「クラスの女子がスマホで漫画見てたぞ」
「ああー。それは商業の漫画でしょ。ふふふこれはね、もっとすごいんです……」
「ルカ、止めなさい。星夜はまだ十六歳よ」
「これ十八歳以下はダメなんだわ。あと二年待ってね」
「いや、なんとなく想像つくから遠慮しておく」
「やっぱりそれが、一般男子高校生の反応だよね……」
ラン祖母ちゃんがガックリと肩を落として、戸口から去ろうとしている。不味い。趣味を否定したと思って祖母ちゃんを傷つけてしまったのか?
「いや、俺はBLは好きでも嫌いでもないだけだよ。俺はゲームとか、読書が好きだし」
「そ、そうだよ。趣味は人それぞれだよ! だからお母さんも倉庫に隠しておかないで、自分の部屋に置いたらいいじゃん!」
ルカ叔母さんが必死で氷点下に冷え込んだ場を取り繕う。
どうなんだ。フォローは効いたのか?
「そ、そうしようかな……」
「うん、うん。そうしなよ!」
「それがいいよ、ラン祖母ちゃん!」
俺は素早く漫画本を拾って祖母ちゃんへ渡した。
「ありがとう。星夜は優しいねえ」
祖母ちゃんは嬉しそうに受け取って、衝撃発言をした。
「実はね、祖母ちゃんはネットでBL小説を書いてるんだ~」
えええええええ~?
「ぎゃー!」
「みゃー!」
地を這う声が響き渡り、俺は叫んでしまった。パニクったルビーが一目散にドアの外へと走る。戸口には、メガネをかけたボサボサ頭のラン祖母ちゃんが……。
「星夜……見てしまったね」
「ばあちゃん、これは一体なに……?」
「これはね、BL漫画よ。しかも通販かイベントでしか手に入らない『薄い本』よ!」
叫んだのは祖母ちゃんではなかった。
「ル、ルカ……」
「ルカ叔母さん」
パジャマ姿のルカ叔母さんの解説が続く。
「しかもこれは、私が沼っていた二次創作ではなく、完全オリジナル。すなわち、一次創作ジャンルの作品ね。ふむふむ。発行が昨年の秋。てことは、『ジェイ庭INオータム』の新刊と見たわ」
「沼って……ジェイ庭? 一次創作?」
言ってることが、ちんぷんかんぷんだよ。
「ルカが若い頃に同人誌を書いているのは知ってたわ」
「うそー。バレてたのー?」
「叔母さん、漫画描いてたんだ……」
「おほほほ。カップリング、聞きたい?」
「ルカ、星夜はBLのことは分からないから、およしなさい」
祖母ちゃんが叔母さんをたしなめる。
「え、BLって、ボーイズラブだよね?」
「あら、星夜も知ってるじゃん」
「クラスの女子がスマホで漫画見てたぞ」
「ああー。それは商業の漫画でしょ。ふふふこれはね、もっとすごいんです……」
「ルカ、止めなさい。星夜はまだ十六歳よ」
「これ十八歳以下はダメなんだわ。あと二年待ってね」
「いや、なんとなく想像つくから遠慮しておく」
「やっぱりそれが、一般男子高校生の反応だよね……」
ラン祖母ちゃんがガックリと肩を落として、戸口から去ろうとしている。不味い。趣味を否定したと思って祖母ちゃんを傷つけてしまったのか?
「いや、俺はBLは好きでも嫌いでもないだけだよ。俺はゲームとか、読書が好きだし」
「そ、そうだよ。趣味は人それぞれだよ! だからお母さんも倉庫に隠しておかないで、自分の部屋に置いたらいいじゃん!」
ルカ叔母さんが必死で氷点下に冷え込んだ場を取り繕う。
どうなんだ。フォローは効いたのか?
「そ、そうしようかな……」
「うん、うん。そうしなよ!」
「それがいいよ、ラン祖母ちゃん!」
俺は素早く漫画本を拾って祖母ちゃんへ渡した。
「ありがとう。星夜は優しいねえ」
祖母ちゃんは嬉しそうに受け取って、衝撃発言をした。
「実はね、祖母ちゃんはネットでBL小説を書いてるんだ~」
えええええええ~?
100
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる