【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第一章

【一】星夜ー開かずの部屋③

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「みたなぁ~」
「ぎゃー!」
「みゃー!」
 地を這う声が響き渡り、俺は叫んでしまった。パニクったルビーが一目散にドアの外へと走る。戸口には、メガネをかけたボサボサ頭のラン祖母ちゃんが……。

「星夜……見てしまったね」
「ばあちゃん、これは一体なに……?」
「これはね、BL漫画よ。しかも通販かイベントでしか手に入らない『薄い本』よ!」

 叫んだのは祖母ちゃんではなかった。

「ル、ルカ……」
「ルカ叔母さん」

 パジャマ姿のルカ叔母さんの解説が続く。

「しかもこれは、私が沼っていた二次創作ではなく、完全オリジナル。すなわち、一次創作ジャンルの作品ね。ふむふむ。発行が昨年の秋。てことは、『ジェイ庭INオータム』の新刊と見たわ」
「沼って……ジェイ庭? 一次創作?」

 言ってることが、ちんぷんかんぷんだよ。

「ルカが若い頃に同人誌を書いているのは知ってたわ」
「うそー。バレてたのー?」
「叔母さん、漫画描いてたんだ……」
「おほほほ。カップリング、聞きたい?」
「ルカ、星夜はBLのことは分からないから、およしなさい」

 祖母ちゃんが叔母さんをたしなめる。

「え、BLって、ボーイズラブだよね?」
「あら、星夜も知ってるじゃん」
「クラスの女子がスマホで漫画見てたぞ」
「ああー。それは商業の漫画でしょ。ふふふこれはね、もっとすごいんです……」
「ルカ、止めなさい。星夜はまだ十六歳よ」
「これ十八歳以下はダメなんだわ。あと二年待ってね」
「いや、なんとなく想像つくから遠慮しておく」
「やっぱりそれが、一般男子高校生の反応だよね……」

 ラン祖母ちゃんがガックリと肩を落として、戸口から去ろうとしている。不味い。趣味を否定したと思って祖母ちゃんを傷つけてしまったのか?

「いや、俺はBLは好きでも嫌いでもないだけだよ。俺はゲームとか、読書が好きだし」

「そ、そうだよ。趣味は人それぞれだよ! だからお母さんも倉庫に隠しておかないで、自分の部屋に置いたらいいじゃん!」

 ルカ叔母さんが必死で氷点下に冷え込んだ場を取り繕う。
 どうなんだ。フォローは効いたのか?

「そ、そうしようかな……」
「うん、うん。そうしなよ!」
「それがいいよ、ラン祖母ちゃん!」

 俺は素早く漫画本を拾って祖母ちゃんへ渡した。

「ありがとう。星夜は優しいねえ」

 祖母ちゃんは嬉しそうに受け取って、衝撃発言をした。

「実はね、祖母ちゃんはネットでBL小説を書いてるんだ~」

 えええええええ~?
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