聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

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新たな戦い?

自分が彼女を愛したことが、彼らを不幸にしたのかもしれない➁

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 カサギの2人妻から手紙が送られてきた。密かに、ウスイがシュン王国に送った使節に手渡したものである。
 ミナにあてたものもあった。
「泥棒猫」
「恩知らず」
「裏切り者」
「愛しているのは私だ」
等々、前半は彼女を罵る内容だった。が、後半は、
「私達はあの方を守ることも出来ず、殉じることも出来ませんでした。しかも、あの方を裏切るような人生をこれから送らざるを得ない状態です。どうか、あの方を助け、支え、愛して尽くして下さい。」
だった。
 ミナからは、
「あなた方は、結局あの方についていけなかったのです。私だけが、あの方とともに歩めたのです。それこそが愛する者といえるのです。」
と前半で言いながら、
「あの方のあなた方を愛するお気持ちは変わりません。それを知りつつ、私はあの方を愛し、尽くし、支え、守っていくことをお約束します。」
との手紙をだしている。

"ツチイと結ばれたいために、ケイとの婚約を破棄した。そのことが、まわりまわってカサギと二人妻の苦悩をもたらしたのかもしれないな。"と思えてならなかった。
"それがなければ、カサギは婚約者と結婚していたし・・・そうなると、あの二人と結ばれなかった・・・。かえって良かったのか?それでも誰も、国を捨てることも、別れもなかった・・・。やはり、その方がよかったのか?"とウスイは悩んだ。

 それでも、ツチイは彼に、
「本当に結構悪党ね、あなたは。」
に言ったように、彼は、シュン王国側には受け入れたのは、あくまで
「魔族の高位の貴族であるニワ殿とその夫殿、そして二人の家臣達である」
と回答しながら、提供した館や領地は、ニワの夫、カサギに与えているのである。
 シユン王国に敵対行為はしないけれど、その戦争に協力はしない、和平工作はするし、教皇庁を通じての食糧、金銭協力は、多いとは言えないが、やっている。やるべきことは、えげつないくらいにやっている。
「私とのことを後悔していない?」
 ツチイもカサギとその妻達のことは、同情も感じていた。
「君とのことは後悔していない。それは嘘かもしれない。君と一緒にいれなかなった時の後悔の方がずっと大きかったと思う。俺は、他人のために自分の不幸を選ぶほどの善人ではない、悪党だよ。」
 そう言って、彼女を抱きしめた。彼女も、
「私も悪党よ、同じ…。」
と言って、抱きしめ返した。

 その頃、ミナはカサギの上になって、喘ぎながら、
「今、あの二人が他の男の下で喘いでいると考えて興奮しているでしょう?わ、私が忘れさせてあげるー!」
と激しく体を動かしていた。それを、支えながら彼も激しく突き上げながら、胸を手で揉みながら、彼女にだけ思いを集中させようとしていた。

「私のせいじゃないわ…やっぱり私のせい?私のせいかもしれない…。いや、私のせいじゃない・・・ウスイが私を婚約破棄したせいよ・・・でも、やっぱり私が・・・。」
 ケイだった。自分が何かを決めたわけではない、決めたことはないのだ全く。だが、自分が第一王子、当時王太子のカサギとの結婚の話がでたことから始まったのである。半狂乱するように、悶える様に、部屋の中を歩き回った。サラギの別邸だった。
「君のせいじゃない。兄上も、あの二人も自分が選んだことなんだ。自業自得なんだし、彼女達は思いを遂げたんだ、君のお蔭で。」
 彼は必死になって、次第に狂気の表情に変わってゆきかけて見えるケイを必死に慰め、抱きしめるしかなかった。
「き、君は僕と結婚したことを後悔しているのか?ぼ、僕は君と結婚できて幸せだと思っているのに・・・君はそうじゃないのか?」
 言いながら自分自身の言葉に酔うかのかのように、涙すら流していた。
「わ、私も同じです―!サラギ様に出会えて、結婚出来て幸せです。ど、どんなに他の人が不幸になっても離れません!」
と彼女は叫んでいた。
「僕だって同じだよ。」
 ケイの目が次第に落ち着いていくのに安心して、唇を優しく重ねた。ケイも応じると、そのまま我慢できないというように、2人は争って舌を差し入れあった。

「あらあら・・・。お二人とも・・・まだ日が高いと言うのに・・・・。」
「本当にお仲がよろしいこと・・・。」
「お二人をお守りしていかないと。」
「そうですね、微力ですけど。」
 侍女達が閉じられたドアのところで、耳をドアに押し付けて、中の二人の声を聞きながら、囁き合っていた。


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