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6.ピンチはチャンスと言うが、それは絶対に嘘だ(笑顔で乗り切れない!)
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しおりを挟む「先方様が大変ご立腹なのよ! 大切な彼女さまへのプレゼントにこの問題商品をお選びいただいた為に、付属のアクセサリーが切れているとお怒りなの。大事な上顧客様で、もう今後一切わたくし共の店では買わないと、そうおっしゃられているのよ!」
ああ、それで大変な剣幕で浅岡専務の所に連絡を入れたのね。
ていうか、何でこんな面倒な事になっちゃっているの?
ちゃんと検品した商品に、再度不具合があるなんて絶対にあり得ないよ。でも、実際問題、目の前のオバサンが怒っているんだもんなぁ。
ああ、やりきれない。
「年間一億円の売り上げ損出よ。損害賠償を求めたいわ! 裁判よ!」
は!?
そんな裁判聞いたことないし!
「お言葉ですが――」
「杉浦!」
反論しようとした私を、社長が咎めた。
何で・・・・。そんな意味の分からない裁判なんか絶対にゴメンだから!
「お客様をご満足させられなかった点につきましては、大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。しかし、そのような損害賠償は、弊社で補填出来かねます。商品代金の方はお返し、商品の回収にて対応させて頂きたいのですが」
「話にならないわ!」
「ですが、弊社もそのような売上補填の代金を支払うなど、到底無理な話で御座います。一億円の大金を、用意する事は出来ません」
「だったら裁判で争いましょう」
そんな・・・・。ここでそんな裁判を起こされたりしたら、きっと新商品の開発どころではなくなってしまう。
一万足キャンセルの材料を使わなきゃいけないし、当てにしていた融資が駄目になったものだから、金策にも再度走らなきゃいけないし、やる事はいっぱいあるのに、そんな意味不明な裁判を受けている時間はないわ!
「大変申し訳ございませんでした! どうかお許しいただけないでしょうか。お客様の下へも直接こちらが謝りに伺います。どうか、この通りで御座います」
深く頭を下げる私に、オバサンはフンと鼻をならした。
「そこまで言うなら、貴女一人でお得意様に謝りに行って頂戴。お許しが貰えたら、裁判は起こしません」
「本当ですか!?」
「ええ。貴女に出来るならね」
不敵な笑みを浮かべられた。やれるものならやってみなさい――彼女の顔はそんな風に告げていた。
「では早速お願い。お客様の所へは、店の者に送らせるわ。社長様はお引き取り頂いて結構ですけど」
「わたくしも杉浦と同行させていただきます」
福士社長が申し出てくれた。
「お客様は男性嫌いなの。女性社員ならまだ何とかお会い頂けると思うけれど、まあ、気難しい方だから、お会い頂けるかどうかもわからないけれどね。そういう訳ですので、社長様は先にお帰りになられた方が得策よ」
こう言われては仕方ない。福士社長は一旦会社に戻る事になった。私は、説得が上手く行けばK&Sの店舗の方がフクシまで私を送ってくれると言ってくれたが、丁重にお断りをした。
電車やタクシーがあるのだ。自分一人なら、何とでもなる。
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