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9.遂に神原と対決!(ハラハラドキドキ)
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バランスを崩して玄関に膝をついた人物――それは、フクシの社員で、イケメンホープの大滝君だった。あの、アンクレット修理の時、一緒に頑張ってくれた彼だ。
「役者も揃った事だ。神原社長にオトシマエ、きっちりつけて貰うから。さて、邪魔するよ」
日下部さんと大滝君の首根っこを引っ掴み、社長が神原の同意も取らず勝手にリビングの方へ大股でやって来た。
「不法侵入で訴えますよ、福士社長」
「は? 不法侵入だぁ? 俺の会社に親族入社させて不法侵入しているのは、そもそもそっちだろうが!」
社長がピシャリと言い放った。
し・・・・んぞく?
え?
一体誰が?
フクシに入社って事は・・・・大滝君が、神原の・・・・親族、って、コト?
待って。待って。何か、色々ついて行けない!
広いリビングに福士社長がドスドスと乱暴に大股で歩いて入ってきたかと思ったら、春日部さんと大滝君を床へ放り投げた。
福士社長は隅の方に移動して成り行きを見守っていた私を見つけるや否や、優しく微笑んでくれた。「紗那。一人でよく頑張ったな。迎えに来た」
迎え・・・・?
どうして社長が?
私、一言も貴方に相談していないのに・・・・?
でも、安心したら胸に熱いものがこみ上げた。たちまち目が潤み、一筋涙となって零れ落ちた。
「おいで、紗那」
「しゃ・・・・ちょう」
「怖かっただろう。もう大丈夫だ」
ひとつ、ふたつ・・・・涙が幾筋も頬を伝い、堪らず彼の傍に駆け寄った。
無事でよかった、と呟かれ、ぎゅっと抱きしめて貰い、心の底から安心した。
「福士社長! これは一体、どういうことですか! 何故貴方が、私の家にこの二人を連れてこられたのか、理解に苦しみますね。勘違いも甚だしい!」
神原が苦し紛れに言い放ったが、大滝君が項垂れた首を左右に振って拒否した。
「アニキ、無駄だよ。福士社長は・・・・もう、全部知っているんだ。俺の素上も、アニキが裏で手を引いていたことも、鈴木野さんやK&Sの事も、紗那さんを神原に迎え入れようとしていた事も、全部」
アニキですって!?
じゃあ、大滝君は・・・・神原社長の血縁者って・・・・コト?
「紗那は状況が解らないよな。えーっと・・・・軽く説明すると、大滝の言う通りで彼は神原の弟だ。但し母親が違う、異母兄弟なんだ。先代が従業員の女に手を出し、その時授かったのが大滝だ。残念ながら遊びだったみたいだし、はした金で縁切りされて、最初は恨んでいたんだろう? でも、金で神原に丸め込まれた。母親の再婚相手が相当なギャンブル好きで、大層な借金があったし無理も無いか?」
大滝君は唇を噛み締めて俯いている。彼の様子から察するに、社長の言っている事は本当なのだろう。
更に社長は目の笑っていない笑顔で春日部さんに向き直った。
「春日部さんは、フクシへの融資妨害を頼まれたんですよね? ほしぞら銀行の支店長に直々に融資の件を訪ねに行きましたら、是非とも当行で扱いたい案件だとおっしゃられましたよ? あれあれおかしいですね、春日部さんの猛反対にあって融資が下りないみたいなので、他行に話を持って行こうと思っていたんですよ、って言っておきましたがね」
笑顔で春日部さんに社長が伝えたら、彼の顔が見る間に青ざめた。
「役者も揃った事だ。神原社長にオトシマエ、きっちりつけて貰うから。さて、邪魔するよ」
日下部さんと大滝君の首根っこを引っ掴み、社長が神原の同意も取らず勝手にリビングの方へ大股でやって来た。
「不法侵入で訴えますよ、福士社長」
「は? 不法侵入だぁ? 俺の会社に親族入社させて不法侵入しているのは、そもそもそっちだろうが!」
社長がピシャリと言い放った。
し・・・・んぞく?
え?
一体誰が?
フクシに入社って事は・・・・大滝君が、神原の・・・・親族、って、コト?
待って。待って。何か、色々ついて行けない!
広いリビングに福士社長がドスドスと乱暴に大股で歩いて入ってきたかと思ったら、春日部さんと大滝君を床へ放り投げた。
福士社長は隅の方に移動して成り行きを見守っていた私を見つけるや否や、優しく微笑んでくれた。「紗那。一人でよく頑張ったな。迎えに来た」
迎え・・・・?
どうして社長が?
私、一言も貴方に相談していないのに・・・・?
でも、安心したら胸に熱いものがこみ上げた。たちまち目が潤み、一筋涙となって零れ落ちた。
「おいで、紗那」
「しゃ・・・・ちょう」
「怖かっただろう。もう大丈夫だ」
ひとつ、ふたつ・・・・涙が幾筋も頬を伝い、堪らず彼の傍に駆け寄った。
無事でよかった、と呟かれ、ぎゅっと抱きしめて貰い、心の底から安心した。
「福士社長! これは一体、どういうことですか! 何故貴方が、私の家にこの二人を連れてこられたのか、理解に苦しみますね。勘違いも甚だしい!」
神原が苦し紛れに言い放ったが、大滝君が項垂れた首を左右に振って拒否した。
「アニキ、無駄だよ。福士社長は・・・・もう、全部知っているんだ。俺の素上も、アニキが裏で手を引いていたことも、鈴木野さんやK&Sの事も、紗那さんを神原に迎え入れようとしていた事も、全部」
アニキですって!?
じゃあ、大滝君は・・・・神原社長の血縁者って・・・・コト?
「紗那は状況が解らないよな。えーっと・・・・軽く説明すると、大滝の言う通りで彼は神原の弟だ。但し母親が違う、異母兄弟なんだ。先代が従業員の女に手を出し、その時授かったのが大滝だ。残念ながら遊びだったみたいだし、はした金で縁切りされて、最初は恨んでいたんだろう? でも、金で神原に丸め込まれた。母親の再婚相手が相当なギャンブル好きで、大層な借金があったし無理も無いか?」
大滝君は唇を噛み締めて俯いている。彼の様子から察するに、社長の言っている事は本当なのだろう。
更に社長は目の笑っていない笑顔で春日部さんに向き直った。
「春日部さんは、フクシへの融資妨害を頼まれたんですよね? ほしぞら銀行の支店長に直々に融資の件を訪ねに行きましたら、是非とも当行で扱いたい案件だとおっしゃられましたよ? あれあれおかしいですね、春日部さんの猛反対にあって融資が下りないみたいなので、他行に話を持って行こうと思っていたんですよ、って言っておきましたがね」
笑顔で春日部さんに社長が伝えたら、彼の顔が見る間に青ざめた。
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