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スマイル31・王様に惚れた女
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しおりを挟む「王雅ぁーっ! みーつけたぁ!!」
突然の事だった。王雅の言葉を遮って、真凛ちゃんがやって来た。
私と王雅の間に割り込んできて、真凛ちゃんが王雅に自分の腕を絡ませている。
「王雅。ミューちゃんとナニ喋ってんの? 私というものがありながら」
「はあっ!? ナニ言って――」
再び王雅の言葉を遮り、私に聞こえないように何やら彼に耳打ちしている。
ドクン、と黒い感情が私の中で渦を巻く。
止めてと言ったのに。
どうしてわざわざ目の前で、私の心をかき乱すの。
王雅が伝えようとしてくれていた言葉、続きを聞きたかったのに。
これじゃあ、もう聞けないし、聞きたくない。
「真凛、ありがとよ」
真凛ちゃんと何やら話していた王雅は彼女の頭を優しく撫で、更に彼女の耳元に顔を近づけ、これまた私に聞こえないように話をしている。
「王雅・・・・」真凛ちゃんの瞳が潤んでいる。
「そーいうコトだから」
「・・・・カッコイイ!」
途端に、真凛ちゃんが叫び出した。王雅は「は?」と言って意味の分からないといったような顔を真凛ちゃんに向けている。
「男の中のオトコって感じ! ますます王雅が好きになっちゃった! いいよ。私、待ってるから!」
目の前で、真凛ちゃんがぎゅっと力強く王雅に抱きついた。
その瞬間、私の中で何かが切れた。
「おいっ、真凛、離れろっ! 美羽、助けてっ」
「仲がよろしい事で。お邪魔虫は消えるわ。アイリちゃん、邪魔したら悪いから、あっちへ行きましょう」
黒い感情が私の胸中を占めていた。何故か笑顔が出て、これ以上この場にいるのが耐えられそうになかった。
手を取ったアイリちゃんは、私の手をしっかり握り返してくれて、温かさを感じた。
そうよ。私には可愛い子供たちがいる。
たかが一人の男に、何をここまで動揺させられているの。
王雅なんか、私の中に入る隙は無いの。
どうせ奴隷なんだし、これ以上王様に私の中を踏み荒らさせたりしないわ。
私はマサキ施設を守る、孤高の女王。
強く、気高く、何にも負けない女王でいなくちゃいけないんだから。
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