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第3章 リークハルト侯爵家の秘密
第14話
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その後。
フリージアはこの邸の使用人たちが曲者揃いであるという事実を思い知らされることとなった。
花のお礼を言いに行ったフリージアに、ワッシュは腹を抱えて笑いながら、「それなあ、ブライアンに騙されただけだぞ」と教えた。
フリージアが活けたザーレアの花には、素直に何でも話してしまう効用などない。
ザーレアもまた、水に活けるとただ匂いが強く香るだけだった。
意味ありげな発言の数々はそんな甘ったるい香りが部屋に満ちれば二人のまどろっこしい距離も縮まるのでは、と画策したゆえで、過去にワッシュが匂い攻めをしていたのも本当だったのだから、十分要注意人物であることに変わりはないのだが。
「だけど、そう言われたらなんかそんな気がして、いつもは言えないこともペラペラ言えたんだろ? だったらそれでいいじゃねえか」
そう言われれば、反論もできなかった。
ただ、目に涙を浮かべて、ひいひい笑いながら言われると、顔を真っ赤にせざるをえなかった。
そんなフリージアをワッシュは、「はいはい、そういうかわいい顔は邸に帰って旦那の前でやってくれ」と庭園から追い出したのだった。
そうして赤い顔を冷ましながら邸へと戻ろうとしていたら、フットマンのユウに会い、ぽつりと言われた。
「僕よりも騙されやすい人、初めて見ましたよ。これから頑張ってくださいね?」
この時、この邸での生活は、思ったよりも前途多難であると思い知ったのだ。
ただ。
邸の人達がグレイとフリージアを見守ってくれているのだということだけは、疑いようのない事実だとフリージアはもう知っている。
グレイと向き合えたのも、みんながいたからだ。
フリージア一人だったら、いつまでもうじうじと悩んだまま、すれ違ってしまっていたかもしれない。
あの日の朝、真っ赤な顔のフリージアにみんなが溢れんばかりの笑顔を向けてくれたのは、ちょっと、いや、かなり恥ずかしかったけれど……。
リークハルト侯爵家は、フリージアにとってはもう自分の居場所であるのだと思えた。
ここに生きている今が楽しくて、また来る明日が楽しみで仕方がなかった。
まだフリージアがこの邸に来てから一か月も経っていないのに。
それほどに居心地がよく、毎日が満たされていた。
そして使用人たちにも、確かに変化が起きていた。
フリージアはこの邸の使用人たちが曲者揃いであるという事実を思い知らされることとなった。
花のお礼を言いに行ったフリージアに、ワッシュは腹を抱えて笑いながら、「それなあ、ブライアンに騙されただけだぞ」と教えた。
フリージアが活けたザーレアの花には、素直に何でも話してしまう効用などない。
ザーレアもまた、水に活けるとただ匂いが強く香るだけだった。
意味ありげな発言の数々はそんな甘ったるい香りが部屋に満ちれば二人のまどろっこしい距離も縮まるのでは、と画策したゆえで、過去にワッシュが匂い攻めをしていたのも本当だったのだから、十分要注意人物であることに変わりはないのだが。
「だけど、そう言われたらなんかそんな気がして、いつもは言えないこともペラペラ言えたんだろ? だったらそれでいいじゃねえか」
そう言われれば、反論もできなかった。
ただ、目に涙を浮かべて、ひいひい笑いながら言われると、顔を真っ赤にせざるをえなかった。
そんなフリージアをワッシュは、「はいはい、そういうかわいい顔は邸に帰って旦那の前でやってくれ」と庭園から追い出したのだった。
そうして赤い顔を冷ましながら邸へと戻ろうとしていたら、フットマンのユウに会い、ぽつりと言われた。
「僕よりも騙されやすい人、初めて見ましたよ。これから頑張ってくださいね?」
この時、この邸での生活は、思ったよりも前途多難であると思い知ったのだ。
ただ。
邸の人達がグレイとフリージアを見守ってくれているのだということだけは、疑いようのない事実だとフリージアはもう知っている。
グレイと向き合えたのも、みんながいたからだ。
フリージア一人だったら、いつまでもうじうじと悩んだまま、すれ違ってしまっていたかもしれない。
あの日の朝、真っ赤な顔のフリージアにみんなが溢れんばかりの笑顔を向けてくれたのは、ちょっと、いや、かなり恥ずかしかったけれど……。
リークハルト侯爵家は、フリージアにとってはもう自分の居場所であるのだと思えた。
ここに生きている今が楽しくて、また来る明日が楽しみで仕方がなかった。
まだフリージアがこの邸に来てから一か月も経っていないのに。
それほどに居心地がよく、毎日が満たされていた。
そして使用人たちにも、確かに変化が起きていた。
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