21 / 99
第五章 ねじ曲がった擬似愛
俺の物、彩香
しおりを挟む“色気は足りないが気疲れせずに済みそうだ” そう考え彩香を付き合う相手に選んだ。
相談に乗っていた昇進の話を曖昧な侭にして、補佐役のまま手元に置く理由にもなると踏み講じた策だった。
同部署の部下であるし、二十歳そこそこのネンネなど面倒臭い。 結婚する気は更々無く始めは手を付ける気もしなかった。
自慢では無いが、セフレは常に数人確保している。 ここにキープしていた女子社員は既に手を切ったが、同系列会社と取引先に一人ずつ、後は出会い系を活用している。
捌け口の問題だけならば商売女が適当だが、金を湯水の如く遣うのは如何ともし難い。 その点で年増の既婚者はデート代まで支払ってくれて、気兼ねなく遊ぶに打ってつけなのだ。
彩香と結婚すると、出会い系意外のセフレにはすぐ知れて不味い思いをしそうだ。 他にも俺の勤め先がここと知る女とは切れなければ為らない。
女遊びは今まで通りにはいかないだろうが、又融通の効く女を探せば済む話だ。
結婚せずとも良いと云うことなら、それはそれで楽しめるかも知れないが、同じ会社にいる女と安易に関係を持つのは前の件で懲りた。 あの時はあの女、前いた営業企画部チーム長 江藤佳奈子が。 年増の行かず後家で部内の御局様がだ。 身の程も弁えず俺を口説いてきやがった。
部下とはいえ年配者の誘いを断る訳にいかず、『敵前逃亡?据え膳食わぬは男の恥よね』とまで言われ、嫌々ながら『酒宴での座興ですよ』と念押しての、一回コッキリで関係をもった。
であるにも拘わらず、酔い潰れたところを無理矢理されただの妊娠しただの婚約者にバレただのと云々。 知らぬ所で部長に申し立てられ、俺は窮地に追い込まれた。
(念押したというのに、向こうから誘ってきたというのに。あのクソ女)
調査委員会に呼ばれた挙句、あの女は虚言だったと明かした。 問題行動を起こした江藤は、自主願い扱いで退職させられ安堵したが、あれは一体何がしたかったのか?
が俺もお咎め無しとはいかず、配属替えされた。 辻褄合わせに課長昇進となったが。 としても『花形部署 営業企画部』から『誰でも課 マーケティング課』にだ。
(これがとばっちり以外の何だってんだ)
“女は同僚であっても商品と同じ 何があろうが手を出すな” そんな意のことを監査法人にいる時代、指南されたが経験して思う。
“女子社員に手を出すなら口止めする方法を先立って用意するか結婚で終止符を打たねば為らぬ” と。
それ以来、同僚や新人を摘まむのは面倒くさくて封印してきたが、今回は結婚も考慮するのだから、何にしても問題は持ち上がら無い。
そろそろ身を固めないと今後の昇進にも影響が出そうだ。
俺がこんなに夢中になるってのは想定外だが、周りにもバラした手前、逃げられる訳にはいかないんだよ。
どこまで俺に惚れているのか判然としない今、初めての男ってだけじゃ安心出来ない。
美人にはありがちなツンとした所がなく、誰にもフランクなのは良い……が、男に愛想を振り撒くのは問題だ。
彩香は自分から男にアピールすることはない。 寧ろ一本下がって周りを思ん量っている感じだ。 それは仕事の上でも同じ。
(育ちの良さか)
餓うえている男が憧れるのも仕方ないが、彩香が全く相手にしてないのにも拘らず若い馬鹿共は集る。 他人の女に尻尾を振り捲ってデレデレと、みっともなく盛りやがって。
しかし、彩香に警戒心が薄いのにも原因がある……ここも釘を差して措くべきだろう。
普段はしっかりし過ぎてる位なのに、アノ時には“お母さん”とうわ言のように……まさか本当に処女だったとは驚きだったが、俺を受け入れようと痛みに耐える姿が何とも健気に思えた。
(あの一部始終は、膜を破った俺だけが知っている、フフ)
俺が大事に育て上げないといけない。 あの時に俺の中に芽生えた気持ちは、愛だったのだ。
彩香を愛せるのは俺だけで、彩香の全ては俺だけの物。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる