タブー的幻想録

ももいろ珊瑚

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第四章 変化していった元カレ

悪戯っぽく見詰めた眼差し

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「何かのセールスマンと間違われたかな」

 襟章を外しながらそう言い小さく舌打ちした。
 本人は気付いてない様だけど私の気になってる彼の癖。

「何か気に障りました?」

「いやね。あの人は職業柄『詮索好き』なのだろうと思ってね。俺は男のお喋りは好かない」

「ふふふ。私も同じくです。でも今更それを隠しても遅いですよね?」

 私の揶揄うのに対して彼は「それはどうかな?」と意味深に笑顔を投げ掛けてきた。




 取り敢えずは、とコンビニで彼が差すビニール傘を確保した。 そしてその後、二人は商店街の外れに向け歩いている。
 あそこに見える駄菓子屋が商店街の終わり。 その先は三叉路になっている。
 三叉路を右に進めば旧くからある住宅街へと続く。 お洒落なブティックやカフェが点在していたけど多分、山手に入ってしまい大分歩かないと線路側へは抜けられない。
 左に行けば公園へ戻る筈で、進むなら左なのだが出来れば通りたくない。

 行ったことは無いし地理にも詳しくないけれど、道の先には女性が前を通るのは気恥しい建物が複数あると、遠くからでも目視できる。
 私単独で通るのも嫌だけれど、彼と一緒も更に嫌。
 存在価値が認められない類いの代物は、黒く塗り潰すか、せめて白い布ででも覆い隠すべきだと強く思う。

 (今日は商店街が休みだし、昼間は閉まっているかもしれない……にしても真面目な彼とあの中を歩くなんて……に近い)

「あの先に良い店はあるのかしら? 私はこの当たりの地理に疎くて……新庄さんは、この付近のことも知っているのですよね?」

「『新庄さん』は何でも知ってるよ~」

「じゃあ美味しいお店のことも任せなさいってこと?」

「ああ、それも含め色々とだよ。懇切丁寧に教えてやるから覚悟しろ」

 (また意味深にんでる)

 これも彼の癖のようなことかしら。 口元をニッとさせたまま悪戯っぽく相手の目を覗きこむ様に見詰める。
 仕事上でも時折、同僚がされているのを見る。
 見つめられている相手の反応は、たじろぐ人、期待する人、質問攻めをする人と区々まちまちである。 しかし彼はどの時にも少年の様な面持ちだ。

 彼の魅力のひとつで私は好き。
 それにその後には必ずサプライズが用意されていて、相手は必ず喜ぶのだ。 彼はそれも想定して、この笑み方をするのだろうか。
 彼が見つめるのは、相手の『その後の方の反応』なのかも知れない。



 私達は住宅街へではなく、公園へ戻る方へ歩を進めた。
 公園も通り過ぎ、木々の生い茂る坂道の方へと……



======

――後書きです――

小悪魔のような少年っぽい感じの所作って好感持てません?
好きなんだけど、人にもよるかも。



そうそう、その笑み方ですよ~
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