タブー的幻想録

ももいろ珊瑚

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第十一章 懇ろな図りこと

眼に写る様々な諸々

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 カウンター用であろうチェストがレジ後方の壁に、圧迫感なく積み木アートの如く丁寧に組み上げられている。
 すっきり片せられた入口付近からは、店の奥まで見通せた。

 奥へ進むに従い広さを感じる造りで、今いるカウンター席、壁際はソファー掛けのダイニングテーブル席、小さなステージのあるパーティールームとは適度な段差と照明の明度で仕切られていて、テーブル間は各々が気兼ねしないで良い空間を提供している。
 中央が吹抜け構造の二階にも、窓際に沿うように座席があるのかもしれないが、ここからは配置が見えていない。

 シックで清潔な配色の店中に、明るいタッチと色調の絵が数点飾られている。
 その一つ。 クラシックカーの描かれた50'風のアートフレームが見詰める席に、私達は案内された。

 コートを脱いで壁のフックに吊し、三人の荷物を一つ残した椅子に寄せ私が座席の座り心地を確かめた時、深夜メニューを傍らに抱えたウェーターがやってきた。
 私が安川さんに目で(このコ?)と窺うと、彼女は徐ろに立ち上がり思いきり首を伸ばしキョロキョロ店内を見渡す。

「透なら今休憩中ですヨ」

 吐き捨てる様にそのウェーター君が言った。

「水も持ってこずその物言い?前から思ってたけどアンタ感じ悪いね」

 吉冨さんの凄味を効かせた呟きに、一瞬で固まるウェーター君。 場の雰囲気も固まっちゃう……。

「味もいいしメニューは取り揃えなんだけどー。トリマ、飲みものだけ先に決めよう」

 我意に介さず、って感じで進行する安川さんに助け舟だされた感じのウェーター君。 次からは気をつけようね。
 二人は生ビール、私はシャンディーガフをオーダー。

「注文を通したら私が来たことに伝えてきて!安川のお姉様がお友達を連れお越しになったって言うのよ。食べる分は彼に頼むから。ハイ、キビキビ動く!」

 カウンターをし示した人差し指が勢い、注文をメモする鼻先に現れ、海老ぞったウェーターが脇に挟んでいたトレイを落とした。
 金属音が響き、店内に増え始めた客達は一斉にこちらに目を遣る。
 ウェーターは慌てて落ちたトレイを拾い上げ、訝しむ客達の視線から逃げるようにカウンターへと去る。
 中にいた店長とおぼしき人物と二、三言葉を交わし、何故か口をとんがらかせてこちらへ舞い戻ってきた。

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