【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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人の姿になったユキ

第87話 久々の手術

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「なんじゃ、あの姉妹と知り合いか?」
「まぁちょっと」
「そうか」

 “パンパン”とナンニャさんが手を叩いた。

「はい、全員そろったので朝のミーティングをはじめましょう」

 その後、夜勤者のロアナから日勤者への引継ぎが行われ、自分とユキの紹介が行われた。

 ミーティングも終わり病院内を案内してもらうことになった。

 病床数は100床で、今は40床埋まっていて10名程が妊婦さんだった。

 院内案内をしてもらい重度と思しき患者を診せてもらう事になった。

 ナンニャさんを先頭にジルさんと自分、ユキとついて行く。

 一つの病室の中に入り、1人の若い女性を紹介された。

「こちらが昨夜入院された、マンナンさんです。強い腹痛を訴えてこちらに来まして、浄化で一定の効果があったようなのですが、未だに強い痛みが続いているようなんです」
「先生……こちらの方は……?」

 マンナンさんがナンニャさんを先生と呼んでいた。
 ナンニャさんは先生と呼ばれているのか。

「私よりも人体に知識のある方ですよ、あなたの病を治せるかもしれないですよ」
「どうも、自分は伊東誠明ともうします。少し手を借りても良いですか?」
 
 女性は頭に“?”を浮かせながら、手を差し出してくれた。

「ではちょっと失礼して」

 女性の手に触れ触診を発動させると、小腸の部分に穴があいていた。内容物が腹腔内に漏れ出して腹膜炎を引き起こしていた。

 あかんやつ緊急性の高い病気じゃん!

「小腸穿孔ですね、急ぎ手術しないと!ってものです」
「「「しょーちょーせんこう?」」」

 マンナンさんだけじゃなく、ジルさんナンニャさんも首をかしげていた。

 模型を取り出して説明しようとすると。

「お腹の中にある管に穴があいている病気だね~、その管の中のものが穴から漏れてお腹が痛くなっちゃうの~」

 ユキがざっくり説明していた。合っているんだがもう少し細かく説明できるといいんだけど。

「誠明よ、そうなのか?」
「えぇ、ユキの言う通りですよ、詳しく言うと~」

 模型を使いどこが穴があいているのか等説明したうえで、手術内容も説明した。

「どうしますか?」
「お願いします」

 マンナンさんは即答していた。

「わかりました。ところで、痛みがあまりないようなんですが薬か何か飲んでます?」
「強い痛み止めを飲んでますね」

 ナンニャさんが説明してくれた。

「そうなんですね、院内に出来そう所がないので自分の診療所でいいですかね?」
「それしかなかろう」

 折り畳み式の棒担架を取り出し組み立てた。

「こっちに移ってもらっても?」
「わかりました」

 マンナンさんに担架に移ってもらった。

「ユキ前お願いしていい?」
「いいよ~誠明のペースに合わせるね~」
「お願い」

 その後マンナンさんを自分の診療所の手術室に移送した。

「ユキ、マンナンさんの着替えと、手術の時のシートの準備とかお願いしていいかな?」
「いいよ~」

 ユキにマンナンさんを任せて手術の準備をしていく。

「誠明よ、見学してもよいか?」
「私もお願いしたいね」
「本人の同意がとれればいいですよ」
「そうか、なら後で確認しよう」
「同意得られたらすぐに立ち会えるように、自分と同じように着替えてもらって良いです?」
「あぁ」

 ジルさんとナンニャさんの2着を渡しそれぞれ着替えて貰った。

「誠明~準備できたよ」
「ありがとう、じゃあ行きましょう」

 手術室内を浄化魔法で無菌状態にし、麻酔を吸わせ全身麻酔状態にする。そして人工呼吸が出来るように気管に管を挿入し自発呼吸が弱くなってきたのを確認した後人工呼吸を挿入しユキに呼吸を任せた。

 ユキの動きを見ていると、問題なくできているようだったので小腸穿孔の手術を始めた。

 開腹すると同時に熱々のヘラ状のライトボール止血していく。腹腔内に漏れ出た異物を浄化魔法を使い消し、触診スキルで小腸の状態を確認し穴の開いた部分をふさいでいく、塞ぎ終わったら触診スキルをつかいきっちりできているかを確認した後、止血の為に焼いた血管を綺麗につなぎ合わせながらお腹を閉じて縫合し最後に傷跡をなくすために傷薬を塗った。

「これで終わりですね、しばらくバイタルチェックを……、バイタルチェックってわかりますよね?」

 ふとこの言葉が通じるか気になったので聞いてみた。

「えぇ、わかりますよ、血圧、脈拍、体温、呼吸の4つのチェックですよね」
「えぇ、それです。1週間ほど様子見て問題なさそうなら退院してもらって大丈夫です」
「わかりました」

 大丈夫そうかな。

「すごいのぉ、この世界に来る前お主はいつもこんなことをやっとったのか?」
「いつもというと違いますが、仕事の時間はまるまる手術って日もありましたね」
「ほぉ」

 その後マンナンさんを病院の病室に戻し、ナースステーションでマンナンさんのカルテを見ていて日本語で書かれていることに気づいた。

「この言語って……」
「聖女様が使っていた言語ですね、ここで働く者達はまずこの日本語を勉強するんですよ。それを覚えないと聖女様から寄付していただいた本が読めませんからね」

 そりゃそうだ、日本語を覚えないと寄付した本が読めるわけない。

「お主が居た国の言語なのか?」
「えぇ、自分が居た国の言語ですよ」
「そうかそうか」


 その日は、持ち込んだ薬で対応できる人は対応し、手術の必要がある2人は手術をと対応し12人退院できる状態にした。
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