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しおりを挟む「王子の悪行を知っていながら沈黙を守ることは、ガレディを苦しめました。そして今回、とうとう彼は私に、これまで守ってきた秘密を打ち明けてくれたのです」
ニアンナを止めようとしても無駄だと判断したのか、ヤンダークは国王に向き直る。
「こ、こんな話を真に受ける必要はありません、父上! 早く城に帰りましょう!」
しかし、残念なことに国王の耳に息子の声は届かなかった。
王は驚愕の眼差しで、ニアンナの話に聞き入っている。
「そんなことが……。だが、当のガレディはいったいどこに――」
「こちらです、王よ」
群衆から現れたガレディがニアンナのやや後ろに立ち、恭しく礼をする。
彼は「悲しくて悲しくてたまらない」とでも言いたげな面持ちで、国王に述べた。
「差し出がましいことと自覚はしております……。が、どうしても、私には王子の悪行に目を瞑り続けることが出来ませんでした……。まさか王子が……私腹を肥やすことを、いつまで経ってもやめてくださらないなんて……」
周囲の国民のざわめきが、大きくなっていく。それに伴って、ヤンダークの顔色は悪くなっていった。
彼は右へ左へと視線をやり、必死に群衆へと声を張り上げる。
「み、皆、こんなやつらの言うことなんて信じるんじゃない! 俺は産まれてからずっとこの国にいる身だぞ。そんな俺が、皆の税金を勝手に使うなんて真似、するはずがないじゃないか!」
ガレディが書類の一部を指し示して言った。
「ちなみに、こちらは王子が先日購入された、筋力トレーニングの道具と美肌のパックです」
「やめろ! バラすんじゃない!」
ヤンダークの言葉を受け、ニアンナは故意に悲痛な表情を作る。
「そんな……! だって、私が先日、体格の素晴らしさと肌の美しさの秘訣を尋ねた際、王子は【え~、俺ってそんなに体格も肌質も良いかな~? べつになにもしてないんだけどな~】って、おっしゃっていたじゃないですか!」
「だから、そういうことはバラすんじゃない! 本当にやめてくれ!」
先程まで真っ青だったヤンダークの顔が、今度は真っ赤に染まった。
その隣では、国王が怒りに震えて己の息子を睨みつけている。
「ヤンダーク……お前というやつは……」
「ち、父上……! ちが、違うんです! 俺は決して、とくになにもしてないけどなんでも出来ちゃう完璧な自分を演じたかったわけでは……!」
「戯言は城で――いや、尋問室で聞かせてもらおう。お前達、こいつを捕らえろ!」
国王の命令を受け、側に控えていた家臣達がヤンダークを捕らえに掛かった。
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