【R18】婚約破棄されたらおっとり系アラフォーを攻めることになりまして

チーズたると

文字の大きさ
30 / 33

30

しおりを挟む


「王子の悪行を知っていながら沈黙を守ることは、ガレディを苦しめました。そして今回、とうとう彼は私に、これまで守ってきた秘密を打ち明けてくれたのです」

 ニアンナを止めようとしても無駄だと判断したのか、ヤンダークは国王に向き直る。

「こ、こんな話を真に受ける必要はありません、父上! 早く城に帰りましょう!」

 しかし、残念なことに国王の耳に息子の声は届かなかった。
 王は驚愕の眼差しで、ニアンナの話に聞き入っている。

「そんなことが……。だが、当のガレディはいったいどこに――」
「こちらです、王よ」

 群衆から現れたガレディがニアンナのやや後ろに立ち、恭しく礼をする。
 彼は「悲しくて悲しくてたまらない」とでも言いたげな面持ちで、国王に述べた。

「差し出がましいことと自覚はしております……。が、どうしても、私には王子の悪行に目を瞑り続けることが出来ませんでした……。まさか王子が……私腹を肥やすことを、いつまで経ってもやめてくださらないなんて……」

 周囲の国民のざわめきが、大きくなっていく。それに伴って、ヤンダークの顔色は悪くなっていった。

 彼は右へ左へと視線をやり、必死に群衆へと声を張り上げる。

「み、皆、こんなやつらの言うことなんて信じるんじゃない! 俺は産まれてからずっとこの国にいる身だぞ。そんな俺が、皆の税金を勝手に使うなんて真似、するはずがないじゃないか!」

 ガレディが書類の一部を指し示して言った。

「ちなみに、こちらは王子が先日購入された、筋力トレーニングの道具と美肌のパックです」
「やめろ! バラすんじゃない!」

 ヤンダークの言葉を受け、ニアンナは故意に悲痛な表情を作る。

「そんな……! だって、私が先日、体格の素晴らしさと肌の美しさの秘訣を尋ねた際、王子は【え~、俺ってそんなに体格も肌質も良いかな~? べつになにもしてないんだけどな~】って、おっしゃっていたじゃないですか!」

「だから、そういうことはバラすんじゃない! 本当にやめてくれ!」

 先程まで真っ青だったヤンダークの顔が、今度は真っ赤に染まった。
 その隣では、国王が怒りに震えて己の息子を睨みつけている。

「ヤンダーク……お前というやつは……」
「ち、父上……! ちが、違うんです! 俺は決して、とくになにもしてないけどなんでも出来ちゃう完璧な自分を演じたかったわけでは……!」

「戯言は城で――いや、尋問室で聞かせてもらおう。お前達、こいつを捕らえろ!」

 国王の命令を受け、側に控えていた家臣達がヤンダークを捕らえに掛かった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...