【R18】婚約破棄されたらおっとり系アラフォーを攻めることになりまして

チーズたると

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 ヤンダークは涙をうかべながら、王に懇願する。

「父上、お許しください父上! どうしても美肌な細マッチョになりたかったんです!」

「そんなことに国民の税金を使うとは……。愚かな息子に国を継がせるほど、耄碌しとらんぞワシは! 次期国王の座は永遠にその手に戻らぬと思え!」
「そ、そんなぁ……!」

 連行されるヤンダークには、国民達の不満もぶつけられた。それは、これまでの彼の立場が一瞬にして崩壊した瞬間でもあった。

 場が騒然とする中、ニアンナはこっそりとガレディに目線を送る。と、ニアンナの視線に感付いた彼が、薄く笑みをうかべた。

 このとき、ニアンナは密かに胸に誓う。
 ――ガレディを怒らせるのは、極力ひかえよう、と。

 きっと彼は、怒らせてはいけないタイプの人間なのだから……。





 後日、ニアンナとガレディとナミアは、開店前のナミアの店にそろっていた。開店前ということもあって、店内には三人以外にひとの姿はない。

 カウンター席でガレディと並んで座りながら、ニアンナはしみじみと言った。

「ガレディのおかげで助かったよ。色々とありがとう」
「いえ。死蔵がお役に立ったようで、なによりです」

 ナミアはいくらか、申し訳なさそうな面差しで呟く。

「でも、よかったんでしょうか。ヤンダークさんは……その……」

 眉尻をさげるナミアに、ガレディがすっぱりと反論した。

「ナミアさん、あんな男を気にする必要はありません。あれは自業自得そのもの。国王と国民の期待を裏切った、当然の処遇です」

「結局、勝手に私との婚約を破棄したことまでバレちゃったもんね。まぁ、これは国と国の関係性もあって結ばれたものだったから、王様が怒るのも無理はないけど」

 頷きながら、ガレディはナミアにさらなる説明をする。

「そして、その婚約も今回の件で白紙に戻りました。次期国王の座も、ヤンダークの弟が継ぐことになりそうです」
「な、なんだか、踏んだり蹴ったりですね……」

 ナミアがいくらかヤンダークに同情する素振りを見せた。自身も被害者のひとりであるというのに、本当に心配になるほど人柄が良い。
 そこで、ガレディがなにかを思い出したふうに「ああ」と独りごちた。

「……そういえば、国王がナミアさんにお詫びをしたいとおっしゃっていました。うちの馬鹿息子が迷惑をかけた、と。なにか望むものがあれば、こちらで用意いたしますが、いかがでしょう」

 問われたナミアは微笑んで、首を左右に振った。

「いえ、お気になさらないでください。おふたりのおかげで無事に済みましたし……」

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