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しおりを挟む「やぁ……っ」
憎たらしいほどに優しい手付きは、彩香の肉体に期待を与えた。最近の仕事による疲れやストレスが無意識に解放を求めていた――という点も、無視は出来ないだろう。
知り合ったばかりの男の指先が、胸の尖りを弄る。衣服に隔てられてその様子を直接たしかめることは出来ないが、それでも、相手の手が淫らな動作をしている事実は視認などしなくても充分に感じることが可能だ。
彩香は決して、性に奔放なたちではない。にもかかわらず、出会ったばかりのローランドに肉体を許している自分が、不思議だった。
いや、仕方のない状況なのは理解している。が、普通であれば、ここはもっと嫌悪感をいだく場面ではないのだろうか。とくに親しくもない相手に触れられるなど、普通でなくとも気持ちが悪い。そのはずなのに。
「あっ、ぁあッ……! そこ、だめです……」
過敏な箇所を捏ねられ、素直に快楽を得ている彩香は、妙なことにそういった嫌悪感を彼に対していだいていない。それが、ただただ不思議だった。
非現実感のせいで判断力がにぶっているのか。それとも、ローランドが悪魔と思えないほどに親しみやすく、かつ優しいせいか。
当の悪魔は、喘ぐ彩香を見下ろして、どこか意地悪く笑った。
「可愛い声だねぇ。そんなふうに言われたら、おじさんもっと意地悪したくなっちゃうな」
直後、胸の突起に鋭い感覚が走る。彼の指の腹につねられたのだと、すぐに理解した。
ローランドは、そのまま敏感なそこを捏ねて責め苛む。衣服で相手の手許が隠れているせいか、愉悦ばかりが鮮やかだった。
「ひぅ、んっ……は、ァ……ぐりぐりしないでぇ……ッ」
「それは【気持ちいい】【もっとして】っていう意味かな?」
「ちが――ふあァッ!」
反論の言葉は、強い快感によって塗り潰される。
己のくちから出る甘ったるい声が、恥ずかしかった。この嬌声は、自らの意思で出しているのではない。ローランドによって、引き出されているのだ。
まだ胸を触られているだけなのに、ただそれだけで彩香とローランドの関係が「男と女のそれ」になっていく。出会ったばかりなのに、深い関係にあるのだと錯覚してしまいそうになる。
そんな錯覚をいだかせるほどには、ローランドという悪魔が纏う空気は不可思議だった。
彼は彩香の頬に軽いキスを落としてから、彩香の衣服をたくし上げて乳房を晒す。
「はは、彩香ちゃんのおっぱい、すっかりいやらしくなっちゃったねぇ。ほら、こんなに赤く染まってら」
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