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メリーハッピーエンド
君が好きだ
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僕たちはゆっくりと時間をかけてお互いに惹かれていく実感があった。
名前すらお互いに知らない。けれど、そんなことはもう どうでもよかった。
彼が居て、僕が居る。名前や性別、生や死なんてものに縛られることはなく、ただそばに居るだけで幸福に満ちた空間が出来上がっていた。
彼の休みには一緒に料理をしたり、ゲームをしたり、まるで恋人みたいに寄り添って映画も観たし、毎日 幸せとはこういうものなのだと感じながら過ごした。
いつも通り、彼の休みを利用して二人並んで映画を見ていると、僕の手の位置に彼の手が移動してきて空を掴んでから、ひっそりと悔しそうな声を上げた。
どうしたのかと振り向くと、妙に神妙な顔をした彼が熱い眼差しをこちらに向けていた。
「あんたが好きだ。愛してる」
出会って1年半程の時が過ぎたその日、彼は突然告白した。
今までずっとお互いに明確な言葉を避け続けて居たはずなのに。どうしても耐えきれないとばかりに熱い眼差しで言われた言葉は、僕の心にストンと刺さり素直な言葉を吐き出させた。
『……僕も、すきだよ。君に触れたい。君が好き』
僕たちは初めて、唇を寄せ合った。温もりも 柔らかな感触も感じることは無くて歯がゆい気持ちが膨れ上がる。
「……やっぱ冷てぇな。でも、あんたがここに居るって感じする」
離れたばかりの己の唇に触れながら 嬉しそうに微笑みを浮かべた彼を見ていると、胸の奥で小さな幸せの積み上がる音がした。
僕には彼の感触や体温は分からないけど、彼には僕の冷んやりとした温度がわかるらしい。そんな事で彼が幸せになってくれるなら……僕たちはこれでも良いのかもしれない。
それからしばらくして、風呂場から彼の呻き声のようなものが聞こえて来た。
『ねぇ君 大丈夫?』
何かあったのではと不安になった僕は 少しだけ躊躇したものの 浴室に顔を覗かせた。
けれど 彼はいたって健全な男子らしい行為に勤しんでいるだけだった。
僕は居た堪れない気持ちですぐに寝室へ逃げ帰ったけれど、彼の熱っぽい雄の表情と立派な雄峰が目に焼き付いてムズムズする気がした。
「あんたさっき 風呂場来ただろ」
『ごっ、ごめんなさいあの呻いてるように聞こえて体調悪いのかと思って心配に なって……ぁの……ごめんなさい』
以前から何度かそれっぽいと感じる時はあったけれど、今日は本当に苦しそうで悲しそうでいたたまれなくなる声だったから、つい覗いちゃったんだ。
「いや、あんたになら見られたって別にいいんだけど。それより、心配させてわりぃ」
『ううん。僕が勝手に心配しちゃっただけだから! ほんと、ごめんなさい』
両の掌をくっ付けて頭を下げると、彼は苦笑しながら謝らなくていいと言って、懐かしそうに「なんか前にもこんな事あったよな?」と笑った。
『……うん。あの時は本当にびっくりして、申し訳なくてどうしようかと思ったよ』
「あん時さ、あんたにどこから聞いてた? って質問したんだよ。覚えてる?」
そう言えば、そんな質問をされた気もするけれど、あの時は胸のざわめきが酷かったことしかあまり覚えてないや。
「あんたは『ここから聞いてた』って場所のことを言ったんだよ。けどさ、俺としてはタイミングの事聞いてたんだよ。俺があんたに触りてぇって言いながらシテたから」
思い出しながら楽しそうに笑って、少し気恥しそうに苦笑へ変わった彼を見ながら、嬉しいような申し訳ないような恥ずかしい気持ちで顔を隠しながら『その節はすみませんでした』と消え入りそうな声を出した。
「謝んなって。あん時はまぁ助かったんだよ俺としては。まだあんたを好きだなんて認めちゃいけねぇと思ってたから」
『……だから、また隠れてシテたんですか? ……言ってくれたら僕も頑張るのに……』
「ん? いや……あんたは俺に触れるかも知んねぇけど俺はあんたに触りたくても触れねぇじゃん? 我慢できねぇと思うんだわ」
決まり悪そうな彼の苦笑が僕の胸を締め付ける。
僕が生きてさえいれば、僕に隠れて独りで済ませるだけじゃなく 2人でそういうことも出来たかもしれないのに。
『……ごめんなさい 僕がシテあげられたら良かったのに』
「え? あー……んー……マジでシテくれんの?」
『でも……僕に触れないの……かえって辛くないですか?』
「わかんねぇ」
ベッドでうずくまっている僕ににじり寄ってきた彼は、熱っぽい表情を浮かべて唇を重ねた。
「ん、冷てぇ。毎日暑いしあんたの口でシテもらったら気持ちいいかもとは思ってたんだよね。嫌じゃねぇ?」
イタズラっぽい表情で僕を押し倒し……明確には僕が押し倒されることなんかないしベッドだって彼のことだってすり抜けられるけれど、気分的には彼に押し倒されて 誘われている。
『いいよ。僕でよければ……僕もシたい』
恥ずかしくて顔を隠しながら伝えると、彼はくすくす笑いながらエアコンを止めた。「あんたとするなら熱いくらいがちょうどいいな」なんて言ってから じわりと汗ばむ肌を露わにした。
名前すらお互いに知らない。けれど、そんなことはもう どうでもよかった。
彼が居て、僕が居る。名前や性別、生や死なんてものに縛られることはなく、ただそばに居るだけで幸福に満ちた空間が出来上がっていた。
彼の休みには一緒に料理をしたり、ゲームをしたり、まるで恋人みたいに寄り添って映画も観たし、毎日 幸せとはこういうものなのだと感じながら過ごした。
いつも通り、彼の休みを利用して二人並んで映画を見ていると、僕の手の位置に彼の手が移動してきて空を掴んでから、ひっそりと悔しそうな声を上げた。
どうしたのかと振り向くと、妙に神妙な顔をした彼が熱い眼差しをこちらに向けていた。
「あんたが好きだ。愛してる」
出会って1年半程の時が過ぎたその日、彼は突然告白した。
今までずっとお互いに明確な言葉を避け続けて居たはずなのに。どうしても耐えきれないとばかりに熱い眼差しで言われた言葉は、僕の心にストンと刺さり素直な言葉を吐き出させた。
『……僕も、すきだよ。君に触れたい。君が好き』
僕たちは初めて、唇を寄せ合った。温もりも 柔らかな感触も感じることは無くて歯がゆい気持ちが膨れ上がる。
「……やっぱ冷てぇな。でも、あんたがここに居るって感じする」
離れたばかりの己の唇に触れながら 嬉しそうに微笑みを浮かべた彼を見ていると、胸の奥で小さな幸せの積み上がる音がした。
僕には彼の感触や体温は分からないけど、彼には僕の冷んやりとした温度がわかるらしい。そんな事で彼が幸せになってくれるなら……僕たちはこれでも良いのかもしれない。
それからしばらくして、風呂場から彼の呻き声のようなものが聞こえて来た。
『ねぇ君 大丈夫?』
何かあったのではと不安になった僕は 少しだけ躊躇したものの 浴室に顔を覗かせた。
けれど 彼はいたって健全な男子らしい行為に勤しんでいるだけだった。
僕は居た堪れない気持ちですぐに寝室へ逃げ帰ったけれど、彼の熱っぽい雄の表情と立派な雄峰が目に焼き付いてムズムズする気がした。
「あんたさっき 風呂場来ただろ」
『ごっ、ごめんなさいあの呻いてるように聞こえて体調悪いのかと思って心配に なって……ぁの……ごめんなさい』
以前から何度かそれっぽいと感じる時はあったけれど、今日は本当に苦しそうで悲しそうでいたたまれなくなる声だったから、つい覗いちゃったんだ。
「いや、あんたになら見られたって別にいいんだけど。それより、心配させてわりぃ」
『ううん。僕が勝手に心配しちゃっただけだから! ほんと、ごめんなさい』
両の掌をくっ付けて頭を下げると、彼は苦笑しながら謝らなくていいと言って、懐かしそうに「なんか前にもこんな事あったよな?」と笑った。
『……うん。あの時は本当にびっくりして、申し訳なくてどうしようかと思ったよ』
「あん時さ、あんたにどこから聞いてた? って質問したんだよ。覚えてる?」
そう言えば、そんな質問をされた気もするけれど、あの時は胸のざわめきが酷かったことしかあまり覚えてないや。
「あんたは『ここから聞いてた』って場所のことを言ったんだよ。けどさ、俺としてはタイミングの事聞いてたんだよ。俺があんたに触りてぇって言いながらシテたから」
思い出しながら楽しそうに笑って、少し気恥しそうに苦笑へ変わった彼を見ながら、嬉しいような申し訳ないような恥ずかしい気持ちで顔を隠しながら『その節はすみませんでした』と消え入りそうな声を出した。
「謝んなって。あん時はまぁ助かったんだよ俺としては。まだあんたを好きだなんて認めちゃいけねぇと思ってたから」
『……だから、また隠れてシテたんですか? ……言ってくれたら僕も頑張るのに……』
「ん? いや……あんたは俺に触れるかも知んねぇけど俺はあんたに触りたくても触れねぇじゃん? 我慢できねぇと思うんだわ」
決まり悪そうな彼の苦笑が僕の胸を締め付ける。
僕が生きてさえいれば、僕に隠れて独りで済ませるだけじゃなく 2人でそういうことも出来たかもしれないのに。
『……ごめんなさい 僕がシテあげられたら良かったのに』
「え? あー……んー……マジでシテくれんの?」
『でも……僕に触れないの……かえって辛くないですか?』
「わかんねぇ」
ベッドでうずくまっている僕ににじり寄ってきた彼は、熱っぽい表情を浮かべて唇を重ねた。
「ん、冷てぇ。毎日暑いしあんたの口でシテもらったら気持ちいいかもとは思ってたんだよね。嫌じゃねぇ?」
イタズラっぽい表情で僕を押し倒し……明確には僕が押し倒されることなんかないしベッドだって彼のことだってすり抜けられるけれど、気分的には彼に押し倒されて 誘われている。
『いいよ。僕でよければ……僕もシたい』
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