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───クソっ! マジで何なんだよ! 追いかけて来いよ。あ~イライラする。部屋帰ってふて寝しよ……。
怒りに任せて部屋を出たものの、チラリと出て来た鎮雄の部屋を見ても 追いかけて来る様子が無い事に 更なる苛立ちを感じながら離れへと戻って来ると、部屋の様子がおかしい。
自分の物が一切なく、見慣れぬ物だらけだ。しかも、飾られている写真には母の若い頃の姿と、自分に良く似た父の姿が写っている物がちらほら置かれている。
「……な……んの冗談だ? 誰だよこんな手の込んだイタズラしゃがったヤツ!」
怒りにわなわなと震えながら部屋に入り、ぐるりと見渡すとカレンダーが目に入った。
「平成……? 俺が産まれる前……? なんでこんな古いカレンダー」
暦に記される年号も、記される予定すら謎で仕方がない。
「愛海とデート?……愛海って母さん? え? じゃあこの部屋親父の……」
半信半疑では有るものの、なぜだか鎮雄が慈海を覚えておらず若い体付きだった事や平成のカレンダー、両親の若い頃の写真に 見覚えのない部屋。
慈海が導き出せる答えはひとつだった。
──もしかして、もしかしなくてもこれってタイムスリップってやつじゃね? え……元の時代に戻るにはどうしたらいいんだ?
「……待てよ、これってもしかしたら鎮雄さんの俗名教えてもらったり、若い頃の鎮雄さんとエロい事するチャンスじゃね?!」
慈海は先の分からぬ恐怖を感じながらも、朝見た鎮雄のハリのある肌や触りたくなる割れた腹筋を思い出し、昨夜と同じ事をしたらどれだけの違いが有るのだろうかと鎮雄の事で……もとい 卑猥な事で頭が埋まっていた。
喜海の部屋で発見した適当な服に袖を通すと、朝のおつとめをしているはずの鎮雄を探しに本堂へと向かった。
「あ、いたいた鎮雄さん」
「─! 先程のお方ですか。……喜海様なら」
───また親父の事。まぁこの鎮雄さんは俺の事知らないんだもんな。でも、なんかやっぱり気に食わない。
「ねぇ、鎮雄さんって俗名なんだったの?」
「……はい?」
喜海について語っていた鎮雄の言葉など一切聞かずに以前から何度聞いてもはぐらかされて居た名前を問う慈海に、訝しげな視線を向けながら鎮雄は首を傾げた。
「だから、出家する前の名前。何だったの? 言いたくないくらい変な名前なの? 女っぽいとか?」
「いえ、そんな事はございませんが……貴方に言う事では有りませんよ」
「喜海なら知ってるんでしょ? あんたの名前」
ずんずんと近寄りながら 少し苛立ちを孕んだ声で言う慈海に「まぁ、戒名を頂いた際に一緒に居らっしゃいましたので……」と少し身を引きながら鎮雄は答えた。
──何逃げてんだよ。何が一緒に居ただよ。あんたは俺のだろ?
「あの……貴方は学生さんですよね?学校には行かれなくて良いのですか? もうこんな時間ですよ」
「貴方じゃなくて、慈海。俺はじかいだから。忘れないで」
仏像脇に有る裏へ回る為の道を隠す幕近くまでジリジリと鎮雄を追い詰めると、「ではあの……慈海さんあの、これ以上は」と戸惑いを見せた。
「じゃあ、名前教えて? 言わないなら言いたくさせる」
「何をするって言うんです? まさか仏様の隣でで脅しですか?」
少し小馬鹿にしたのような言い方の鎮雄らしからぬ対応に、慈海はほんの僅か驚いたものの、ニヤリと笑って鎮雄を幕の奥へと押し込み畳の上に組み敷いた。
「脅し? 違うよ。あんたの好きなエロい事 こんなところでスるのも燃えるだろ?」
言い終わると共に、鎮雄の後頭部に手を回して少し角度をつけると、慈海の唇をしっかりと重ねた。
少し離して唇をぬるりと舐めながら、薄目を開けて鎮雄の様子を見れば うっとりとしているようで、気分を良くした慈海が 唇の隙間から舌を少し押し込むとすんなりと受け入れられた。
歯列をなぞり、上顎をザラザラと愛撫し、舌を絡めて吸い付くと、微かに漏れ聞こえる いつもより少し高い鎮雄の甘い吐息が聞こえて来る。
たっぷり時間をかけて口内を味わい透明な糸を引きながら唇を離すと、頬を染め気持ち良さそうにしていた鎮雄がニヤリと笑った。
「……んっぁ、喜海さまに似てるくせに君は男も行けるんだな。しかもこんな所に押し込んで無理矢理キスするなんて随分なエロガキだな」
鎮雄が 口の端から溢れた唾液を袖で拭いながら小さく吐露した言葉に、慈海は眉根を寄せた。バンっと顔の横に手をついて畳ドンすると、眉根を寄せたままじっくりと鎮雄の目を見詰めて質問する。
「今あいつの事なんか関係ないんだけど。つーか、喋り方違くない? そっちがホントのあんたなの?」
「ああ。本来ならこんな事お断りなんだけど……良いよ、君なら喜海様に似ててイケメンだし。どうせ俺の事誰かから聞いてヤリに来たんだろ? 1年くらい誰ともシてねぇから 実は俺も溜まってるんだよね」
僧侶にあるまじき いやらしい笑みを浮かべながら、誘うように慈海の首筋へ手を伸ばす鎮雄は、まるで知らぬ人を相手している様でゾクゾクと背筋を走り抜ける背徳感と好奇心が慈海の心を掴んだ。
片手でグイッと慈海を引き寄せ 濃厚な口付けをしながら、空いた方の手でベルトを外すと「なぁ、俺に抱かれろよ」と鎮雄は唇の輪郭をなぞる様に舐め上げた。
怒りに任せて部屋を出たものの、チラリと出て来た鎮雄の部屋を見ても 追いかけて来る様子が無い事に 更なる苛立ちを感じながら離れへと戻って来ると、部屋の様子がおかしい。
自分の物が一切なく、見慣れぬ物だらけだ。しかも、飾られている写真には母の若い頃の姿と、自分に良く似た父の姿が写っている物がちらほら置かれている。
「……な……んの冗談だ? 誰だよこんな手の込んだイタズラしゃがったヤツ!」
怒りにわなわなと震えながら部屋に入り、ぐるりと見渡すとカレンダーが目に入った。
「平成……? 俺が産まれる前……? なんでこんな古いカレンダー」
暦に記される年号も、記される予定すら謎で仕方がない。
「愛海とデート?……愛海って母さん? え? じゃあこの部屋親父の……」
半信半疑では有るものの、なぜだか鎮雄が慈海を覚えておらず若い体付きだった事や平成のカレンダー、両親の若い頃の写真に 見覚えのない部屋。
慈海が導き出せる答えはひとつだった。
──もしかして、もしかしなくてもこれってタイムスリップってやつじゃね? え……元の時代に戻るにはどうしたらいいんだ?
「……待てよ、これってもしかしたら鎮雄さんの俗名教えてもらったり、若い頃の鎮雄さんとエロい事するチャンスじゃね?!」
慈海は先の分からぬ恐怖を感じながらも、朝見た鎮雄のハリのある肌や触りたくなる割れた腹筋を思い出し、昨夜と同じ事をしたらどれだけの違いが有るのだろうかと鎮雄の事で……もとい 卑猥な事で頭が埋まっていた。
喜海の部屋で発見した適当な服に袖を通すと、朝のおつとめをしているはずの鎮雄を探しに本堂へと向かった。
「あ、いたいた鎮雄さん」
「─! 先程のお方ですか。……喜海様なら」
───また親父の事。まぁこの鎮雄さんは俺の事知らないんだもんな。でも、なんかやっぱり気に食わない。
「ねぇ、鎮雄さんって俗名なんだったの?」
「……はい?」
喜海について語っていた鎮雄の言葉など一切聞かずに以前から何度聞いてもはぐらかされて居た名前を問う慈海に、訝しげな視線を向けながら鎮雄は首を傾げた。
「だから、出家する前の名前。何だったの? 言いたくないくらい変な名前なの? 女っぽいとか?」
「いえ、そんな事はございませんが……貴方に言う事では有りませんよ」
「喜海なら知ってるんでしょ? あんたの名前」
ずんずんと近寄りながら 少し苛立ちを孕んだ声で言う慈海に「まぁ、戒名を頂いた際に一緒に居らっしゃいましたので……」と少し身を引きながら鎮雄は答えた。
──何逃げてんだよ。何が一緒に居ただよ。あんたは俺のだろ?
「あの……貴方は学生さんですよね?学校には行かれなくて良いのですか? もうこんな時間ですよ」
「貴方じゃなくて、慈海。俺はじかいだから。忘れないで」
仏像脇に有る裏へ回る為の道を隠す幕近くまでジリジリと鎮雄を追い詰めると、「ではあの……慈海さんあの、これ以上は」と戸惑いを見せた。
「じゃあ、名前教えて? 言わないなら言いたくさせる」
「何をするって言うんです? まさか仏様の隣でで脅しですか?」
少し小馬鹿にしたのような言い方の鎮雄らしからぬ対応に、慈海はほんの僅か驚いたものの、ニヤリと笑って鎮雄を幕の奥へと押し込み畳の上に組み敷いた。
「脅し? 違うよ。あんたの好きなエロい事 こんなところでスるのも燃えるだろ?」
言い終わると共に、鎮雄の後頭部に手を回して少し角度をつけると、慈海の唇をしっかりと重ねた。
少し離して唇をぬるりと舐めながら、薄目を開けて鎮雄の様子を見れば うっとりとしているようで、気分を良くした慈海が 唇の隙間から舌を少し押し込むとすんなりと受け入れられた。
歯列をなぞり、上顎をザラザラと愛撫し、舌を絡めて吸い付くと、微かに漏れ聞こえる いつもより少し高い鎮雄の甘い吐息が聞こえて来る。
たっぷり時間をかけて口内を味わい透明な糸を引きながら唇を離すと、頬を染め気持ち良さそうにしていた鎮雄がニヤリと笑った。
「……んっぁ、喜海さまに似てるくせに君は男も行けるんだな。しかもこんな所に押し込んで無理矢理キスするなんて随分なエロガキだな」
鎮雄が 口の端から溢れた唾液を袖で拭いながら小さく吐露した言葉に、慈海は眉根を寄せた。バンっと顔の横に手をついて畳ドンすると、眉根を寄せたままじっくりと鎮雄の目を見詰めて質問する。
「今あいつの事なんか関係ないんだけど。つーか、喋り方違くない? そっちがホントのあんたなの?」
「ああ。本来ならこんな事お断りなんだけど……良いよ、君なら喜海様に似ててイケメンだし。どうせ俺の事誰かから聞いてヤリに来たんだろ? 1年くらい誰ともシてねぇから 実は俺も溜まってるんだよね」
僧侶にあるまじき いやらしい笑みを浮かべながら、誘うように慈海の首筋へ手を伸ばす鎮雄は、まるで知らぬ人を相手している様でゾクゾクと背筋を走り抜ける背徳感と好奇心が慈海の心を掴んだ。
片手でグイッと慈海を引き寄せ 濃厚な口付けをしながら、空いた方の手でベルトを外すと「なぁ、俺に抱かれろよ」と鎮雄は唇の輪郭をなぞる様に舐め上げた。
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