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112 姉の行方
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『いや、イヤ、ヤダ、だめ……~~っ!! ひぎぃ……っ!! ……あぐぅ……うぅ、はっ、かはっ……』
犯されながら背中の翼に生えている羽をブチブチと毟り取られる苦痛に泣き叫び、呻き、見悶える。
涙でメガネがぐちゃぐちゃになるのにも気づいていないのか、何度も激しく首を振り、見開かれた翠の瞳は涙の海に溺れている。
羽根布団が作れるくらいに周りに広がる黒い羽。
背中の翼の方はというと、鳥の手羽先のような無残極まりないズル剥けのピンクの素肌が白日に晒されている。
その手羽先には暴行の跡である青黒い痣が複数ついていた。
当然、そんな一方的な責め苦に耐え切れなくなったのだろう。
体力の限界か……不自然に体を痙攣させ、ルシーファが意識を手放す。
だが、
『ぎゃんっ!!』
間髪入れず、羽の付け根……有翼種族の急所に雷撃を流し込み、意識を無理矢理引き戻す。
再び猛り狂う獣性を壊れかけの堕天使に穿ち、『ふ、は、は、はっ、はっ!』と狂ったような笑いを浴びせる。
そんな事が何度もくりかえされ、とうとう、ルシーファのヤツは、胃液を吐き戻すほど激しくみぞおちを突かれようが、腕や足の骨を砕かれようが、何度電流攻撃を喰らおうが、まともな反応を示さなくなってしまった。
首から上には手をあげていないため、涙や吐瀉物の跡は有っても、顔立ちは比較的奇麗なままだ。
だが、そのせいで、光の無い虚ろな眼差しが、限界など、とうに超えていたことを切実に訴えかけている。
しかし、それが気に入らないのか、サタナスのヤツは『ふんっ!』と鼻を鳴らし、今度はヘタクソな【回復魔法】をかけて傷を癒し始めた。
そして、意識を蘇らせると、再び恐怖と絶望に染まるルシーファの様子を嘲笑う。
さらには、初心に返ったとばかりに、嬉々として反応の戻って来た玩具を壊しにかかる。
結局、短期間に何度も【回復魔法】をかけられたことによる拒絶反応が出るまで暴虐の嵐が止むことは無かった。
【回復魔法】すら苦痛に置き換わってしまったせいで、弱々しくすすり泣く事しかできないルシーファの顎を掴んで無理矢理、瞳を合わせる。
『……ひ……』
『何だ? その無様な顔は? 余の前では常に余裕の笑みを浮かべておけと言ったはずだ』
『……ぁ……』
『嗤え。嗤って余を楽しませよ』
『は……っ、はっ……はひっ、はは、っは、は……っぅ……』
必死に、震えながら、カサカサに乾いた唇を引き上げようと努力する頬を、幾筋も涙が伝う。
「これはひどい……」
後ろに立っていたベータが呟く小さな声が妙にしっかり聞こえた。
「…………」
流石の俺も、握りしめていた拳が怒りよりもさらに激しい感情で震えるのが分かった。
これは、駄目だ。
確かに、魔王城に居た頃のルシーファは、俺にとってキツイ言い方をしてくる比較的イヤな奴だった。
とはいえ、ルシーファのヤツはサタナスには、かなり忠実に仕えていた。
アイツから指示されたかなり面倒な仕事でも文句を言わずこなす働き者で、アイツの足りない知能部分を補おうとしていた節がある。
ま、そんな事を言ったらマドラやサーキュだってある意味ではそうなんだが……
それでも、必死に忠誠を尽くしていた部下を、こんな形で虐げ、こんな顔をさせるのは駄目だ。
誰かに助けを求めることもできず、許しを請うことも封じられ、笑おうとして笑えない様子は、確かに『壊されている』と言っていい惨状だ。
さらには、その上から記憶を消し、身体を男に変更させ、改めて忠誠を誓わせるのだから、この野郎はどこまで他者を踏みにじれば気が済むのか。
すっかりアタマの中を弄り回されて、明らかに体調が悪いのを隠すように跪いたまま、魔王サタナスを礼賛している。
見覚えのある笑顔を浮かべた堕天使の様子が、妙に健気で……ひどく、腹立たしく思えた。
記憶を操作されたせいで覚えてないせいなのかもしれないけど、何でそんなにしんどいのを必死に隠して笑ってるんだよ、お前……顔色、最悪じゃねーか。
『ホント、酷いよね……よくここまで残酷な指示ができるね』
「……俺じゃねーよ」
自分が想像していたよりも、かなり低い声が出た。
……する訳無いだろ、こんな指示。
魔王城に居た頃のルシーファのヤツはいけ好かないヤツだったけど、それでも、ここまで酷い目にあわせてやろうと思った事は無い。
中央神殿では人間コワイと思ったけど、えげつなさでは魔王の方が頭一つ抜けている。
『でもこれ、まだほんの一部だけなんだよね』
ミーカイルが親指と人差し指で小さな小さな豆粒をつまむような真似をする。
……マジかよ……
いや、何か、あの知能の低さで謎解き扉に詰まっちゃったような魔王をひたすら怖がることができるってスゲーとか思ってたけど……うん。これ見せられると……まぁ、分からんでもない。
『あーあ、俺だったら、もっと、もっと、姉さんを暴いて、鳴かせて、喘がせて、よがり狂わせてあげるのに』
「はぁっ!?」
何言ってんだコイツ?
散々、ルシーファのやつ泣いてたじゃねーか。むしろ、泣いていない時の方が少ない映像だろ!?
俺がルシーファを殺した主犯格だと思われているなら、例のチビ天使をここに連れて来て誤解を解いてやろうか、との考えが一瞬で消え去った。
『嗚呼、可愛いよ姉さん……! せめて生きていてくれたら、男の身体の方の初めては僕が貪りつくしてあげたのに……はぁ、はぁっ!』
うわぁ……
思わず頬を上気させながら潤んだ瞳で映像を眺めるミーカイルを感情の抜け落ちたスン、とした目で見つめてしまった。
ふと、気づくとフジョシーヌちゃんが「ンンッ! ドゥフフッ……!」とか言いながら興奮している。
……類は友を、という言葉が頭をよぎった。
これは、万物の幸福のためにも、姉は死んだと思っててくれた方が良い。
『……ホント、許しがたいよね』
そこには同感だが、それ以外は一切同意しないからな?
だけど、何でこの映像に俺が絡んでると思われてるの!?
俺、一切映っていませんけど!?
『そんな訳で』
少し病的なヤバイ目であの映像が保存されていた魔法球をぺろりと舐めるミーカイル。
『君とは……ちょっと真剣に話し合いたいかな?』
犯されながら背中の翼に生えている羽をブチブチと毟り取られる苦痛に泣き叫び、呻き、見悶える。
涙でメガネがぐちゃぐちゃになるのにも気づいていないのか、何度も激しく首を振り、見開かれた翠の瞳は涙の海に溺れている。
羽根布団が作れるくらいに周りに広がる黒い羽。
背中の翼の方はというと、鳥の手羽先のような無残極まりないズル剥けのピンクの素肌が白日に晒されている。
その手羽先には暴行の跡である青黒い痣が複数ついていた。
当然、そんな一方的な責め苦に耐え切れなくなったのだろう。
体力の限界か……不自然に体を痙攣させ、ルシーファが意識を手放す。
だが、
『ぎゃんっ!!』
間髪入れず、羽の付け根……有翼種族の急所に雷撃を流し込み、意識を無理矢理引き戻す。
再び猛り狂う獣性を壊れかけの堕天使に穿ち、『ふ、は、は、はっ、はっ!』と狂ったような笑いを浴びせる。
そんな事が何度もくりかえされ、とうとう、ルシーファのヤツは、胃液を吐き戻すほど激しくみぞおちを突かれようが、腕や足の骨を砕かれようが、何度電流攻撃を喰らおうが、まともな反応を示さなくなってしまった。
首から上には手をあげていないため、涙や吐瀉物の跡は有っても、顔立ちは比較的奇麗なままだ。
だが、そのせいで、光の無い虚ろな眼差しが、限界など、とうに超えていたことを切実に訴えかけている。
しかし、それが気に入らないのか、サタナスのヤツは『ふんっ!』と鼻を鳴らし、今度はヘタクソな【回復魔法】をかけて傷を癒し始めた。
そして、意識を蘇らせると、再び恐怖と絶望に染まるルシーファの様子を嘲笑う。
さらには、初心に返ったとばかりに、嬉々として反応の戻って来た玩具を壊しにかかる。
結局、短期間に何度も【回復魔法】をかけられたことによる拒絶反応が出るまで暴虐の嵐が止むことは無かった。
【回復魔法】すら苦痛に置き換わってしまったせいで、弱々しくすすり泣く事しかできないルシーファの顎を掴んで無理矢理、瞳を合わせる。
『……ひ……』
『何だ? その無様な顔は? 余の前では常に余裕の笑みを浮かべておけと言ったはずだ』
『……ぁ……』
『嗤え。嗤って余を楽しませよ』
『は……っ、はっ……はひっ、はは、っは、は……っぅ……』
必死に、震えながら、カサカサに乾いた唇を引き上げようと努力する頬を、幾筋も涙が伝う。
「これはひどい……」
後ろに立っていたベータが呟く小さな声が妙にしっかり聞こえた。
「…………」
流石の俺も、握りしめていた拳が怒りよりもさらに激しい感情で震えるのが分かった。
これは、駄目だ。
確かに、魔王城に居た頃のルシーファは、俺にとってキツイ言い方をしてくる比較的イヤな奴だった。
とはいえ、ルシーファのヤツはサタナスには、かなり忠実に仕えていた。
アイツから指示されたかなり面倒な仕事でも文句を言わずこなす働き者で、アイツの足りない知能部分を補おうとしていた節がある。
ま、そんな事を言ったらマドラやサーキュだってある意味ではそうなんだが……
それでも、必死に忠誠を尽くしていた部下を、こんな形で虐げ、こんな顔をさせるのは駄目だ。
誰かに助けを求めることもできず、許しを請うことも封じられ、笑おうとして笑えない様子は、確かに『壊されている』と言っていい惨状だ。
さらには、その上から記憶を消し、身体を男に変更させ、改めて忠誠を誓わせるのだから、この野郎はどこまで他者を踏みにじれば気が済むのか。
すっかりアタマの中を弄り回されて、明らかに体調が悪いのを隠すように跪いたまま、魔王サタナスを礼賛している。
見覚えのある笑顔を浮かべた堕天使の様子が、妙に健気で……ひどく、腹立たしく思えた。
記憶を操作されたせいで覚えてないせいなのかもしれないけど、何でそんなにしんどいのを必死に隠して笑ってるんだよ、お前……顔色、最悪じゃねーか。
『ホント、酷いよね……よくここまで残酷な指示ができるね』
「……俺じゃねーよ」
自分が想像していたよりも、かなり低い声が出た。
……する訳無いだろ、こんな指示。
魔王城に居た頃のルシーファのヤツはいけ好かないヤツだったけど、それでも、ここまで酷い目にあわせてやろうと思った事は無い。
中央神殿では人間コワイと思ったけど、えげつなさでは魔王の方が頭一つ抜けている。
『でもこれ、まだほんの一部だけなんだよね』
ミーカイルが親指と人差し指で小さな小さな豆粒をつまむような真似をする。
……マジかよ……
いや、何か、あの知能の低さで謎解き扉に詰まっちゃったような魔王をひたすら怖がることができるってスゲーとか思ってたけど……うん。これ見せられると……まぁ、分からんでもない。
『あーあ、俺だったら、もっと、もっと、姉さんを暴いて、鳴かせて、喘がせて、よがり狂わせてあげるのに』
「はぁっ!?」
何言ってんだコイツ?
散々、ルシーファのやつ泣いてたじゃねーか。むしろ、泣いていない時の方が少ない映像だろ!?
俺がルシーファを殺した主犯格だと思われているなら、例のチビ天使をここに連れて来て誤解を解いてやろうか、との考えが一瞬で消え去った。
『嗚呼、可愛いよ姉さん……! せめて生きていてくれたら、男の身体の方の初めては僕が貪りつくしてあげたのに……はぁ、はぁっ!』
うわぁ……
思わず頬を上気させながら潤んだ瞳で映像を眺めるミーカイルを感情の抜け落ちたスン、とした目で見つめてしまった。
ふと、気づくとフジョシーヌちゃんが「ンンッ! ドゥフフッ……!」とか言いながら興奮している。
……類は友を、という言葉が頭をよぎった。
これは、万物の幸福のためにも、姉は死んだと思っててくれた方が良い。
『……ホント、許しがたいよね』
そこには同感だが、それ以外は一切同意しないからな?
だけど、何でこの映像に俺が絡んでると思われてるの!?
俺、一切映っていませんけど!?
『そんな訳で』
少し病的なヤバイ目であの映像が保存されていた魔法球をぺろりと舐めるミーカイル。
『君とは……ちょっと真剣に話し合いたいかな?』
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