【待合室書店】のオーナーきゅうりさんの履歴書とアクアマリンのカード

愛澤凛音

文字の大きさ
3 / 21
第2話

えっ?同居ですか?

しおりを挟む
ある日の開店後、

私が、仕入れたばかりの本を陳列棚に置く作業中のことでした…

「美咲さん、この近くに住んでいるんだったよね?」

「はい、歩いて30分くらいのところですけど…」

「家賃高くない?」

「まあ、高いと思いますけど…」

「ここの2階の部屋、空いているんだけど、住む?

ほら、ここ昔、病院だったでしょ…

当時、院長が、別のお医者が住めるように、

アパート風の間取りで一部屋あるんだけど…」

「えっ?」

言葉を発した瞬間、いろんな妄想が脳内を駆け巡った…

なに?なに?なに?な~に?戸惑う私に

きゅうりさんは、落ち着いた様子で、

「気が進まないなら、無理には進めないから、

あとで2階の部屋、みてみる?

ほら、うち給料安いでしょ?住み込みなら家賃いらないし…ね!」

マジで?家賃いらないの?きゅうりさん、正気なのですか?

と思いつつ…

私は、内心、おろおろしながらも…冷静を装い…

「もし、よろしければ、あとで、見せてもらってもいいですか?」

「うん、ぜひ、美咲さんがよければね」

私は、今まで、少し聞きづらいと思っていたことを言葉にしてみた。

「きゅうりさん、失礼でなければ、この昔の病院って…?」

「あ~、この病院ね…ボクの叔父さんの病院だったの…

ボクの両親は、ボクが小学生のときに早くに他界してね、

叔父さん夫婦がそのあと、ボクを引き取って、育ててくれたんだ

叔父さん夫婦には、子供がいなったから、

実の子のように育ててもらったんだ

医者になれるような素質のないボクを、

私立の大学まで通わせてくれてね~

本当に感謝しているんだ」

きゅうりさんが、さらっといろんなことを打ち明けてくれたので、

びっくりして、

「そうでしたか…すみません…失礼な質問をしたみたいで…」

「いや、いいの、いいの。ボクこそ、ここに住めばなんて、

変な提案したからね…何かごめんね」

と、きゅうりさんは、優しい微笑で、陳列棚の作業を再開しました。

きゅうりさんの何もなかったように作業する後姿を見ながら…

私は、きゅうりさんは、きゅうりさんで、苦労したのかな?…

と感じました。

きゅうりさんのこと、以前、よほどのバカか、世間知らずだよな~って

感じていたことを反省しました。

まあ、生きていれば、それなりにいろいろありますよね…

と思っているとお客さんが入ってきました。

「いらいしゃいませ」

女性のお客さんが会釈をしながら入ってきた。

何度か見たことあるかもしれない…

でも、じろじろ見れないから…作業をする…

お客様は、小柄で、シンプルだけど、

上品さのある黒と白の水玉のワンピースを着ていて…

髪はセミロングで、眼鏡をかけていて、

知的で端正な顔立ちをしていました。

そのお客様は、店内をゆっくりと歩いて、本を探している様子でした。

店内は、昔の病院を改装した待合室のフロアに、

高さ約2メートルで横1メートルくらいの本棚が、

数台向かい合わせで綺麗に配置されていて、

その本棚の周りに人の眼が気にならないような感覚で、

長椅子のソファが置かれています。

店内には、焚火の音に合わせてジャズが演奏されている音楽が、

流されています…

ゆっくりと本を探しながら、お気に入りを探してもらえるようにと…

きゅうりさんが、毎日、いろいろと考えているみたいです。

大型書店にあるようなベストセラーは、なるべく避けて、

人生を生きるヒントが得られるような書籍

心が楽になるような書籍

健康に関する書籍

運動に関する書籍

旅行に関する書籍

科学や宇宙に関する書籍

歴史に関する書籍(考古学や恐竜に関する書籍)

運勢や占いに関する書籍

絵本(私は、エドワードゴーリーがお気に入りだけど…)

まだまだ、紹介しきれないほどの本が、ところ狭しと並んでいます。

「あんまり本はないように感じるんだけど、意外とあるんだよね

3000冊以上あるからね」と言っていたことを思い出していた。

先ほどの女性のお客様は、「イラストで解説・超やさしい占星術」

という本を手にしてレジまでやってきた。

古いタイプのレジスターだが、パソコンに接続されていて、

さらにはバーコードが対応している…

レトロなのにきちんとデジタルだ!!!使うたびに不思議に感じる。

これもきゅうりさんの仕業だ!!!

たまに不思議なモノが出てきて…内心…「なんじゃ?こりゃ~?」叫ぶ!

そういえば、最近は、お客さんの数が確実に増えてきました。

これもきゅうりさんの仕業なのか?

夕方になり、お客さんの出入りが落ち着てきたところで、

きゅうりさんが。「美咲さん、2階の部屋、見てみる?」というので…

「では、お言葉に甘えて…」

きゅうりさんと私は、一旦、書店の外に出て、

旧病院の裏側へ向かいました。

意外と敷地は本当に広くて、駐車場もあり、

改めて私はびっくりしました。

ちょうど病院の裏側に2階に上がるコンクリートで、

きちんとつくられている階段を登りました。

そこには、こぢんまりとしたアパートのようなドアがあり、

中に入ると1DKの綺麗なお部屋でした。

「美咲さん、どう?」

「すごい、綺麗じゃないですか!!!

キッチンもバス・トイレもきちんとしているし…

今、住んでいるところより綺麗かもです」

「そう」きゅうりさんは、いつもの微笑でした。

「完全に個別の住宅になっているから、

美咲さんが気にしないということは、ないかもだけど…

良かったら、使って…」

予想以上の綺麗な物件に驚いたが…

「きゅうりさん、お言葉に甘えます」

「うん、いいよ。引っ越しは少しずつするといいよ」

「いいえ、私、ほとんど荷物ないので、今日からここに住みます」

「え?荷物ないの?」

「着替えは、1週間分くらいありますけど、

あとは、簡単に持ち運べるものばかりなので…

それに、私、お気に入りのノースフェイスの寝袋に寝ていますから…」

「そう、それなら良かった」

きゅうりさんと外に出たとき、西の空が赤く染まっていたのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

処理中です...