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15.武具店へ
しおりを挟むあれから少し経ち、俺たちは屋敷を出て、王都に向かっていた。
まず初めの目的地は王都内にある武具店。
昨晩ソフィアが行きたいと言っていた場所だ。
「はぁ~」
屋敷を出て早々、俺は深い溜息を放つ。
「ランス? かなり疲れているみたいだけど……」
大丈夫ですか? と顔を覗きこんでくるソフィア。
俺は「大丈夫だ」と一言だけソフィアに返す。
(朝からあんなイベントが起こるなんてな……てか最近、溜息する回数増えた気が……)
驚きが収まるとまた次なるイベントが来て、追い打ちをかけてくる。
もうまるで今の自分は自分じゃないみたいだった。
分かりやすくいえば、誰かの身体を乗っ取って人生を送っているような……
それほどまでに数日前までとの格差が半端ない。
「最初は武具店に行くんだったな?」
「はい。すみません、付き合わせてしまって……」
「いや、俺も防具は替え時かなって思ってたからちょうど良かった。結構古びてしまったからな……」
「その防具は結構昔から使われているのですか?」
「まぁな。俺が冒険者を始めてからずっとだから、3年は使っているな」
まぁ今まで同じものをずっと使ってきた理由は二つほどある。
まず一つ目は単純で、金がなかったということ。
あともう一つは変える必要がなかったということだ。
後者に関してはクエスト自体が簡単なものばかりだからわざわざ防具を新しくする必要もなかったということ。
俺は魔法職でかつ杖なしでも魔法を使うことができたから、特別武器も必要なかったし。
それに冒険者を始めてからずっと使っているからそれなりに愛着も湧いていたってのもある。
「素晴らしいですね! 同じものをずっとお使いになれるなんて、尊敬します」
「そ、そうか?」
「はい! わたしなんか古くなればすぐ新しいものに変えてしまうので……」
「なるほどな」
ま、財政的な余裕があれば古い物を使う理由はあまりないしな。
「そう言えば、ソフィアのその白ローブは自分で買ったものなのか?」
と、ふとソフィアの白ローブを見ていて気になったので聞いてみることに。
ソフィアの返答はすぐに来た。
「いえ、これはお父様に頂いたものです。何でも昔使っていたものらしくて……」
「お古ってことか」
「そうなりますね」
それにしてはかなり綺麗だ。
多分、手入れが行き届いているからこそなんだろうけど、新品のように輝いている。
白色って結構汚れやキズが目立つもんだけど、それらは一切見当たらなかった。
俺の防具も一応は手入れしていたけど、結構汚れが目立っている。
(誰が手入れしているのかは分からないけど、是非とも教えていただきたいものだ)
ソフィアのローブをマジマジと見つめながら、そう思うランスであった。
♦
「ここ……ですか?」
「ああ、ここなら欲しいモノも見つかると思うぞ」
ということで王都入りしました。
そしてそのまま歩いて2分弱。
俺たちは王都最大の武具店、カールトン工房にいた。
王都には沢山の武具店はあるが、ここはその中でも規模は最大。
それにカールトンの武具は良品揃いと名高く、品ぞろえも豊富な有名ブランドだ。
もちろんその辺の武具店より値が張るが、ソフィアにぴったりのものが見つかると思い、ここをチョイスした。
ソフィア曰く、冒険者の先輩として防具を選んでほしいとのことで場所も俺が選択することになったのだ。
「な、なんか緊張してきました……」
ソフィアはこういうところに来るのは初めてとのこと。
やはり王女様といえども初体験は緊張するものなのか。
(いや、人のことは言えないか)
かくいう俺も結構緊張している。
何せ入店するのはこれが初めてだからだ。
武具店なんて安物しか売っていない所しか行ったことがない。
それにカールトン工房なんてそれなりに身分が高い人、または実力ある冒険者しか来れない。
G級冒険者の俺にとっては背伸びしても届かない場所にあったのだ。
緊張しても仕方ない。
「じゃ、じゃあ行くか」
「は、はいっ!」
お互いに鼓動高まる胸を押さえ、俺たちは工房内へと入っていく。
すると、
「「お、おおおおおお!」」
目に入ってきたのは様々な武器や防具の数々。
さすがは王都一の武具店、やはり格が違う。
「こりゃすごいな……」
「ですね! まるで武具の宝庫です!」
不思議なもので何でもない剥ぎ取り用ナイフでさえ輝いて見える。
こんなの原価くっそ安いはずなのに。
「へぇ……今時はこんな魔道具もあるのか」
見たことのないものを目の当たりにしてテンションが上がる俺たち。
だが今回は見物にきたわけじゃない。
俺はソフィアを呼ぶ。
「とりあえず、何を買うか決めよう。防具にも色々とあるし」
「そうですね。でもどのように選べばいいのでしょう……」
「まずは物理職か魔法職どちらの防具にするかだな。職によって防具のチョイスはだいぶ変わって来るから」
「あ、それでしたらわたしは魔法職になりますね」
ソフィアは即答する。
「なら話は早いな。あとはどのタイプの魔法職に特化しているかだな。ソフィア、少しだけギルドカードを見せてくれるか?」
「は、はい。構いませんよ」
ソフィアはそういうと懐から自分のギルドカードを取り出し、差し出してくる。
ギルドカードには自分の個人情報の他に魔法適正やランク、検査で得たステータスなどの記載がある。
要はギルドカードを見ればその人物が何を得意としているのかが分かるというわけ。
防具を選ぶ際の判断材料としては十分だ。
「えーっと、まずは魔法適正からだが……えっ?」
俺はソフィアのギルドカードを見た時、一瞬自分の目を疑った。
理由はギルドカードに書かれている魔法適正の欄。
そこを見てみると、思わぬ等級が書いてあったのだ。
「魔法査定S……だと!?」
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