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怪盗のはじまり
怪盗団
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――――魔法とは、悪霊が人間の少しの魔力を受け取るために、人間に力を貸す契約のことである。
これは、この世界に住むものなら誰だって知っている魔法の理論だ。
誰だって知ってはいるものの、その実、誰もが知らない存在それが悪霊だ。
悪霊はその名の通り悪い霊のことを表す言葉で、この世に何等かの悪意を持ってとどまり続ける霊のことを指す。簡単に言うのであれば悪人が死んだ慣れの果てということだ。
フランがどうして、このようなことを突然思い出したのかというと、それは彼女の涙に戸惑いを隠せなかったからだろう。
自分の行動が、アルを泣かせるだろうということが頭ではわかっていても、その結果どうするべきかということまでは考えていない。それほどにフランは直感的に動いてしまう人間だということだ。
「怒鳴ってごめん……だから、これからは僕も一緒に」
「ごめん、それは無理」
アルがくい気味に否定した。だが彼女は別に、フランの人間性に嫌な部分が見つかったからそういったわけではない。
むしろ、彼女には彼の性格はいまさら考えが変わるわけもないほどに知っていた。彼はどこまでいっても他人のために怒ることの出来る優しい人物だ。そう印象付けられるほどに、長い間付き合ってきたわけだ。
「どうして?」
しかし、フランには彼女の心が読めるわけもなく、もしかしたら自分が嫌われてしまったのではないかなどという恐怖にも似た感情が浮かぶ。
そのことに気づいてかアルはあわてて理由を述べた。
「あなたは怪盗なんてやるべきじゃない」
これこそが彼女の本心だ。
怪盗などと格好の良い言葉で呼んでは見たものの、所詮は盗人、泥棒でしかない。捕まった時には重罪になるし、一部……いや多くの人々が苦汁をなめることになるだろう。
所詮怪盗などとは忌み嫌われる存在だ。フランだって、アルが怪盗だと気がつく前は嫌っていた。そんな彼を引き込むことなどできるはずもない。
何より、彼は魔法を愛している。
「僕は君を愛している。自分よりも……なんて嘘くさい言葉を並べることは出来ないけど、少なくとも魔法よりは君の方が大切だ」
アルの考えとは裏腹に、フランはほんの数時間の間に覚悟を決めていた。
自身の大好きな、子供の頃から恋い焦がれてきた魔法であっても、彼女を苦しめる存在なのだというのであればなくなってしまうべきだ。彼の中では恋よりも愛のほうが上なのだ。
それをアルは理解できない。彼女は愛というものを誰よりもよく理解していたからだ。
「私のためだと思うんなら、自分を大切にして……」
アルは顔を大きくそらす。それは彼女が突き放す時にする癖だ。彼女は自分の言葉を後ろめたく感じているようで、どことなく顔つきが暗い。
「それは立場が逆でも同じだ。でも、君はやめられないんだろう?」
「やめられない。私は父と母を殺した貴族を許せないし、だからその貴族が貴族たり得る魔法はなくなればいいと思っている。所詮わたしはその程度の人間なの」
彼女の決意は固く、彼女はきっと魔法がなくなるか彼女が死ぬまで変わらないだろう。
本来であれば、彼女を止めることこそがフランの役目なのだが、彼女の出生を知っているからこそ、止めることは出来ない。むしろ、彼女を思えばこそ彼女を手伝いたいと思った。
「だったら、僕がいた方がいいだろう? 僕は魔法について詳しいつもりだ。それに君の嫌いな貴族で魔法も使える」
別に彼は皮肉を言ったわけではない、ただ彼女にはそう聞こえたようだ。
彼女はあわてて言い訳をする。
「あなたはほかの貴族とは違う。あなたは私を助けてくれた。私にとってはあなただけが正義で、私自身も私にとっては悪なの……だから、あなたには悪に染まってほしくない」
「僕は正義じゃない……たぶん。いやこの世のどこにも正義なんてものはない」
フランは達観するように言う。彼は自分が正義のために人助けをしたことなどないのだ。彼は今までも、これからも自分のために人を助ける。
今回アルを助けたいと思ったことだって、自分のためだ。
フランは渇いたのどを潤すために、アルからの返事を待たずに立ち上がる。アルは何か言いたそうな顔をしていたが、彼は足を進めて冷蔵庫に向かう。彼は自分の分も含め二人分水を入れて戻った。
「僕もね、この国の一部を除く貴族にはうんざりしている」
彼女に水を差しだすとフランは語り始める。
「この国では魔法を使えない人は人間扱いされない、それどころか家畜に近い扱いで、毎日うんざりするほど悲鳴が聞こえてくる。すべては悪霊がもたらした魔法が生まれてからだ。拷問に向いている魔法、人を呪う魔法、人を殺すためだけの魔法……魔法ってそんなもんじゃないだろう? 人に夢を与えるものじゃないのか!? ……だから、僕を怪盗として受け入れてくれ」
これは、この世界に住むものなら誰だって知っている魔法の理論だ。
誰だって知ってはいるものの、その実、誰もが知らない存在それが悪霊だ。
悪霊はその名の通り悪い霊のことを表す言葉で、この世に何等かの悪意を持ってとどまり続ける霊のことを指す。簡単に言うのであれば悪人が死んだ慣れの果てということだ。
フランがどうして、このようなことを突然思い出したのかというと、それは彼女の涙に戸惑いを隠せなかったからだろう。
自分の行動が、アルを泣かせるだろうということが頭ではわかっていても、その結果どうするべきかということまでは考えていない。それほどにフランは直感的に動いてしまう人間だということだ。
「怒鳴ってごめん……だから、これからは僕も一緒に」
「ごめん、それは無理」
アルがくい気味に否定した。だが彼女は別に、フランの人間性に嫌な部分が見つかったからそういったわけではない。
むしろ、彼女には彼の性格はいまさら考えが変わるわけもないほどに知っていた。彼はどこまでいっても他人のために怒ることの出来る優しい人物だ。そう印象付けられるほどに、長い間付き合ってきたわけだ。
「どうして?」
しかし、フランには彼女の心が読めるわけもなく、もしかしたら自分が嫌われてしまったのではないかなどという恐怖にも似た感情が浮かぶ。
そのことに気づいてかアルはあわてて理由を述べた。
「あなたは怪盗なんてやるべきじゃない」
これこそが彼女の本心だ。
怪盗などと格好の良い言葉で呼んでは見たものの、所詮は盗人、泥棒でしかない。捕まった時には重罪になるし、一部……いや多くの人々が苦汁をなめることになるだろう。
所詮怪盗などとは忌み嫌われる存在だ。フランだって、アルが怪盗だと気がつく前は嫌っていた。そんな彼を引き込むことなどできるはずもない。
何より、彼は魔法を愛している。
「僕は君を愛している。自分よりも……なんて嘘くさい言葉を並べることは出来ないけど、少なくとも魔法よりは君の方が大切だ」
アルの考えとは裏腹に、フランはほんの数時間の間に覚悟を決めていた。
自身の大好きな、子供の頃から恋い焦がれてきた魔法であっても、彼女を苦しめる存在なのだというのであればなくなってしまうべきだ。彼の中では恋よりも愛のほうが上なのだ。
それをアルは理解できない。彼女は愛というものを誰よりもよく理解していたからだ。
「私のためだと思うんなら、自分を大切にして……」
アルは顔を大きくそらす。それは彼女が突き放す時にする癖だ。彼女は自分の言葉を後ろめたく感じているようで、どことなく顔つきが暗い。
「それは立場が逆でも同じだ。でも、君はやめられないんだろう?」
「やめられない。私は父と母を殺した貴族を許せないし、だからその貴族が貴族たり得る魔法はなくなればいいと思っている。所詮わたしはその程度の人間なの」
彼女の決意は固く、彼女はきっと魔法がなくなるか彼女が死ぬまで変わらないだろう。
本来であれば、彼女を止めることこそがフランの役目なのだが、彼女の出生を知っているからこそ、止めることは出来ない。むしろ、彼女を思えばこそ彼女を手伝いたいと思った。
「だったら、僕がいた方がいいだろう? 僕は魔法について詳しいつもりだ。それに君の嫌いな貴族で魔法も使える」
別に彼は皮肉を言ったわけではない、ただ彼女にはそう聞こえたようだ。
彼女はあわてて言い訳をする。
「あなたはほかの貴族とは違う。あなたは私を助けてくれた。私にとってはあなただけが正義で、私自身も私にとっては悪なの……だから、あなたには悪に染まってほしくない」
「僕は正義じゃない……たぶん。いやこの世のどこにも正義なんてものはない」
フランは達観するように言う。彼は自分が正義のために人助けをしたことなどないのだ。彼は今までも、これからも自分のために人を助ける。
今回アルを助けたいと思ったことだって、自分のためだ。
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