彼女はその程度か? ~奪われし魔法~

城井 白

文字の大きさ
16 / 25
悪霊と貴族と

袋小路

しおりを挟む
 僕はアルを連れて、何事もなかったかのようにドアを開けた。もちろん、足音が止まったわけでもないし、ドアを開けた先に誰もいないなんてことも状況から考えるに可能性が低い。
 実際に、ドアを開けるとすぐに複数人の男たちに囲まれることとなる。

「誰だ!?」

 男たちの中でも一番大柄な男が、僕に向かって声を荒げた。
 そりゃそうだ、突然警備していた家の倉庫の中から見知らぬ人が出てきたら誰だって不審に思うだろう。僕だってそう思う。
 しかし、今なら彼らを誤魔化すことができるだろう。

「あなたたちこそどちら様ですかな?」

 なぜなら、彼らには僕がこの屋敷の執事にしか見えていないからだ。
 僕の変装魔法は限定的で、その場所にもっともゆかりのある人物にしか成り済ますことができない。だから、僕たちがいた部屋から一歩でも出てしまえば変装は解ける。もっとも、倉庫に一番ゆかりのある人物が、この屋敷の執事だとは思わなかったから、少し自分でも面喰ってしまったわけだ。
 執事といわれる人種とあまりかかわりを持ってこなかった僕にとっては、一番難しく、一番ごまかしがきかないいわば賭け事のようなものだが、僕はこの屋敷の執事のことは嫌なほどよく知っていた。

「俺たちはあんたのご主人様に雇われた傭兵だ。あんたはここで何をしていた」
「いやはや、あなたたちのような下民にも似たゴミのような人種を雇うとは嘆かわしい……」

 この男、執事は選民思想の持ち主だ。貴族以外には仕えず、彼自身もまた貴族である。そのためか、下民のことを毛嫌いしており、僕と同じで魔法を愛している。
 だから、平民がするよりもしたの行動、たとえば傭兵なんかは尋常じゃないほど嫌っているというわけだ。つまり、僕はこの姿がかなり嫌いだ。できることなら一秒たりともこの姿でいたくはない。誰かに頼めるなら委託したいほどだ。
 その点、彼ら傭兵たちと僕は気が合いそうだ。

「けっ! お前が魔法使いでも雇い主の持ち物でもなければ、すぐさまに……」
「すぐさまになんですかな?」
「すぐさまに、こんなところから出て行ってやるものを!」

 一番大柄な傭兵は、とっさに口から出そうになったであろう言葉を飲み込んで、強がりを言う。
 彼ほどの体格があろうと、魔法使いには勝てないというのがこの国での常識だ。もし仮に、彼が魔法に対抗しえる『武器』というものを持っていれば話は別だろう。だが、それもこの国には存在しない。貴族たちが持ち込みを禁止したからだ。
 それにしても、この男……って言っても僕なんだけど、こんな嫌みばかり言ってて疲れないのかな。

「それはありがとうございます。わたくしも、あなたたちが主人の客人でなければ今すぐにでも八つ裂きにして差し上げますよ。とにかく、ここには様々な貴重品がございますので、さっさと護るべき場所にお戻り願おうかな? もっとも、あなたたちごときには何も盗むことも、護ることもできませんがね」

 僕がそう言ったところで、ようやく傭兵たちは頭に来たようで、ぶつくさと何かを言いながら別々の方向へと去っていく。その様子を見送ってから、僕も不満を吐きつつ部屋を出る。

「流石貴族……」

 ずっと僕の後ろに隠れていたアルが、僕に対して微笑みながら嫌みを言った。
 僕も今までの自分の言動には嫌な気分しか感じていなかったので、別にその嫌みに対して何か思うところがあるわけでもない。むしろ、彼女がそう茶化してくれなければ、もっとストレスを感じていたことだろう。
 彼女に見えないように、僕は小さく息を吐いた。

「君も元貴族だろう……。ともかく、これでようやく行動に移せそうだ」
「とは言っても、これだけ広い屋敷。目的の場所はわかっていてもこれだけ警備が厳しいとね……」

 ある程度は、ジャンヌがフォローしてくれることにはなってはいるものの、アルの言うとおり警備が厳しい。それも国の兵隊ではなく私兵を使っているというのも厄介だ。
 いくらエリートなジャンヌがいたとしても、私兵までを動かすことは出来ないだろう。
 まあ、もう一度僕の魔法を使う手段がないわけではない。

「でも、僕の魔法は頼りにしない方がいいかも」
「そうね、便利な魔法だけどその分、リスクが大きからね。その魔法にばかり頼ってても、これからの作戦に支障が出るだろうし……下手に変装してばれて死傷なんて笑えないわよ」
「…………そんな思いついたような言葉遊びをされても、うまくもなんともないけど少しむかつくからやめてもらえるかな?」

 冗談もだけど、その内容も笑えたものではない。『死』なんて縁起でもないことを言わないでほしい。

「ともかく、私の魔法をいくつか使ってみるとしましょうか!」

 彼女は罰が悪そうに、僕の話をスルーする。ちなみに今のは冗談でも何でもない。スルーとするをかけているわけではない……言葉の性質上仕方ないことなんだ。そう誰に言われるでもなく、僕は言い訳をしたい。
 そんなことよりも、彼女の提案には同意しかねる。

「それは厳しくない? いつだれが来るかもわからないこんなところで、どうやったら魔法の使い方を勉強する時間があるというの?」
「時間ならあると思うけど、それよりも、今君らのすることは別だろう?」

 僕はいつの間にか背後に立っていた男の方に視線を向ける。
――全く次から次へと、暇しない場所だな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...