ハッピーエンドを迎えたら、溺愛王子から逃げたくなりました。

専業プウタ

文字の大きさ
9 / 20

9.私の魅力

しおりを挟む
ジスランと私がテントから出ると、既に嘔吐している騎士たちが見えた。

「皆さん、スープに使われていた食材に問題がありました。全て吐き出してしまえば問題ございませんわ」

私は近くにいた一人のオレンジの髪色をした騎士が気持ち悪そうだったので、近づいた。

「失礼します」
騎士の舌の奥に人差し指と中指を突っ込み吐かせる。

「う、うげぇー。フェリシア王子妃殿下。大変失礼を」
「本当だよ。僕の妻にゲロかけるなんて不敬罪だぞ」

確かにドレスの裾に吐瀉物が掛かったが、緊急時なので仕方がない事だ。

「ジスラン、私がやった事ですよ」
「僕だって、君にしたことがない事を他の男がしたんだ。嫉妬するのは当然だろう」
「⋯⋯ジスラン、私にゲロを吐く予定があったのですが?」
「ない。ただ、君が穢されるのは見てられない」

ジスランは不思議なヤキモチを妬いていて、納得していないようだった。

ゲロ臭いだろうに私を抱き寄せて来る彼。

「独占欲だ。もう少し、このまま我慢してくれ」
「⋯⋯あと、五秒で離れてください」
「嫌だ。僕が少しでも好きなら我慢してくれ」
「⋯⋯」

無性に今ジスランから離れたいのは、まだ私の中に彼への恋心が残っているからだ。
自分でも鼻が曲がるくらい臭いのに、彼に匂いを嗅がれていると思うと居た堪れなくなった。

「フェリシア様。ルイス・ビュケと申します。助けて頂きありがとうございます」

ルイス・ビュケは吐き切って気持ちがスッキリしているのか、眩しいくらいのキラキラの笑顔だ。

「ビュケ卿。周りの体調不良の騎士たちも吐かせてあげてください。それから、まれに、昏睡状態や低体温症状が出てしまう場合もあります。そういった騎士がいた場合は私に知らせてください」

「はい、分かりました」

ルイス・ビュケは私に右手をあげて敬礼すると、他の騎士たちを私がしたように吐かせ始めてくれた。

オタム湖の辺りまでジスランと行き、いざドレスを脱ごうとするとジスランの視線を感じた。

「ジスラン、後ろを向いててください」
「そこは、一緒に湖に入りましょうじゃないのか?」
「軽薄なこと言うのですね。混浴するような事は真の夫婦になってからです」
「早く真の夫婦になりたいな⋯⋯」

ジスランはトライアル期間を終えた一年後に、私と真の夫婦になろうと思っているようだ。

契約結婚を申し出ておきながら、私はジスランと真の夫婦になるのは難しいと考えている。何度、彼に恋をしても、他の女を欲しがるような話をした彼に対しての不信感が消える事はない。

「ドレスを脱いだら、僕に渡してくれ。他の男のゲロが掛かったドレスを着てほしくない」

「⋯⋯はい」

言われた通り脱いだドレスをジスランに渡すと、彼は湖でジャブジャブと洗い出した。一応、私に言われた通り私の方を見ないようにしているようだ。

瞬間、私のお腹の辺りにぬるっとした何かが通った。

「きゃっ!」

魚が通過しただけなのに、不意打ちだったので驚いた。

「どうした?」

私の声に反応しジスランが振り向く。
彼は私の顔を見た後、スッと目線を下ろして全身を見ようとした。

「魚が横腹に触れただけです。ジスラン、あと、三秒以内に後ろを向かないと許しませんよ」

「一、二、三」

ジスランは私を上から下まで三秒数えながら見つめた後、後ろを向いて何事もなかったようにドレスを洗い出した。
私はオタム湖の透明度を憎らしく思った。

「三秒だけでも、フェリシアに触れられたようでドキドキしたよ。魚はもっと君に触れたのか。君の夫でもないのに、図々しいな」

「魚には下心がありませんから。ちなみに先程の魚は捕獲したので、明日の朝食にしましょう」

「フェリシアに触れるには死をも覚悟しなければならないんだな。でも、それくらいの魅力が君にはあると僕は思うよ」

ジスランは楽しそうに声を上げて笑った後、五秒程黙り込み再び口を開いた。

「故意にスープに毒を入れたとはフェリシアは考えていなさそうだな」

「当然です。故意に毒を混入するなら、死に直結する毒になるものを入れます」

「確かにそうだな。フェリシアはどこで植物の知識を得たんだ? 君のような博学な令嬢を僕は見たことがない」

「私は図鑑を読むのが好きな変わり者の女の子だっただけですわ。植物やキノコ類は毒性があるものも沢山あります。私を信頼してくれるのであれば、私に食料調達の指揮と食事を用意することを任せては頂けませんか?」

特にキノコ類は毒性のあるものと、ないものの見た目が似ている場合がある。

図鑑だけではなく、現物のキノコを見て食してきた私なら見分けられる。

「フェリシア、君に食事の支度をお願いするよ。僕は君の用意するものなら安心できる」

「信用して頂きありがとうございます」

頬に温かさを感じて後ろを見ると、ジスランが薪で火を焚いていた。洗い上がったドレスを乾かしてくれる。彼は優しいところがあり、彼を愛し愛される人生があれば幸せだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。

あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、 見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。 そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。 かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、 私はその人生を引き受けることになる。 もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。 そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。 冷酷と噂される若公爵ユリエル。 彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。 そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。 選び直した生き方の先で待っていたのは、 溺れるほどの愛だった。 あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。 これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

顔が良ければそれでいいと思っていたけれど、気づけば彼に本気で恋していました。

朝日みらい
恋愛
魔物を討伐し国を救った若き魔術師アリア・フェルディナンド。 国王から「望むものを何でも与える」と言われた彼女が選んだ褒美は―― 「国一番の美男子を、夫にください」 という前代未聞のひと言だった。 急遽開かれた婿候補サロンで、アリアが一目で心を奪われたのは、 “夜の街の帝王”と呼ばれる美貌の青年ルシアン・クロード。 女たらし、金遣いが荒い、家の恥―― そんな悪評だらけの彼を、アリアは迷わず指名する。 「顔が好きだからです」 直球すぎる理由に戸惑うルシアン。 だが彼には、誰にも言えない孤独と過去があった。 これは、 顔だけで選んだはずの英雄と、 誰にも本気で愛されたことのない美貌の青年が、 “契約婚”から始める恋の物語。

処理中です...