10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ

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24.不穏な来訪者

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私が冬馬さんからの溢れんばかりのプレゼントの整理をしていると、江夏爽太が鍋を持って現れた。

「桜田さん。さっきは、本当にごめんね。これ良かったら食べてくれる?」
 申し訳なさそうな顔で差し出された鍋の蓋をそっと開ける。
 具沢山のホワイトシチューは食欲をくすぐる香りを漂わせていた。

「ありがとう。美味しそうなシチューだね。これからは、寝ている人に勝手にキスしたりしちゃダメだよ。そういうのは許可をとってからする事!」
 私は自分で言いながら、冬馬さんも許可を取らずにキスをしてきた事を思い出した。あの時の私は不快感を持つどころか、もっとキスが欲しいとさえ感じていた。
「ごめん、本当にもうしない。桜田さんの中で俺の事は十年前に終わってるのに、また傷つけるなんて本当にバカだよな」

 私は静かに涙する彼に声をかけようと思ったが、彼に期待をさせてはいけないと彼が泣き止むまで黙って側にいた。

 彼は私の具合を心配して、料理を作って持ってきたようだ。私は体調も回復し、お手伝いさんもいる。それでも、寝入った私にキスしたことをひたすらに涙ながらに謝ってくる彼の厚意を拒否できなかった。

 私はダイニングで江夏君とホワイトシチューを一緒に食べた。一口で分かるこだわり抜いた味。ホワイトシチューは明らかにルーから作っていて、野菜の切り方からも彼が料理が得意な人だと分かる。

「このシチュー凄く美味しい。江夏君、本当は家事得意でしょ」
 私の言葉に江夏君が気まずそうに、ポツリポツリと語り出す。よく考えれば江夏君は何でも器用にこなすオールマイティーな人だった。一人暮らしをして家事が苦手なら、その苦手を潰していくストイックさも持っている。

「確かに家事は得意かも⋯⋯極めると再限がないところとか家事って奥深いよね。ごめん、俺、下心があって桜田さんに住み込みの家事代行を頼んだ。二人で一緒に住む内に愛情が芽生えて、結婚とかできれば最高だなとか考えちゃって⋯⋯」
「えっ? 下心というか、壮大な計画だね」
 私は江夏君の下心の壮大さに笑ってしまった。

「そんなに可笑しい? でも、ドラマではお互いを知る内に情が芽生えて結婚してたんだよ」
 江夏君がアワアワしながら説明してくる。

 家事が不得意だと嘘をついても私一緒にいたがる彼を見て、また冬馬さんが嘘をついた理由を考え始めていた。
「冬馬さんも私に嘘をついていたんだ⋯⋯その理由が何でか気になっちゃって⋯⋯」
 こんな事を江夏君に聞いている私はどんな答えを求めているのだろう。江夏君は少し困ったような顔をした後に徐に口を開いた。

「SPにお手伝いさんに医者か⋯⋯城ヶ崎さんは桜田さんの事を大切に思ってるんだね。俺、城ヶ崎さんの過去の女性関係とか持ち出して嫌な奴だったかも。俺の方がずっと桜田さんに酷いことして来たのにな。寝ているのを良いことに勝手にキスまでして最低だ」

 江夏爽太は桜田家に配属された面々をみて驚きながらも再び懺悔してきた。

「もう、キスの事は良いよ。私も忘れるから江夏君も忘れて! 冬馬さんの事は実はよく知らないんだ。江夏君は冬馬さんの事を結構知ってるの?」

「知ってるも何も、うちの会社のの大口取引先の副社長だからね。城ヶ崎冬馬副社長は女好きだけど、めちゃくちゃ仕事ができる事でも有名なんだ。こんな田舎に城ヶ崎グループのホテルが出来るって聞いたよ。鈴村建設に一切関わらせないらしい。おそらく桜田さんが地元で過ごしやすいようにする為だと思う」

 私は地元に到着してから、周囲が妙に好意的な態度になっている事を不審に思っていた。人々の手のひら返しに、人間不信になりそうだ。

「冬馬さん、私のこと調べたのかな? 私、あまり昔の話を細かく彼にしてないのに何もかも知られている感じがするんだよね」
 私の言葉に江夏君が静かに頷く。
「城ヶ崎さんは根っからのビジネスマンだからね。ビジネスは情報戦! 桜田さんの事も徹底的に調べたんじゃないかな」

 私の事を調べた理由が、私を弄びたいからではなく私を好きだからだったらどれだけ良いかと願った。

「仕事ができる人って女好きが多いのかな。英雄色を好むというか⋯⋯」
 冬馬さんの女性遍歴を思い出すと気分が悪くなる。消えたはずの彼への気持ちがまだ残っているのかもしれない。

「健康食品の通販会社から始めて一代で会社を大きくした小山内進も、女好きで有名だからね。相関関係はあるのかも」
 江夏君の言葉に私はため息が漏れた。女好きな男と関わると苦労をしそうだ。

ピンポーン!

 インターホンの音が鳴ると、江夏君が「俺が出るよ」と足早に玄関に行く。

 程なくして、突然ドカドカと大勢の黒服を引き連れた初老の男性が現れた。険しい表情をしながら私を見るその男性は、テレビでも見た事がある。今、江夏君との会話にも出ていた小山内進だ。私を上から下まで舐め回すように見てくるその男に嫌な気分になった。

「あの! 小山内社長、何か御用でしょうか?」
 江夏君が困惑したように私と小山内社長の間に入る。

「娘に会いに来たんだ。未来、君は私と美亜と愛し合ってできた子に違いない。ああ、よく見るとポテっとした口元が私に似ているではないか」

 父親がどういうものかは知らないが、彼が私を見る目は父親の目ではない。品物を見るような見定める目だ。私は気持ち悪くて眩暈がした。

「父親はいないと思って育ってます。愛し合って私ができた? 母が貴方を愛していたとは思えません」
 高そうなスーツに身を包んだ小山内進を見ると気分が悪くなる。困窮していたのに母は彼を頼らなかった。つまり、彼は母にとって関わりたくない人物だということだ。
「ふっ、本当に気が強いな。そんな所も美亜にそっくりだ」
 小山内社長が手をサッと挙げた。
 その合図と共に、黒服の男たちが私を連行しようとする。

「ちょっと離して!」
 身を捩るけれども拘束が強すぎて逃れられそうにない。
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