10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ

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26.好きです!

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 黒服が驚いた顔をしながら、進路を開ける。

『まさか私の婚約者に手を出そうとした訳ではありませんよね?』
『城ヶ崎サンの婚約者? いえ、あの。私はただ彼女とお茶を飲んでいただけで⋯⋯』
 流暢なアラビア語で冬馬さんが語りかけ、アラブの富豪は慌ててズボンを履いていた。

「未来、行こう!」
「冬馬さん!」
 私は冬馬さんが差し出した手をしっかりと掴む。部屋を出て非常階段を上りながら、私は冬馬を傷つけたことを謝りたいと思うが胸が詰まって言葉が出ない。
 鉄の扉を開けるとホテルの屋上のヘリポートに出た。視界を遮るものが何もない星空を背に冬馬さんが心配そうに私を見つめている。私は自分の中に彼への気持ちが残っていることに気がつかされた。彼は遊び人で沢山の女性を泣かせてきて、私も一緒にいたら辛い思いをするかもしれない。
(辛くても良い⋯⋯冬馬さんと一緒にいたい)

 ホテルのヘリポートからヘリに乗ろうとしたところで、後ろから小山内社長の声がした。

「城ヶ崎副社長、私の娘をお迎えにヘリでいらしたのですか? 是非、席を設けますのでお話を聞いて頂けませんか?」
 悪びれない小山内進の声に寒気がして、私は冬馬さんにしがみついた。

「大切な人が今、体を震わせてるので、ご挨拶は後ほどさせて頂きたます」
 冬馬さんは私をそっと抱き上げるとヘリに乗せた。

 ヘリに乗り込むと冬馬さんが私の耳にヘッドホンのようなものを付けようとしてくる。私は彼の両手首を掴んだ。

「私、売り飛ばされそうになりました。売り飛ばされるなら、冬馬さんに売り飛ばされたいです!」
「それなら、俺の一生で未来の一生を買わせて。本当に未来のことしか考えられないくらい君が好きなんだ」

 私は周囲に評判が立つくらいの遊び人を見るのは冬馬さんが初めてだ。私を愛おしそうに見つめて来る男は、ただの遊び人で私を落とすこともゲームの一つなのかもしれない。
(それでも、もういいや)

「私、冬馬さんになら騙されてもいいです! それくらい一緒にいた時が幸せだったんです」
 自分の声が涙声になっているのが分かった。冬馬さんが私の溢れ落ちる涙に遠慮がちに口付けをして来る。 

「未来に信じてもらえる俺になるよ。俺も未来といる時が今までで一番幸せだった。これからも、幸せな時間を君と一緒に紡いでいきたい」

 冬馬さんの顔が近づいてきて、私は彼の優しい口付けを目を瞑り受け入れた。唇が離れて冬馬さんと目が合う。私と彼はこれからどうなるのだろう。私の父親があの男で、力で私の母を捩じ伏せ孕ませたと思うと苦しくなってくる。
「冬馬さん、小山内進が私の父親なんですか? あんな人が父親なんて⋯⋯」
 私は自分のことなのに、冬馬さんに質問していた。彼は何でも知っている。江夏君曰く私のことは調べ尽くしている。

「小山内進は未来の父親じゃない。未来が可愛いから近づいてきた変なおじさんだ。これからは、知らないおじさんさんに着いて行ってはダメだよ」
 冬馬さんは微笑みながら私のおでこに軽く口付けをしてきた。彼は嘘ばかりつくが、今の嘘は私の為の嘘だ。嘘なんて嫌いなのに、その嘘は私の心を温かく満たしていった。

「冬馬さん、好きです」
 私は彼の目をしっかりと見据えながら自分の気持ちを伝えた。彼は頬を染めて照れたように目を逸らす。女性に告白されることなんて慣れていそうなのに、何だか可笑しい。

「俺も未来が好きだよ。急にどうした? 結婚前に俺に抱かれたくなった?」
「⋯⋯はい」
 私の返事を聞くなり、冬馬さんは歯を食いしばり目を瞑った。

「ごめん。癖で軽口を叩いちゃったけれど、俺は本当に未来が好きだから結婚するまで我慢する。ちゃんと俺が変わったところを見せて、未来を安心させるから。俺が欲しいのは未来の体じゃない。心なんだ! 今、弱ってる君に漬け込みたくない」

「分かりました」
 私は勇気を出して彼に抱かれたいと言った。断られたようで少し恥ずかしい。思わず彼から目を逸らしてしまった。
「一応、変わった俺と大人の余裕を見せようと思ったんだけど伝わってるよね。俺は未来を抱きたくて仕方ないけど、敢えて我慢していること」
「伝わっております⋯⋯」

 私は謎の弁明をしてくる冬馬さんが可笑しくて、吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。

「せっかく俺の元に戻って来てくれたから、もう手放したくないんだ。本当はめちゃくちゃ感度の良い未来の体が気になってる」
「えっ?」
 私はまだその話が続いていたのかと、思わず顔を顰めてしまった。「感度の良い体が気になってる?」そんな可笑しな事を初めて言われた。

「いや、そうじゃないんだ。俺は我慢できるんだ。ただ、なんであんなに敏感なのかなと⋯⋯一人でしたりしてたのかなんて想像してないよ。ただ、気になって⋯⋯そんな惚けた表情されると刺激はされちゃうんだよ」
「はぁ⋯⋯」

 私はまごまごしている冬馬さんを観察し続けた。彼は本当に謎が多い人だ。私を調べ尽くし、恋人のフリをしたのも理解できない。それでも、私の危機を察知して助けに来てくれた。冬馬さんを見た時にホッとしたし、もっと一緒にいたいと思った。彼が私を弄んでいたとしても、そのお遊びに付き合ってみても良いような気になった。
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