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28.父からの呼び出し(冬馬視点)
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あれから、一週間。俺は未来と楽しい新婚のような生活をしている。今まで人に仕事を預けても、結局全て自分で確認していた。
しかし、今は本当の意味で仕事を預けるようになっている。別に部下が信用できるようになったのではなく、未来との時間を捻出する為だ。本当の理由を知らない部下たちは、俺から信頼を得たと感動し、仕事に一層精を出すようになった。結果、以前よりも人間関係も円滑になり、業務も効率化した。全てがうまく行っているのは、きっと未来のお陰だ。未来がいるだけで、退屈だった毎日が多幸感に包まれている。今度こそ逃げられないように慎重に彼女と関わっていこうと思った。
俺は裏で小山内進の秘書に手を回し、DNA鑑定の検査結果を未来との親子関係はないというものにすり替えさせた。これで、小山内進に未来を利用されることもないだろう。
副社長室で仕事を片付けていたら、突然秘書の柳田がノックもせずに焦ったように部屋に入って来た。
「副社長、社長がお呼びです。直ぐにでも社長室に来て欲しいとの事でした」
突然の父からの呼び出しに一瞬、嫌な予感がした。父は予定を分刻みでこなすタイプで、あらかじめ約束していない呼び出しなど初めてだ。
「分かった。今行く」
エレベーターで最上階に行こうとボタンを押した所で、結構待ちそうだと気が付き非常階段で一階分あがる事にした。
重い鉄の扉を開いた時に、江夏爽太と抱きしめられていた未来を見た光景が蘇る。俺の告白に「好きでもない人から、そんな事を言われても迷惑」と切り捨てた彼女。
「もうちょっとオブラートに包んでくれても良いのに、本当にはっきりしてるよな⋯⋯」
未来がまたいつ三行半を突きつけてくるかと思うと怖い。俺を好きだと言っている今の内に結婚してしまいたくなる。でも、無理に事を急いで不信がられて逃げられる可能性がある。先手必勝で生きて来たのに、俺は異常なまでに慎重になっていた。
ノックをして社長室に入ると、父が仕事モードではない父親の顔で俺を見ていた。
「冬馬、そこに座れ」
父は仕事の時は俺を役職で呼ぶ。今、は父親として俺に接しているということだ。応接用の黒いレザーのソファーに座るよう促されたが咄嗟に断った。
(未来の事を反対される?)
「いえ、立って聞きます」
俺の言葉に父は溜息を吐くとゆっくりと口を開いた。
「母さんから、話は聞いたよ。桜田未来さんと結婚を考えているんだな。冬馬、私はお前は跡取りとしては十分過ぎる程できた息子だ。だから、会社の為に結婚しろと言う気はない。好きな相手と結婚すれば良いと思ってる」
「父さんは、俺と未来の結婚に賛成してくれると言うこと?」
「他の誰と結婚しても良いが、桜田未来さんだけはダメだ。彼女は小山内進の娘だろう。厄介な事になるのが目に見えている」
父の言葉に俺は思わず、壁を拳で殴った。
(どこから漏れた? 秘書も買収したのに)
「なら、親子の縁を切ってくれて構わないよ。貴方の許可なんて必要ない。俺に必要なのは未来だけだ」
「やはり、小山内進の娘なんだな」
どうやら、俺はカマをかけられただけだったらしい。
「そうだよ。そのせいで未来は危険な目にもあっている。でも、俺なら未来を守れるし、俺が彼女を幸せにしたい」
父は俺の宣言に嬉しそうに声を出して笑った。
「本当に成長したな。冬馬。人を信用できるようになったのは、未来さんのお陰かな。実は『ブルーミング』の社長職をお前に譲り、ホテル事業の方に専念したいと思っているんだ。今のお前になら安心して『ブルーミング』を任せられる」
俺は思わず首を傾けた。未来の話はなぜか、俺の社長就任の話に変わっていた。城ヶ崎グループはアパレル会社『ブルーミング』を中心として、ホテル事業やホテル、レジャー施設、クルーズ事業など手広くやっている。父が一番拘っていたのが核であるアパレル事業だったので、それをこんなに早く譲ってくるとは驚きだ。
父は机の引き出しから紙を出して来た。
「えっ? 婚姻届?」
「母さんから、一度未来さんに振られたと聞いた。また、振られる前に早いところ入籍してしまった方が良い。何を足踏みしている! お前らしくもない」
父は婚姻届の証人欄に署名をすると、微笑みながらそれを渡して来る。
「あ、ありがとう⋯⋯ございます」
俺は婚姻届を思わず賞状のように両手で受け取ってしまった。
「ふふっ、社長就任より未来さんと結婚できる方が嬉しいのか? そんな好きな相手ができる人生なんて羨ましいぞ」
「大好きなんで、絶対に幸せにします」
「お前どうしたんだ。私に告白してないで、早いところ未来さんのところに行きなさい。母さんが冬馬が恋をして少し変になってると聞いたが、大分可笑しくなってるな」
父はかなりツボにハマってしまったらしく、爆笑している。
俺は自分が嬉しさのあまり敬語になってしまった事や、父に告白してしまった事に気がつき恥ずかしくなった。
深く頭を下げて社長室を出る。
「やったー! 結婚だ!」
ガッツポーズした俺を父の社長秘書が未確認生物を発見したような目で見ていた。
しかし、今は本当の意味で仕事を預けるようになっている。別に部下が信用できるようになったのではなく、未来との時間を捻出する為だ。本当の理由を知らない部下たちは、俺から信頼を得たと感動し、仕事に一層精を出すようになった。結果、以前よりも人間関係も円滑になり、業務も効率化した。全てがうまく行っているのは、きっと未来のお陰だ。未来がいるだけで、退屈だった毎日が多幸感に包まれている。今度こそ逃げられないように慎重に彼女と関わっていこうと思った。
俺は裏で小山内進の秘書に手を回し、DNA鑑定の検査結果を未来との親子関係はないというものにすり替えさせた。これで、小山内進に未来を利用されることもないだろう。
副社長室で仕事を片付けていたら、突然秘書の柳田がノックもせずに焦ったように部屋に入って来た。
「副社長、社長がお呼びです。直ぐにでも社長室に来て欲しいとの事でした」
突然の父からの呼び出しに一瞬、嫌な予感がした。父は予定を分刻みでこなすタイプで、あらかじめ約束していない呼び出しなど初めてだ。
「分かった。今行く」
エレベーターで最上階に行こうとボタンを押した所で、結構待ちそうだと気が付き非常階段で一階分あがる事にした。
重い鉄の扉を開いた時に、江夏爽太と抱きしめられていた未来を見た光景が蘇る。俺の告白に「好きでもない人から、そんな事を言われても迷惑」と切り捨てた彼女。
「もうちょっとオブラートに包んでくれても良いのに、本当にはっきりしてるよな⋯⋯」
未来がまたいつ三行半を突きつけてくるかと思うと怖い。俺を好きだと言っている今の内に結婚してしまいたくなる。でも、無理に事を急いで不信がられて逃げられる可能性がある。先手必勝で生きて来たのに、俺は異常なまでに慎重になっていた。
ノックをして社長室に入ると、父が仕事モードではない父親の顔で俺を見ていた。
「冬馬、そこに座れ」
父は仕事の時は俺を役職で呼ぶ。今、は父親として俺に接しているということだ。応接用の黒いレザーのソファーに座るよう促されたが咄嗟に断った。
(未来の事を反対される?)
「いえ、立って聞きます」
俺の言葉に父は溜息を吐くとゆっくりと口を開いた。
「母さんから、話は聞いたよ。桜田未来さんと結婚を考えているんだな。冬馬、私はお前は跡取りとしては十分過ぎる程できた息子だ。だから、会社の為に結婚しろと言う気はない。好きな相手と結婚すれば良いと思ってる」
「父さんは、俺と未来の結婚に賛成してくれると言うこと?」
「他の誰と結婚しても良いが、桜田未来さんだけはダメだ。彼女は小山内進の娘だろう。厄介な事になるのが目に見えている」
父の言葉に俺は思わず、壁を拳で殴った。
(どこから漏れた? 秘書も買収したのに)
「なら、親子の縁を切ってくれて構わないよ。貴方の許可なんて必要ない。俺に必要なのは未来だけだ」
「やはり、小山内進の娘なんだな」
どうやら、俺はカマをかけられただけだったらしい。
「そうだよ。そのせいで未来は危険な目にもあっている。でも、俺なら未来を守れるし、俺が彼女を幸せにしたい」
父は俺の宣言に嬉しそうに声を出して笑った。
「本当に成長したな。冬馬。人を信用できるようになったのは、未来さんのお陰かな。実は『ブルーミング』の社長職をお前に譲り、ホテル事業の方に専念したいと思っているんだ。今のお前になら安心して『ブルーミング』を任せられる」
俺は思わず首を傾けた。未来の話はなぜか、俺の社長就任の話に変わっていた。城ヶ崎グループはアパレル会社『ブルーミング』を中心として、ホテル事業やホテル、レジャー施設、クルーズ事業など手広くやっている。父が一番拘っていたのが核であるアパレル事業だったので、それをこんなに早く譲ってくるとは驚きだ。
父は机の引き出しから紙を出して来た。
「えっ? 婚姻届?」
「母さんから、一度未来さんに振られたと聞いた。また、振られる前に早いところ入籍してしまった方が良い。何を足踏みしている! お前らしくもない」
父は婚姻届の証人欄に署名をすると、微笑みながらそれを渡して来る。
「あ、ありがとう⋯⋯ございます」
俺は婚姻届を思わず賞状のように両手で受け取ってしまった。
「ふふっ、社長就任より未来さんと結婚できる方が嬉しいのか? そんな好きな相手ができる人生なんて羨ましいぞ」
「大好きなんで、絶対に幸せにします」
「お前どうしたんだ。私に告白してないで、早いところ未来さんのところに行きなさい。母さんが冬馬が恋をして少し変になってると聞いたが、大分可笑しくなってるな」
父はかなりツボにハマってしまったらしく、爆笑している。
俺は自分が嬉しさのあまり敬語になってしまった事や、父に告白してしまった事に気がつき恥ずかしくなった。
深く頭を下げて社長室を出る。
「やったー! 結婚だ!」
ガッツポーズした俺を父の社長秘書が未確認生物を発見したような目で見ていた。
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