10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ

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29.私、結婚します!

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「お帰りなさい。冬馬さん」
 扉を開くなり、冬馬さんが嬉しそうに私に抱きつこうとしてやめたのが分かった。私は彼の手を引き、自分から抱きつく。するとゆっくりと彼が抱きしめ返して来た。

 冬馬さんはあえて私へのスキンシップを減らしている。それ故に触れたい時は私から触っていくしかない。

「実は今日良いことがあった」
頭の上から彼の弾むような声がした。

「ふふっ、見てたら分かります。冬馬さん、結構顔に思っていることが出やすいですね」

 私をゆっくりと横抱きにし、冬馬さんはソファーまで連れて行った。自分で歩けるのでお姫様抱っこの移動は必要ないが、彼が高ぶる気持ちのままにした事なので特に指摘はしない。彼から触れてくるのが貴重になっている今では嬉しいくらいだ。

「今度、社長に就任することになったんだ」
「おめでとうございます。ますます忙しくなりそうですね。私にできる事はありますか?」
 冬馬さんは多分とても忙しい人だ。私が眠りについた後も、書斎で仕事をしていたりする。私との時間を大切にしようと帰宅を早くしてくれているのは分かっていた。彼はきっと私を弄んでいる訳ではなくて、本当に私を愛してくれているのが伝わってくる。

 冬馬さんがカバンから紙を取り出した。テーブルの上にのせた紙は婚姻届だ。冬馬さんの欄と証人の欄に冬馬さんのお父様の名前が署名してある。
 
「ここに署名してくれる?」
 私の表情を伺うように指し示されたのは、彼の隣の空欄。

「私と本当に結婚する気ですか? 冬馬さんのお父様は私と会ったこともないのに、結婚を許してくれたんですか?」

「未来の素敵さは伝わってるよ。君は人を変える力のある特別な女の子だ! また、幾らでも両親と会う機会はある。俺は今すぐにでも未来と結婚したい。絶対に幸せにするから、ここに署名して」
 冬馬さんがキラキラした瞳で私を見つめて来流。私は何の力もない上に自分でも面倒な性格をしていると思う。でも、彼が特別だと言ってくれるなら、彼の特別になりたい。

 私は婚姻届を記入しながら、初めて冬馬の年齢と出生地を知った。
「冬馬さん、27歳で、アメリカで生まれた方だったんですね?」
「そうだよ。7歳までニューヨークにいた。未来は、もっと俺に興味を持って!」
「年齢も生まれた場所も気にならないくらい、冬馬さんに興味持ってますよ」
 署名が終わると冬馬さんは私をぎゅっと抱きしめてきた。

「ありがとう。未来! 世界一幸せにするって約束する」
「今でも十分幸せですよ。冬馬さんのおかげです」
「俺も未来のおかげで幸せ。婚姻届は明日俺が出しておくね」
「⋯⋯お願いします」
 冬馬さんは忙しいだろうし私が区役所に出しに行くと言おうとしたが、明日は高卒認定試験であることを思い出した。

 そして、冬馬さんは一つ空いた証人欄をきっと母親に頼みに行くのだろう。
(「お母さん、私、結婚するよ。家族ができるよ」)
 心の中で私は母、桜田美亜に結婚報告した。
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