29 / 31
29.私、結婚します!
しおりを挟む
「お帰りなさい。冬馬さん」
扉を開くなり、冬馬さんが嬉しそうに私に抱きつこうとしてやめたのが分かった。私は彼の手を引き、自分から抱きつく。するとゆっくりと彼が抱きしめ返して来た。
冬馬さんはあえて私へのスキンシップを減らしている。それ故に触れたい時は私から触っていくしかない。
「実は今日良いことがあった」
頭の上から彼の弾むような声がした。
「ふふっ、見てたら分かります。冬馬さん、結構顔に思っていることが出やすいですね」
私をゆっくりと横抱きにし、冬馬さんはソファーまで連れて行った。自分で歩けるのでお姫様抱っこの移動は必要ないが、彼が高ぶる気持ちのままにした事なので特に指摘はしない。彼から触れてくるのが貴重になっている今では嬉しいくらいだ。
「今度、社長に就任することになったんだ」
「おめでとうございます。ますます忙しくなりそうですね。私にできる事はありますか?」
冬馬さんは多分とても忙しい人だ。私が眠りについた後も、書斎で仕事をしていたりする。私との時間を大切にしようと帰宅を早くしてくれているのは分かっていた。彼はきっと私を弄んでいる訳ではなくて、本当に私を愛してくれているのが伝わってくる。
冬馬さんがカバンから紙を取り出した。テーブルの上にのせた紙は婚姻届だ。冬馬さんの欄と証人の欄に冬馬さんのお父様の名前が署名してある。
「ここに署名してくれる?」
私の表情を伺うように指し示されたのは、彼の隣の空欄。
「私と本当に結婚する気ですか? 冬馬さんのお父様は私と会ったこともないのに、結婚を許してくれたんですか?」
「未来の素敵さは伝わってるよ。君は人を変える力のある特別な女の子だ! また、幾らでも両親と会う機会はある。俺は今すぐにでも未来と結婚したい。絶対に幸せにするから、ここに署名して」
冬馬さんがキラキラした瞳で私を見つめて来流。私は何の力もない上に自分でも面倒な性格をしていると思う。でも、彼が特別だと言ってくれるなら、彼の特別になりたい。
私は婚姻届を記入しながら、初めて冬馬の年齢と出生地を知った。
「冬馬さん、27歳で、アメリカで生まれた方だったんですね?」
「そうだよ。7歳までニューヨークにいた。未来は、もっと俺に興味を持って!」
「年齢も生まれた場所も気にならないくらい、冬馬さんに興味持ってますよ」
署名が終わると冬馬さんは私をぎゅっと抱きしめてきた。
「ありがとう。未来! 世界一幸せにするって約束する」
「今でも十分幸せですよ。冬馬さんのおかげです」
「俺も未来のおかげで幸せ。婚姻届は明日俺が出しておくね」
「⋯⋯お願いします」
冬馬さんは忙しいだろうし私が区役所に出しに行くと言おうとしたが、明日は高卒認定試験であることを思い出した。
そして、冬馬さんは一つ空いた証人欄をきっと母親に頼みに行くのだろう。
(「お母さん、私、結婚するよ。家族ができるよ」)
心の中で私は母、桜田美亜に結婚報告した。
扉を開くなり、冬馬さんが嬉しそうに私に抱きつこうとしてやめたのが分かった。私は彼の手を引き、自分から抱きつく。するとゆっくりと彼が抱きしめ返して来た。
冬馬さんはあえて私へのスキンシップを減らしている。それ故に触れたい時は私から触っていくしかない。
「実は今日良いことがあった」
頭の上から彼の弾むような声がした。
「ふふっ、見てたら分かります。冬馬さん、結構顔に思っていることが出やすいですね」
私をゆっくりと横抱きにし、冬馬さんはソファーまで連れて行った。自分で歩けるのでお姫様抱っこの移動は必要ないが、彼が高ぶる気持ちのままにした事なので特に指摘はしない。彼から触れてくるのが貴重になっている今では嬉しいくらいだ。
「今度、社長に就任することになったんだ」
「おめでとうございます。ますます忙しくなりそうですね。私にできる事はありますか?」
冬馬さんは多分とても忙しい人だ。私が眠りについた後も、書斎で仕事をしていたりする。私との時間を大切にしようと帰宅を早くしてくれているのは分かっていた。彼はきっと私を弄んでいる訳ではなくて、本当に私を愛してくれているのが伝わってくる。
冬馬さんがカバンから紙を取り出した。テーブルの上にのせた紙は婚姻届だ。冬馬さんの欄と証人の欄に冬馬さんのお父様の名前が署名してある。
「ここに署名してくれる?」
私の表情を伺うように指し示されたのは、彼の隣の空欄。
「私と本当に結婚する気ですか? 冬馬さんのお父様は私と会ったこともないのに、結婚を許してくれたんですか?」
「未来の素敵さは伝わってるよ。君は人を変える力のある特別な女の子だ! また、幾らでも両親と会う機会はある。俺は今すぐにでも未来と結婚したい。絶対に幸せにするから、ここに署名して」
冬馬さんがキラキラした瞳で私を見つめて来流。私は何の力もない上に自分でも面倒な性格をしていると思う。でも、彼が特別だと言ってくれるなら、彼の特別になりたい。
私は婚姻届を記入しながら、初めて冬馬の年齢と出生地を知った。
「冬馬さん、27歳で、アメリカで生まれた方だったんですね?」
「そうだよ。7歳までニューヨークにいた。未来は、もっと俺に興味を持って!」
「年齢も生まれた場所も気にならないくらい、冬馬さんに興味持ってますよ」
署名が終わると冬馬さんは私をぎゅっと抱きしめてきた。
「ありがとう。未来! 世界一幸せにするって約束する」
「今でも十分幸せですよ。冬馬さんのおかげです」
「俺も未来のおかげで幸せ。婚姻届は明日俺が出しておくね」
「⋯⋯お願いします」
冬馬さんは忙しいだろうし私が区役所に出しに行くと言おうとしたが、明日は高卒認定試験であることを思い出した。
そして、冬馬さんは一つ空いた証人欄をきっと母親に頼みに行くのだろう。
(「お母さん、私、結婚するよ。家族ができるよ」)
心の中で私は母、桜田美亜に結婚報告した。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました
ほーみ
恋愛
春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。
制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。
「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」
送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。
――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
久我くん、聞いてないんですけど?!
桜井 恵里菜
恋愛
愛のないお見合い結婚
相手はキモいがお金のため
私の人生こんなもの
そう思っていたのに…
久我くん!
あなたはどうして
こんなにも私を惑わせるの?
━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━
父の会社の為に、お見合い結婚を決めた私。
同じ頃、職場で
新入社員の担当指導者を命じられる。
4歳も年下の男の子。
恋愛対象になんて、なる訳ない。
なのに…?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる