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第137話 村のエルフ達
しおりを挟む平凡なエルフの村である。
エルフ達は懸命に畑を耕すが、野菜の育ちが悪くて、皆飢えている。
大昔のご先祖様は魔力が神のようなハイエルフという種族のエルフがいて、魔力であっという間に植物を成長させたと、言い伝えがあるが、今はもういない。
ハイエルフ達は皆眠りについたとされる。
「え、さ、ほい、さぁー」
平凡エルフ達は、今日も皆で土を耕す。
「おおーい!」
エルフのライリームが走ってやってくる。
「なんだけ?こんの忙しい時に」
畑を耕していたエルフのリュートは不機嫌そうに、畑の土を耕すのをやめて、首にあるタオルで汗をぬぐう。
「美人さんがこの村にやってきたそうやけ。見に行こうぜ」
(訳)美人さんがこの村にやってきたそうだ。見に行こうぜ!
にっかり笑うライリーム。
エルフたちは一様に、眉を寄せる。
そもそもエルフ達のなかに、美しい者なんていない。昔エルフは美しかったそうだが、魔女に呪われて、不細工になってしまったとう伝承があるくらいだ。
期待をせずにエルフ達は畑仕事を休憩し、その美人を見に行く。
そこには絶世の美しい人間の男が、なぜかエルフの赤ん坊にお乳をやっていた。
いや、人間の男がなぜ?
見ると確かに美しい人間の胸からは、白いミルクが流れ落ちている。
もしかしてエルフ族とは違い、人間の男は乳を出すのが普通なのかと、なんとなくエルフは皆納得する。
エルフにとって、人間は警戒しなければならない存在なのに、皆呆気に取られて、ただただその光景をみていた。
エルフの赤ん坊たちが次々呼ばれて、その美しい人間のお乳に吸い付いていく。
いや、エルフの母親父親も、最初こそはその人間を警戒していたが、皆餓死寸前だったのと、そばに次期村長のゼノムがいたので、仕方なく従った感じだ。
栄養失調で顔色が悪かったはずの赤ん坊も、その人間の乳を吸ったせいか、元気に「おぎゃおぎゃ」泣き始める。
エルフの母親は泣いて喜ぶ。
スケベ心なのかなんなのかガリガリにやせ衰えた大人のエルフの男も、そのお乳の人間の列に並んでいる。
ひきつった顔の人間は、顔を赤くしながらも、その大人エルフにお乳をあげている。
大人エルフ達から、どよめきと歓声があがる。
母親エルフ達の視線は冷たかったが、ライリーム達エルフも並ぶ。
栄養不足なのか病気で咳をしている男エルフに、その美しい人間は手のひらから、白い花を一つだしていった。
「この花を食べると、体調がよくなるかもしれません。お乳を飲む前に試してください」
人間は白い花を配っていく。
その白い花はまるで病をいやす、太古のエルフの森の花のように、病気のエルフを癒していった。
この人間は神かもしれないと、エルフ達の中で盛り上がることになった。
ライリーム達は、アルのファンクラブをつくろうとはりきる。
エルフの里には、娯楽とかアイドルというものがなかったので、美しいアルという存在は強烈だ。皆が熱心にアルのことを見る。
そのもう一方では人間のアルを、快く思わないエルフの集団が、冷たい視線を送っていた。
「あいつ人間のくせに、なに俺たちのエルフの村に来てるんだよ?」
口々に人間に対して不平不満を言うエルフ達。
そのなかのエルフのクロイツたちは、人間のアルの側にエルフのジルの姿に気づく。
「なぁ、あいつ、不細工のジルじゃね?」
「ん?本当だ!」
「あの不細工また帰ってきたのかよ!」
にやりと、クロイツたちエルフは嫌な笑みを浮かべた。
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