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~召喚編~
魔導師ミレーナ
しおりを挟む草木が揺れる音、かすかな風の匂いが鼻をくすぐり、暖かな陽射しが身体全体を包み込む。
俺は、そこで目覚めた。
「...どこだ?..ここ...」
全く知らない場所で目が醒めるのは、本日2度め。
いい加減慣れた俺は、まずは落ち着いて周りの状況を確認する。
麗らかな陽射しが降り注ぐ草原、青々と生い茂る芝生、それがどこまでも広がっている。それ以外何もない、本当に何もない、只の草原。そこは...
「...夢...?」
そこは、俺が見た夢の中の草原と酷似、いや、瓜二つだった。
『やっと目が覚めたみたいだね』
「!!!??!」
ゴブリンとの戦いで俺に語りかけてきた声が、再び耳に届いた。
いや、耳に届いたと言うと少し語弊がある。
どちらかと言えば、頭の中に直接声が響く感じ、言うなればテレビでよく見るテレパシーに近い感じだ。
そして脳内に響いた声は、かなり幼い少女を思わせるような声だった。
「...ここは、ここはどこなんだ?夢?」
『うーん...夢とはちょっと違うかな。ここは君の心の中を具現化した世界。ここは君自身の心の中だよ』
「.....」
『...分かって無いみたいだね』
「全く...」
『...まあいいや、今はそんな事あんまり重要じゃ無いしね』
そんなことはどうでもいい、と言うように少女は話を続けていく。
『君、大分無茶なことしたね』
「...存じております」
『私が君を見つけるのがあと少し遅かったらどうなってたことか...』
「...見つける?」
少女の発したその言葉が、俺の思考の片隅に引っかかった。
「見つけるっていうのはどういう意味なんだ?」
『そのままの意味だよ。私は君を探してたの。君がこの世界に来たのを感じてから』
「俺が、この世界に来てから?」
『そそ、そういうこと』
出来の悪い生徒が問題に正解した時の教師のように、少女は嬉しそうに答える。しかし、彼女の言葉は俺にとってそれ以上の意味を持っていた。
この世界に来てから?
その問いに対し彼女はさも当たり前のように答えた。
まるで俺が来ることが分かっていたように。
「俺が来ることが分かっていたのか?」
『もちろん。予言もされていたしね』
「予言?その予言っていうのはなんなんだ?」
『あっ、そっか。君は知らないんだよね』
そう言って彼女は予言について話し始めた。
昔あるところに1人の魔導師がいたらしい。
その魔導師は、魔法学者で、数々の魔法を生み出す大賢者でもあった。
そんなある日、この世界に強大な力を持つ魔物が姿を現した。
王国軍ですら歯が立たず、彼は自分たちの力では太刀打ちできないと悟った。
そこで、彼は違う世界からやって来た魔物に対抗するため、奴がやって来た世界の戦士たちを呼び込むことにした。
何年もの時を経て、彼はある魔法を開発し、魔物を封印する事に成功した。
それが、異世界から戦士たちを召喚する召喚魔法だった。
その時やって来た戦士の1人が言った。
「これから何年、何千年も先に、この魔法はもう1度発動され、我らの仲間がこの世界にやって来るだろう」と。
『それでね?君をこの世界に召喚する魔法がついこの間行われたって訳』
「ふーん。でも、なんでそんなこと知ってるんだ?だってあんた、多分人間じゃないだろ」
俺の持っている疑問のひとつはそこだ。
ゴブリンとの戦闘中の会話、そして今の会話の流れからして、彼女が人ならざる者である事は、俺の中ではほぼ確定的となっていた。
だとすれば、どうして人間のしている事をこんなにも詳しく知っているのか。
『鋭いね』
この問いにも彼女は嬉しそうに答える。
『その召喚魔法はとても強力。時空を歪めるほどだからね。当然人間の力だけじゃ完成しない。そこで彼は私たちに助けを求めたの。それで私たちは力を貸した。私たちもその魔法陣を管理する権限を持つという条件でね。だから、何時、誰が、どこで魔法陣を起動させたかも解るってわけ』
「なるほどね」
彼女が何者かは全く分からないが、彼女がその情報を知っている理由は納得のいくものだった。
「で、君は一体何者なんだ?」
『それはまだ言えないの。いまはまだ』
それについてはバラせないらしい。先方の事情、と言うやつだろうか。
『ちなみに君も、儀式を着実にクリアしていってるよ?』
これまた嬉しそうに、彼女は俺に報告する。儀式?それよりも、そんな事を本人に言っていいのだろうか。
『あっ...』
どうやらまずかったらしい。
『お願い!今のは聞かなかったことに』
「いいのかよ、それで」
『お願いします...』
「...まぁ、いいけど」
『やった!セーフ』
ずいぶんといい加減なやつだ。
それでいいのか?とツッコミつつも、そこまで頼み込まれると断れない。
なので、取り敢えず聞かなかったことにしてやった。
「で、儀式ってのはなに?」
『あー...えーと...えへへへ...』
今度は笑って誤魔化された。
「...言えないのか?」
『うん、今はまだその時じゃないから』
「その時?」
『それもそのうちわかるよ。さぁ、そろそろ戻らないと、彼女が待ってるよ』
「彼女?」
ーー樹...お願い...早く目を覚まして...ーー
「!!!?!」
頭の中に、大切な親友の声がかすかに響き、その声が俺を現実に引き戻した。
「...分かった。じゃあ、俺は戻るよ」
彼女のことについては、俺はまだ何も解っていない。
正直に言えば、もっと話がしたいし情報も抜き出したかった。
だが、必死に俺を呼ぶ親友を放ったらかしにしておける程、俺は腐ってはいない。
『うん、私とはそのうちまた会えるから、その時ね?あと忘れないで、私は何時でもイツキの味方だから』
「...!??」
何故自分の名前を?そう聞こうとした所で、世界が揺らいだ。
俺は荒れ狂うエネルギーの渦に巻き込まれ、この世界から押し出された。
そこで、俺の意識は再び途絶えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「...うっ...はぁ...はぁ」
若干の息苦しさの中で俺は目覚まし、目に飛び込んで来た周りの光景に首を傾げる。
「天井?...」
知らない家の知らない天井、知らない部屋のベッドに、俺は寝かされていた。
「.....」
どういう状況なのかさっぱり分からないが、取り敢えず起き上がる。
「ん!?」
そこで、自身の身体に起こっていた変化に気づいた。
傷の痛みが全くない。
手で服を探ってみれば、俺の身体には包帯が丁寧に巻かれていた。
包帯が巻かれていてよく解らないが、痛みがないところを見ると、傷も塞がっているようだ。
誰かが手当をしてくれたのだろうか。それならば、ベッドで寝かされているのも頷ける。素人目だが、これなら今すぐ死ぬという事はまずないだろう。
「...スゥ...スゥ...スゥ...」
そしてベッドの側には、俺の腹に頭を乗せるようにして、椅子に座った薫が静かに寝息を立てていた。息苦しかったのはこのせいか。
薫が無事
その事が確認できたことで、取り敢えず俺は安堵する。
あれからどうなったのかさっぱりわからない。
だが、恐らく薫が怪我を負って瀕死の状態だった俺を無事保護してくれる人を探し当てたのだろう。
そしてずっと俺を看病してくれていた。
「また借りができちゃったな...」
薫が目を覚ましたらしっかりとお礼を言おう。そう思いながら、俺は改めて部屋の中を見渡した。
種類も少なく質素だが、家具が機能性抜群の位置に設置されており、とても使いやすそうだ。部屋の間取りも悪くなく、設計者のセンスが優れているのが良くわかる。
取り敢えず薫を起こさないようにベッドから出た俺は、部屋の中を歩き回る。
ふと、部屋の壁に立てかけてある杖が目に入った。
手に取らず、近くに寄って眺めてみる。
大きさは1m位。磨き上げられた一本の木を削り取って造られたものだろう。
だが、歩行補助として使うにはいささか不便だ。
「...情報が足りない」
自分の置かれた状況を把握するため、俺は家の出入り口と思われる場所へと歩きだした。
「うぉ...」
外に出てすぐに現れた光景に、俺は言葉を失った。
どこまでも続く山と草原と森。今ではどこの国にも必ずあると言ってもよいビルなども1つも見当たらない。
そして空に浮かぶ月の色は、黄色ではなく、紅かった...
現代とは大きくかけ離れた風景。それが目の前に広がっていた。
「紅い...月...」
「目が覚めたか?」
「!!??!」
突如、俺の真後ろから全く聞き覚えのない声が響く。
驚き振り返ると、俺の後ろにはいつの間にか見知らぬ女性が立っていた。
歳は、20代後半だろうか。身長は170cm程で肩までかかる赤色の混じった黒髪。そしてゲームで出てくる魔法使いのような服を着ている。
その女性は、自分の姿を見て呆然としている俺に向かって笑いかけている。
「あの月は紅月と言ってな、この時期にだけ見られる珍しい月だ」
「っっ!?」
そしていつの間にか、彼女は俺の真横に立ち一緒に月を眺めていた。
ちょっと待て、今どうやって移動した?
俺は一度たりとも彼女から目を離さなかった。なのに、いつの間にか彼女は俺の真横にいた。
まるで俺の意識を一瞬だけ止めたように。
「気になるか?」
まるで俺の心を読んだかのように、彼女はイタズラが成功した子供のようにニヤリと笑い、俺の顔を覗き込んだ。
「まぁ、イツキが知らんのも無理はない。お前たちは知らない移動方法だからな」
俺が知らない移動方法...ん?
「なぁ...あんた、誰なんだ?なんで俺の名前を?」
彼女から一瞬感じた違和感はそれだった。
なぜ彼女は俺の名前を知っていて、俺が知らない移動方法だと解っていたのだろう。まるで、俺の住んでいた世界について知っているような口ぶりだ。
「私はミレーナ。お前が寝ていた家の主だ」
「あ...ああ、そういうことか」
ようやく合点がいった。
確かにあの家の持ち主ならば、ここにいて当然だろう。
解らないことだらけだが、まず真っ先に言わなければいけないことがある。
「それじゃあ、あんた...いや、貴方が俺たちを助けてくれたんですよね?薫を拾ってくれてありがとうございます」
「......プッ...ふふふ...」
「??」
「いやぁ...お前たち二人とも仲がいいんだな...ふふ...」
突然、ミレーナが笑い出す。全く理由がわからず、俺はその場で固まる。
「あっ、あの~...」
「ふふふ...すまんすまん、突然笑ってしまって。でも、カオルもお前とほとんど同じことを言っていたぞ?「自分はどうなってもいい。なんだってするから、お願い!イツキを助けて!」って。あれだけ必死に言われたら、断ることもできまい」
「.........」
つまり、自分は薫の熱意にに助けられたということだ。守る守ると言いながら、結局守る相手に助けられている。
なんとも情けない話だ。
そこまでして自分を助けてくれた薫には、どう感謝の意を示せばいいのかわからない。
「ありがとう...」
独り言のように響いたその言葉は、もちろん俺の口から発せられたものだった。
そしてその言葉は、もちろんミレーナの耳にも届いていた。
「それは私にじゃなくて、直接本人に言ってみたらどうだ?」
「?」
そう言われて後ろを振り返ると、そこにはさっきまで俺の寝ていたベッドにもたれかかり、うたた寝をしていたはずの薫が、いつの間にか俯いて立っていた。
「薫...」
そしてそのまま、黙ってこちらに近づいて来る。
薫は、顔を頑なに地面を向いたままこちらを向こうとしない。
その表情を伺うことはできないため、突然の行動に俺は戸惑う。
「バカッ!!」
「!!?」
第一声はそれだった。
俺の側まで来た後、薫は俺に抱きつきそう言い放った。
安堵、喜び、悲しみ、そして怒り...
顔を上げた薫の目には激情の炎が渦巻いていた。
「バカぁ...」
まるで、俺がそこにいるのを確かめているように、もう離さないと言っているように、抱きしめる腕に力を込める。
俺とてそこまで鈍い男ではない。
薫がなぜ怒っているのかは、容易に想像出来た。
おそらく、いや俺も薫の立場であれば確実に激怒しているだろう。
自分を囮にして薫を逃がそうとしたこと、生きることを諦めてしまったことに薫は怒って、そして悲しんでいるのだ。
例え、あの時全て俺の思惑通りに事が進んだとして、生き残れたのは薫ひとりだ。その後澪が味わう悲しみ、後悔、怒り、不安は計り知れない。
俺の行動は、その後に残された薫のことをちっとも考えてなかったことに気がついた。
「樹は考えてたの?もしあの後私だけが生き残ったらどうなってたか」
「.........」
「私を、この世界にひとりぼっちで放り出すことになるんだよ?なんで...なんであんな事したの!?なんで樹だけが死ななくちゃならないの!?なんで他の方法を探さなかったの!?なんで...なんで...」
後から後から溢れ出る涙を拭う事もせず、薫は俺を見つめたまま感情を爆発させる。
確かに、あの時の俺の行動は決して誇れるようなものではない。
だが、今思ってもあの時の行動は決して間違いではなく、むしろ最善の選択であったと俺は思っている。
誰に何を言われようとも、その考えを変えるつもりはない。
しかし、薫が言いたいのはそんな事ではないのだろう。
理屈じゃなく、効率じゃなく、大切な友達の気持ちを無視して勝手な行動をとり、命を落としかけた事に、相手がどんなに傷つくかを考えなかったことに怒っているのだ。
「....ごめん」
俺はたった一言、自分にしがみつき涙を流す親友に、その言葉だけを口にする。
他のどんなに小綺麗な言葉で着飾ったところで、それが本当の謝罪になるとは思えないし、それでは俺の気持ちが伝わるとは思えなかった。
「......交換条件...」
長い沈黙の後、澪がそう呟いた。
「許してあげる。その代わりに私のお願いをひとつ聴いて。それでチャラ」
そして顔を上げ、俺を見つめる。
「私よりも先に死なないこと。これ、決定事項だから」
自分が死ぬ前に死なないこと。何があっても生き残れるように強くなれという薫の願い。
俺だって好き好んで死に急ぐような趣味はないし、父さんからも『何があっても生きて帰る。そのために何でもする』という事を叩き込まれてきた。今更断る理由なんてない。
「...解った」
だから俺は、その要求を飲むことにした。
しかし、その為には強くならなくてはならない。
俺たちはこの世界について何も知らない。必然的に生きるには相当の強さと知識を身につけなくてはいけないだろう。
だが、俺の仮説が正しければ強くなるための1番の近道が目の前にいる。それに、俺の答えはもう決まっていた。
「ミレーナさん」
「ん?」
「俺に魔法を、戦う術を教えてください」
俺はミレーナと向き合い、頭を下げた。
ミレーナの下で力をつける。これが、澪を守るために出した答えだった。
「...なぜ私が魔導師だと思ったんだ?そもそも魔法なんてあると思っているのか?」
「俺が寝ている部屋の壁に杖が立てかけてあった。でもミレーナさんは足が悪い様子がまったくない。それに俺自身が魔法を見ちゃったんで、予想することは容易だと思いますが?」
意地悪く笑うミレーナに俺はそう答えた。
おぼろげながらだが、俺はゴブリンを倒すために魔法を使ったことを覚えている。
今まで感じたことのない感覚。あれが魔法なのだと、俺は使った瞬間理解した。
あれを見て、まだ魔法がないと思えるほど俺の頭は固くはない。
そして、ミレーナの部屋の壁には明らかに歩行補助の役割を果たすのが目的とは思えない杖が立てかけてあった。
今までの経験から、それが魔法の杖だという考えに至るのは至極当然だろう。
「ふふふ...なるほど、鋭いな」
それを聞いたミレーナは、俺の方を見て不敵に笑う。
だが次の瞬間、ミレーナの顔に浮かんでいたその笑みは消え失せていた。
「だがなイツキ。これから魔法を覚えたとして、またお前が味わったような苦しみ、恐怖を味わうことになる可能性はかなり高い。いや、確実に味わうことになるだろう。お前はそれでいいのか?耐えることが出来るのか?」
どこまでも続くかと思われる深い漆黒の闇、全く考えていることを読むことができない目で、ミレーナは俺に問いかける。
そしてその問いに、俺の身体に寒気が走った。
あの時、必死にゴブリンと戦い重傷を負った時、俺は本気で死ぬ覚悟をした。
あんな痛みをこれから何度も味わわなくてはいけないのか、あの恐怖を味わい続けなくてはいけないのか。
...いや、俺が恐れているのはそんなことじゃないんだ。
「そんなこと関係ありません」
「ほう?」
流石に予想していなかったのか、ミレーナが意表を突かれた顔をする。
「俺はあの時の痛み、苦しみを味わうのが嫌なんじゃない。薫にその苦しみを味わわせるのが嫌なんだ!」
俺は思うままの感情を、一切隠さずに吐き出す。
俺が本当に恐れているのは自分が苦しみを味わうことではない。
あの痛み、苦しみ、恐怖を薫に味わわせてしまうことなのだ。
だからこそ、俺は強くならなくてはいけない。
「薫にあんな思いをさせたくない。あんな苦しみを味わわせたくない。だからお願いします。俺に魔法を、魔法を教えてください!」
「.....」
俺は胸の内に秘めていたものを全て吐き出した。
だが俺の心の叫びはどこまでミレーナに届いているのだろうか。ミレーナから感じられる雰囲気が変わったわけではなかった。
数分、いやほんの数秒ほどであったかもしれない沈黙があたりを支配する。
俺の感覚では永遠に思えた時間の後、不意にミレーナの雰囲気が温かいものに変わった。
「お前の覚悟はしかと受け止めた。お前が本当に覚悟を持って言っているのか試したかっただけだ。悪かったな。それじゃあー...」
「私もお願いします」
「薫!?」
突然響いた声。横を見ると、なぜか薫までミレーナに頭を下げていた。
「お前...なんで?」
「樹が全部背負う必要なんてない。私はただ守られるだけじゃ嫌なの。だから私も、樹を守る。それに、樹のことだもん、1人じゃ絶対に無茶するでしょ?だから、無茶した時のブレーキ役がいないと」
「でもお前...」
これから先、さっきのような戦闘も起こるだろう。そんな状況を澪が耐えられるとは思えなかった。
「私なら大丈夫。それに、もう決めたことだから」
薫の瞳は決意に満ち溢れていた。こんな表情をした時の薫は、俺の経験上何があっても自分の意志を変えることはない。
もう止めるだけ無駄だ。それにたとえ何かあったとしても、俺が薫を守ればいいだけだしな。
「で、お前たちの答えは何だ?」
俺たちの口から直接答えを聞くつもりなのだろう。ミレーナはただ、それだけを聞いてきた。
「「お願いします。俺(私)たちに、魔法を教えてください」」
だから俺たちも、俺たちの答えを、覚悟をミレーナにぶつけた。
それを聞いて、ミレーナは満足気にうなづいた。
「2人ともよく言った。いいだろう。お前たちを正式に私の弟子として認める。覚悟してついて来い」
「「はい!」」
異世界に飛ばされてすぐのゴブリンとの対戦。
そのあと出会ったミレーナという魔導師の元への弟子入り。
あの時の俺たちは、ありえないほどの幸運に恵まれていた。
だがそれを俺たちが知るのは、もう少しあとの話である。
異世界ファンタジア、序章~召喚編~「起」完
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