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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。
第60話 キースとの対話。
しおりを挟む「……フリスか? 確かにあいつならやりそうだ」
名前を出すだけでも、あのギョロっとした目の顔を思い出してしまう。うげぇ。
コンコンッ!
さっきの隊長が、森の中を捜索したが手掛かりは見つけられなかったと、報告に来た。
「出発してもよろしいでしょうか?」
「しばし待て」
「はっ!」
隊長を待たせて、キースが俺に向き直った。
「ユウト殿。貴殿には聞きたい事もあるし、……どうだろう公都到着まで護衛名目で同道願えないだろうか? もちろん警戒は我らが行うので、お連れの方々もここに招くということで」
「どうせあなた方に会わなければ、あなたの国まで行くつもりでしたし、ご一緒しますよ」
「彼のお連れの方々をこちらに案内してから出してくれ。この騒動で今日中の公都到着は難しくなったな」
大公と隊長は、どこどこの男爵領を目的地とする事とか、男爵や公都に早馬を走らせる事とか決めていた。
隊長が直々にミケ達をエスコートして来てくれて、キースの客車はほぼ定員に達した。
「……」
3人掛けのシートの真ん中に俺、ミケとアニカが両脇に座り、アニタが俺の膝に座るという見事に偏った座り方になった。
まぁ、誰も見ず知らずの一国の支配者の隣なんて、座りたいと思わないよな。
キースも決して広くない空間で、4人の視線にさらされて戸惑っているだろう。
まぁ、アニカだけは座ったとたんにギルドでもらった規則冊子に目を通しているが。
「アンニタよ、そこは本来我の席じゃと肝に銘じておくのじゃぞ? 今回だけじゃぞ?」
「は~い」
ミケは、出来るだけこちらの世界の人間に白狐姿を見せないように約束していたので、渋々俺の隣に落ち着いたのだった。
「アンニタちゃんは何歳になったんだい?」
「なな! ……なななんと、じゅうにさい!」
「…………」
よく止まったな。だが、手は3と4である。
「ふっ!」
静まり返った後、キースが吹き出した。
「それにしても、昨日のユウト殿は傑作だった」
「バカユートじゃ」「――です」「――だよ~」
「えっ?」
3人に同時に突っ込まれて、キースが戸惑っているので説明するしかない。
昨日の俺の言動はキースの知ってる通り。加えてミケ達が王城崩壊事件、フリス失禁事件の当事者である事。
おそらくエンデランス中に手配が回るだろうから、昨日の内に逃亡開始し、今日偽名と年齢詐称の上で冒険者登録を済ませたことを、かいつまんで説明した。
「はははははは! フリスの奴、失禁したのか! これは更に傑作だ! 御三方も良くやってくれたと言わせてもらおう。ははははは!」
「今更だけど、俺はユウトで、ミケ、アニカ・アニタの姉妹です。俺の事もみんなも殿とか要りませんから気軽に呼んで下さい」
「そうか、それでアニタちゃんは本当は何歳?」
「じゅうにさい!」
「そうか、7歳か」
「なんでわかったの~?」
「なんでだろうね~」
手です。
俺とキースが話をしている間は暇だろうから、ミケがアニタに買わせたお菓子を食べててもらうか。
まさか地球のお菓子を広げるワケにもいかないだろうし。
「それはそうと! ゴーシュからの言伝は受け取ったんだが、なにぶん簡潔な要点のみだから……、どういう事かな?」
そう言ってキースが小さな紙切れを渡してきた。
『青年ユウト バハムート様と関連あり 一度会う価値あり』
「ああ、これについては――」
バハムートの魂うんぬん、魔王がうんぬん、ゴーシュに話した内容をそのままなぞるように話した。
ガンダーの槌だのはこの客車が壊れるので出さないが、倒した事は伝えた。
そして、バハムートの息子アムートや妻ミーナの事……
「――いつになるかは解らないが、バハムートの息子のアムートを必ず探すって約束したんだ。そうしたらゴーシュが、いつかあなたと会って話をすべきだと言ったんです」
「そ、そうか……。にわかには信じられないな」
「ですよね。で、これが俺の本当のステータスです」
名前 : ユウト ババ
種族 : 人族
年齢 : 24
レベル: 77
称号 : 世界を渡りし者 英雄
系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商
スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐
B・探知〈6〉
「な! レベル77! バハムート様に匹敵するじゃないか!」
「そんなに?」
「ああ、私も君に見せよう」
名前 : キース・フォン・マッカラン
種族 : ヒト族
年齢 : 61
レベル: 68
称号 : 善なる統治者
系統 : 武〈剣〉 政 魔〈水〉
スキル: A・教導〈4〉 B・強壮〈7〉 C・剣技〈10〉 C・水属性魔法〈5〉
ミケ達の方もレベルはキースより上だなんて言えない……。経験や技量はキースには敵わないだろうがな。
ゴーシュにもそうだったが、キースにもニア――ディスティリーニア――の事は伝えていない。
神という存在が実在するこの世界で、俺がニアという分身体とであっても神と関係があると知られれば、宗教国家ディステを始め多くの国に影響が出かねないからな。
「俺は、この世界に入った時にバハムートと対面し、会話もしました」
「ほ、本当か!? どんなお姿だった?」
「20歳位に見えたなぁ。白銀の綺麗な鎧を身に着けていましたね」
「ああ、お亡くなりになった頃のお姿か……」
キースは顔を上に向けて感慨にふけっているようだ。涙が一筋流れている。
「どのような話をした? 差し支えのない範囲で構わない、教えてはくれないか?」
「まぁ最初に、死んだ時に味方陣営から邪魔が入ったから、人間の方が魔人族より狡猾で悪だくみする奴もいるから気をつけろ。だったかな」
「フリスだな。……忘れもしない、ユディン! フリスが送り込んだ男だ。貴族社会はやれ面子がどうだ、体裁がどうだとうるさいからな。王族とて同じで、無下にできなかった」
「今となってはどうでもいいとも言っていたよ。あとは、俺の身体にいて俺の世界を見て新鮮だったとか驚いたとか言っていたな」
「君の世界かぁ、私も興味があるな」
「そして、息子がいたことを聞いて、捜す約束をして、【聖剣技】と記憶をもらったという感じ――失礼! 途中から言葉遣いが悪くなってしまいました」
「いいよいいよ。別に君と私に上下の関係などないのだから。出来ればこれからは友として親交を結びたい。だから言葉遣いなど気にする必要は無いさ」
キースはそう言うと、今度は腕を組んで目を閉じて考え込んでいる。
トントン! トントン!
ミケが俺の肩を叩いてきた。
ミケに目やると、口をパンパンに膨らませて、目を見開いて必死に飲み物を飲むジェスチャーをしている。
一度に口に入れ過ぎて、口の中の水分を全部お菓子に持っていかれた様だ。必死にジェスチャーをしている。
「ふぐー! ふぐー!」
仕方ないから、買って来てもらった袋に水のペットボトルを隠して渡すと、一気に流しこんでいる。
「ふぐぉー! ふごー!」
今度は俺の膝に座っているアニタが、首を後ろに逸らして目を見開いて、必死に俺に向けて飲み物を飲むジェスチャーをしてきた。
アニタ! お前もか! ……アニカは? 大丈夫だな。
「実は、……アムート様は我が国で匿っている」
「……えっ!?」
「ふ? ――ふごー! ふぐぉー!」
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