【R18】まさか私が? 三人で! ~社内のイケメンが変態だった件について~ その3

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Case:天野 9

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 天野のSUVはスムーズに走り、気がつくと海が見える場所まで来ていた。隣の県に来た事は分かったけど、細かい場所までは理解出来なかった。分かったのは比較的高い場所であるという事だけだ。車の窓から暗くても海が見える。すっかり日は暮れたので夜の海だけど、側には有名なアミューズメントパークの煌々と電飾が輝いていた。

「うわぁ……凄い」
 日が暮れるのが比較的早いけれども、夜の営業はまだまだこれからだろう。遠巻きに見えているのだがパークに集う人の声が聞こえて来そうだ。そんな私の呟きを天野は運転しながら聞いていたが、言葉を返す事はなかった。

 返事がないので振り返り、横顔をそっと見る。天野は珍しく難しい顔をしていた。手入れした眉と眉の間に皺が寄っている。考え事をしているのだろう。それでも、整った精悍な顔は惚れ惚れするし、乱暴にならないハンドルさばきも安心出来た。

 運転の邪魔になったらいけないわよね。

 私は少し愁いを帯びた様な珍しい天野横顔を少しだけ見つめて直ぐに視線を窓の外に戻す。それから、キラキラと輝く夜景を目に焼き付けて心の中で感嘆の声を上げた。

 私は数十分後、天野がどうしてこんな顔をしていたのかを知る事になった。



 ◇◆◇

 天野が連れてきてくれたのは高台にある小さなホテルだった。最近出来たばかりで、建物の白い壁が夜でも輝いて見えた。天野にエスコートされながらホテルに入り、部屋へ案内して貰う。

「うわぁ!」
 部屋に入って私は声を上げてしまう。

 部屋に入ればふかふかのダブルベッドが目に入ってくる。とっても寝心地がよさそう。部屋自体は白い壁にシンプルにまとまった家具、そして──

「露天ジェットバス!」
 そう、海に向かってせり出したベランダには円形のジェットバスがついていた。私は嬉しくなって走り出し、ベランダに出てジェットバスの周りをぐるぐると一周して、背の高い木製の柵から顔を出す為精一杯背伸びをしてみる。見ると遠くにアミューズメントパークが煌々としていた。

 も、もしかしてこれは……!

「あと一時間後ぐらいにパークから上がる花火が見えますよ」
 子供の様にはしゃぐ私に、ベルパーソンが優しく声をかけてくれた。

「やっぱりそうなんですね! それは楽しみ」
 私は振り向いて笑う。そしてワクワクしながら再びつま先立ちで外をじっと見つめた。

 ベルパーソンは天野とやりとりをしてから荷物を置き挨拶をして部屋から去っていった。ドアがパタンと閉まる音を聞いて私は我に返った。

「ご、ごめん。天野に何もかも任せっきりで。あの凄く嬉しくて……素敵な場所に連れてきてくれてありが」
 ありがとう──そう言う為に振り返ったのに、突然天野にきつく抱きしめられる。

 背の高い天野に力一杯抱きしめられ、私は顎が上がる。喉が天野の肩口に触れて苦しい。両腕の上から抱きしめられると身動きすら取れない。ベランダに出る為に靴を脱いだので、更に背が低くなってしまい私はつま先立ちになる。天野が私の肩口にその精悍な顔を埋めて小さく呟いた。

「……だろ?」
「え? 何って言ったの?」
 こんなに密着しているのに天野の声は語尾しか聞こえない。しかも絞り出す声で酷く掠れている。私が聞き返すとぐるりと天地が逆になる。

「キャァ!」
 突然天野に抱き上げられたのだ。天野は勢いよく部屋に戻っていく。反動が大きくて驚いて天野の首にしがみついた。

 なになになに──どうしたの?

 ズンズンと勢いよく歩く天野。抱き上げられているけれども身体が上下に動くから舌を噛んでしまいそうで口を開く事が出来ない。

 ベランダから小さく光が落とされた部屋に戻るとふかふかのベッドに向かって私をボンと放り投げた。

「ぷっ」
 予想通りベッドはふかふかで程よいスプリングが効いていた。私の身体がバウンドしてベッドに沈んだ。

「ど、どうしたの」
 そう思ってベッドの足元にいた天野を見上げると、ダークグレーのジャケットを乱暴に脱ぎ、白いVネックのシャツを見せる。

 シャツはピッタリと身体にフィットしていて鍛えられた胸板が映えていた。ガチャガチャとベルトを外し、薄いグレーのスラックスのボタンを外していた。くせ毛風のパーマを当てた髪が少し乱れ、長めの前髪の隙間からギラギラとした瞳が見えた。私を抱く時の視線とは違っていて、とても怖いと感じる。

 その視線で私は天野が怒っている事を知る。

「あ、天野?」
 最低限光を落とした部屋のせいで、天野の彫りの深い顔が余計に強調された。顎から喉にかけてのラインは美しくて、怒っていると分かっていても見惚れて息を飲んでしまう。

 そういえば車を運転している間、何の会話もなかった。きっと運転に集中しているのだろうとばかり思っていたけど、もしかして何か天野を怒らせる事を言ったのかしら?

 私は、いつから会話が途切れたのか記憶をたぐり寄せる。考え事をする為に私は天野から視線を逸らす。するとそのタイミングで天野がベッドに膝をついた。ベッドが二人分の重みで沈み、天野は私の両太ももをまたいでのしかかる。更に片腕をつき、もう片方の手で私の顎を掴んで自分の方に向かせる。

「目を逸らすなよ。傷つくだろ」
 天野の日に焼けた顔が私の目の前まで来ていた。いつも自信に溢れている声なのに、この時は掠れて寂しそうだった。

「ご、ごめん。そんなつもりじゃなくて」
 意識的に逸らしたわけじゃない。ただ単にどの時点で天野が話さなくなったのか考えていただけだ。何とかして思い出そうと思考を巡らせている私の視線が、微妙に天野の瞳を見ながら揺れる。

 だから、天野を見ていながら見ていない感じになってしまい、天野が私の両手を自分の両手で握ると、強引に口づけてきた。

「っんうっ!」
 息を吸われ奪われる。強引に唇を奪う事は多いけど、天野は乱暴に重ねてくる事はない。

 私の舌と天野の舌が合わさると蹂躙するかの如く動く。バキュームキスになったせいで思った以上に酸素が足りなくて苦しいばかりになる。

 何で? どうして? でも、考えがまとまら……

 酸素が薄くなると思考が単調になってぼんやりしてくる。せっかく思い出そうとしているのに霞みがかってくる。苦しくて押さえつけられた腕を解こうと押し返す。その動きでようやく天野はキスから解放してくれた。

 私は肩で息をして、大量の酸素にありつく。私がキスで息継ぎが上手くいかなくなる事はあるけど、天野はいつも余裕なのに今日は違った。余裕がなく肩で何度も息をしていた。

 天野は、耐える様にぎゅっと目を閉じて首を小刻み左右に振った。髪の毛をバサバサと乱して何かを振り払おうとしている。
「クソッ! 忘れたいのに、どうして岡本の顔が浮かぶんだよ」
「え、岡本?」
 突然天野の言葉に乗った名前に私は反応してしまった。そういえば、陽菜さんと別れた直後私岡本の名前を口にしたっけ。

 私はその時の会話を思い出した。

『岡本もいた方がよかったかもね』
『……気になるか? 岡本の事』
『うん。ちょっとね。でも今更よね。ごめんなさい』
『……』

 うん? ちょっと待て。

 あの時はただ単に陽菜さんに三人で付き合っているという事実が言えなくて心苦しかっただけの発言だった。それをごちゃごちゃ考えすぎて呟いただけの言葉だった。

 だけど、私と天野の会話だけ切り取ってまとめてみると、私がこの場所にいない岡本の事を酷く想っている……様にも感じるわよね。

 それから天野との会話が途切れた。つまり、誤解されてるのでは。

 私は恐る恐る顔を上げると、天野が苦しそうに顔をしかめていた。
「今日は俺だけの涼音だろ? 頼むから、今日は俺だけを見ろよ」
 命令しているのに声色は懇願するものだった。

 垂れた二重が潤んでいて、熱い吐息で首の辺りを撫でられた。身体が天野の吐息に反応する。ビクンと震えると、その反応を見た天野が安心した様に溜め息をついた。

「あ、あの、あの。岡本がいた方がいいっていうのはね、誤──んっ」
 誤解なの。岡本がいなくて寂しいって想って発言した言葉ではなくて。

 そう説明しようと思ったのに、突然天野は私の口の中に親指を突っ込んできた。私は口を閉じる事が出来なくなった。だってこのまま喋り続けたら天野の親指を囓ってしまう。

「駄目だ。あいつの名前は口にするな。そうしないと俺がどうにかなっちまう」
 そう言って天野は私の上着を乱暴に捲りあげた。



 ◇◆◇

「あっ、あん、あっ」
 天野は容赦なく私の感じる部分を徹底的に責める。

 いつもより乱暴に扱われるのに、私の身体ときたら馬鹿みたいに反応する。そうなる様に教え込まれたせいでもある。部屋には私の嬌声だけがやたらと響く。

 ベッドの側に私の洋服やストッキングそして下着が散らばり、天野の服も全て乱暴に脱ぎ捨てられていた。ベッドの上で裸になった私と天野。

 天野の身体は引き締まっていてどの角度から見ても完璧だった。程よくついた筋肉は彼の努力の結晶だ。週に何回かジムに通っている事を知っている。今日だって待ち合わせ前の時間は、人工の波を出してサーフィンが出来るスポーツクラブに行くと言っていた。

 怪我をしてプロサーファー人生は歩めないけど、好きなものは好きだからと、たまに波に乗りに行くのだとか。

 プロになれなかったのは怪我のせい。辛かった事もあるだろう。アクティブで前向きでそして考え方もシンプル。同じ年だけど私よりずっと頭がよくてそして優しい男。それは苦労を乗り越えてきたから。そんな天野に想われ抱かれる事がどんなに尊い事か。

 しかし、今の天野はいつもの余裕やスマートさの欠片もない。乱暴で力尽くで私をねじ伏せようとする。

 天野が私の左胸の乳首を口の中に含むとしつこく舌で弾く。更に片手で足の付け根にあるぷっくりと膨らんだ花芯を何度も何度も指で弾く。天野を迎え入れる入り口は何度も弄られたせいでドロドロにふやけていて、私の体液でベトベトになっている。その体液を掬い上げては花芯に塗り込んで滑りをよくする。トントンとリズムよくタップし、円を描く様にぐるぐると優しく撫でられると、それだけで私は身体の奥が熱くなり既に数回達してしまった。

「あっ、ああっ。ヤダ、またクル! っっ~きちゃうからっ」
 私は身体をねじって再びやってくる快感から何とか逃れようとする。

 何度も絶頂すると敏感な部分が痺れておかしくなってくる。酷いと連続で達してしまう。しかも、今日は強制的だから身体が辛い。いつもなら天野は意地悪だけど声をかけてくれるのに何も声をかけてくれない。天野の下半身が視界に入る。勃起している天野なのに、触れさせてくれず私の中にも入ってくれない。

「──っっああっ!!」
 私は掠れた声を上げて喉を反る。上半身と下半身をねじった状態で達すると、子宮の辺りがキュッと切なくなった。それが痛みに変わる。多少の痛みと甘い痺れに流されながら、生理的な涙がポロリと零れた。

 よく考えたらいつものキスをしていない。

 天野のキスはうっとりするキス。キスが上手い男はセックスも全て上手いって聞くけど、本当にその言葉通りだ。いつもなら唇が腫れるぐらいキスをして、同時に身体をゆっくりとほぐされていくのに、落とされたのは乱暴なキスだけだった。いつもの手段を飛ばして、身体だけが反応して快楽に達してしまう。

 私はスンと鼻を啜る。天野は私の胸をしゃぶっていたのを止めて、今度は指で再び乳首や乳輪を撫ではじめた。
「あっ、ああっ」
 痛いぐらい尖った乳首も再び天野に触れて貰える事を喜んでしまう。私は身悶えながら、天野を見上げる。

 私が見つめると天野は苦悩する様に眉を寄せて、何か告げようと口を開くのに、直ぐ口を閉じてしまった。

 ああ……私の何気ない一言で傷つけたのね。三人でいる事は天野も望んでいると理解している。だってそれが始まりだから。でも私が天野と同じ立場だったらどうかしら。男性一人に女性二人という恋人関係だとしたら?

 もし愛する人と三人で会わずに二人きりで会った時に、もう一人の相手の事ばかり気にかける言葉を聞いてしまったとしたら──うん。それはかなり精神的にくるわね。

 きっと比べて落ち込むし自信がなくなるわよね。私は天野と岡本を比べるなんてないけど、そんなのは相手には分からない。三人でいる事のバランス、危うさ。二人きりになると、そんな爆弾じみた不安が潜んでいるとは考えた事もなかった。

 今すぐ抱きしめたいのに、天野に両手を万歳したままで縫い止められそれすらも叶わない。

 ねぇ天野。それでも私の気持ちは変わらない。そう、私はね──

「悠司、好きよ」
 私は生理的に出てきた涙のせいで少し鼻声になっていた。それでも思いを込めて本心を伝える。

 私の言葉に反応して天野が私の身体の中で這い回っていた手を止める。そして仄暗くなっていた瞳に少しだけ輝きを取り戻す。
「涼、音」
 小さく私の名を呼んだ天野。気がそがれたのか縫い止めていた頭上の手が緩んだ。

 だから私はゆっくりとその手を押し返し天野の顔を両手で包み込む。

「……悠司、好き。大好きよ。そして、あなたを愛してる」
 私はゆっくりと近づいて天野の唇に私の唇を寄せる。吸い付くみたいにキスをして離れると、天野の眉間に寄せられた皺が伸びて、表情に少しの安堵が浮かび上がった。

 それから、ゆっくりと私の身体を横から抱きしめて、肩口におでこをピタリとつけた。それから天野はゆっくりと深呼吸をして、肩の力を抜く。

 少し震えている掠れた声で天野は問いかける。
「こんな嫉妬丸出しのみっともない俺なのに?」
 天野の珍しく自信のない声が聞こえる。表情を隠しているのは天野には珍しく子供っぽい顔をしているのだろう。

「……うん。たまに見せてくれるそんな弱みも全部。だってそれを含めて悠司なんだし」
 私は両腕を天野の背中に回して、ポンポンと小さく子供をあやす仕草をしてみる。

 こんな扱いは、成人した男の人にはしないかしら? 私はそう思ってあやすのを止めて背中をゆっくりと撫でる。筋肉で所々隆起しているのをなぞる。

 撫でる手が何度か行き来した頃、天野が小さく溜め息をついて身体を起こした。それから、私の顔を覗き込む。珍しく照れているのか頬を赤くしていつもの甘い視線を投げかける。
「涼音」
「ん?」
「乱暴にしてごめん」
「うん……ちょっとびっくりしたけど。痛くなかったから大丈夫。でも──」
 私はわざとらしく視線を逸らして上目遣いで天野を見上げる。すると天野が心配そうに覗き込んできた。
「キス……いつもの優しいキスが欲しいの」
「!」
 天野は驚いて口を開いて固まって、小さく自嘲的に笑った。
「駄目だわ。俺の負けだわ」
「勝ち負けの問題?」
「いや、そうじゃなくて涼音の愛の大きさに感動? うーん。と言うよりも、寛大さ? 鈍さ?」
「もう。鈍さってなによ」
 最後の一言で天野がすっかり調子を取り戻したのが分かった。

 私はポコンと天野の胸を小さく叩いた。すると天野はそんな私の拳を手で受け止め、指を開かせる。そして手の甲にキスを落として、掌にキスを落とす。それから私の顔を見つめて、その瞳をじっと見つめる。

「涼音、愛してる」
 それから指先にキスを落とすとゆっくりと顔を傾けて優しく唇に触れるだけのキスをした。



 ◇◆◇

 海の底にいるみたい。

 そう思ったのは酸欠になったからじゃない。天野が与えてくれる快感が身体の中でさざ波をおこし、飲まれて……気がつけば海の底を漂っている様な感覚になったからだ。

 あんなに乱暴に触れていたのが嘘みたい。

 キスが柔らかく私の唇を開いていく。そっと差し込まれた舌が私の舌を絡め取り、口内を舐っていく。上顎を舐められるとゾクゾクして思わず背中を反らせてしまう。少し苦しくなったと思ったら、隙間が出来て吐息が漏れる。

「はっあっ。っん……」
 再び唇が重なり潜ると今度は胸の頂をゆっくりと両手で弄られる。尖って赤く色づいた乳首は天野に触れられるとキュンとお腹の奥に甘い痺れを伝えてくる。

 ああ、早く繋がりたいのに。

 天野は私の足の付け根に膨れ上がったままで擦る様に腰を前後に動かす。さっき乱暴にされながらも馬鹿みたいに濡れてしまった。でも天野は股の間を行ったり来たりの、ヌルヌルとした感触と粘り気のある水音を伝えてくるだけだ。私は我慢が出来なくて天野の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回す。すると天野は小さく笑って腰を少し奥に引いた。

 髪の毛をぐちゃぐちゃにするなんて子供っぽい悪戯って思ったかな? そう考えたのもつかの間、天野自身で一気に貫かれた。

「ああっ!」
 突然だったので私の身体が驚きはねる。でも、私の内側はそんな事はなかった。待ちに待った天野自身に愛され嬉しい悲鳴を上げている。その証拠に軽く痺れて行くのが分かった。

「ハハッ! 入れただけでイクとかさ──っっ!」
 天野が私の達した様子に嬉しそうに笑うけど、その後直ぐに顔をしかめた。何故なら、私の中がうねり天野の陰茎を奥へと呼び込み締めつけたからだ。

 自分の身体がそうなる様に動いた。無意識だったけど、天野の陰茎が驚いて大きく膨れ上がって震えたのが分かった。

 天野がぶるっと身体を震わせて、歯を食いしばって耐えていた。それから少し怒り気味に呟く。
「このっ、奥でいきなり締めるなって! あっ……ちょっと出た」
 最後の一言は少し気が抜けた答え方で少し笑ってしまいそうになる。

 天野が言う通り、少しだけ出てしまったのかもしれないけど相変わらず陰茎は大きさを保ったままだ。

 私は挑戦的に微笑んで天野の首に手を回す。
「お願い悠司、動いて」
 ずっと悠司を待っていたの。

 小さく呟いたら天野が今度は私の首筋に吸い付くキスを落とす。キスを繰り返して、最後少しだけ甘噛みをした。

「あっ!」
 甘噛みに驚いて身体を震わせると、それを合図に天野は腰をゆっくりと小刻みに前後に動かしはじめる。

 ガツガツと突き上げるのではない、あくまでゆっくりと緩く動かすだけだ。奥の行き止まりになっている部分を的確に突き上げてくるので、私は堪らず声を上げる。

「あっ、そこ、凄く、感じちゃ……あっ、駄目、駄目だってば!」
 それなのに悠司は動きを止めない。ゆっくりと奥だけズンズンと突き上げられ、私は堪らなくて首を左右に振る。腰と言うかお腹と言うか、痺れる快楽が溜まっていくのが分かる。

 それなのに天野は突然、親指で擦る様に膨れ上がった花芯をゆっくりと撫ではじめた。強く押さえるのではなくソフトに触れるか触れないかのタッチで。

「あっ。一緒に触れるのは駄目だってばぁ!」
 しかも一番私の弱い触れ方。円を描く触れ方に私は視界が狭くなっていく。

 駄目、これ、このままじゃ凄い、のが来ちゃう! 私は天野の名前を呼ぶ事しか出来なくなる。

「あっ、悠司、悠司っ。お願い、もう、もう、あっああ──っっっ」
 私は足の指に力を込めて、腰を自ら天野に押しつけ喉を反らせ声を嗄らす。そして最後は引きつった様に身体を何度かはねさせると、一人昇りつめてしまった。

「っっ!!! ああ……」
 天野も私と同時に声を詰めると、腰を何度か打ちつけ最後ブルブルと震えて、全てを解き放った。そして私の身体の上に自分の身体を重ねてお互いの汗を混じらせた。

「はぁはぁ……悠司」
 私は荒い息をしながら天野の背中を抱きしめる。天野の背中は汗で驚くほど濡れていいた。気がつけば自分も同じ状態でびっくりしてしまった。

 私達、シャワーも浴びずにこんなに乱れて。

 そんな風に思っていたら天野も同じ事を考えていたのか、私のはりついたおでこの髪をかき上げてキスを再び落とした。

「無理させたな。悪かった……そういやシャワーを浴びてなかったな。身体を洗ってから、ジェットバスでゆっくり花火を見るか」
 そして私の返事を聞かずに再びおでこにキスをする。そのくすぐったさに私は笑って返事をする。
「うん……そうね。連れてきてくれてありがとう。花火楽しみだわ。それにしても、こんな素敵なホテルの予約、よく取れたわね」
「予約出来たのはタイミングがよかったからかもな。偶然さ。俺もせめて花火は見たかったし。本当は、パークで遊びたかったんだけどさ。それはまた今度だな」
 やっぱり。天野はアミューズメントパークで遊びたかったのだろう。ジェットコースターとか乗りたかったのかしら。

 私は、ジェットコースターに乗って万歳をしている天野を想像して小さく笑った。すっかり誤解が解け暢気に天野を見上げると、天野はニヤリと笑った。

 その笑い方があまりにも意地悪なので私は思わずたじろいだ。

「な、何よ?」
「いや? ジェットバスに浸かりながらストロベリーの入ったスパークリングワインを飲もうぜ。丁度よく冷やしてあるんだ」
「ホントに? 素敵!」
 そんなサプライズも用意していたのね! たじろぐ必要なかったわ──って、何? それなのに何故そんな意地悪く笑うの? 私の今までの経験から頭の中で警笛が鳴っている。

「プレゼントはそれだけじゃないぜ。ジェットバスに浸かる時の水着とさ、それにちょっとした玩具も用意しているから。ワインを飲みながら楽しもうぜ?」
 天野が綺麗なウインクをしてみせる。

「へー水着!」
 ジェットバスがあるベランダは少しだけせり出した天井と、高い壁がある。でも、外だものね。覗かれる心配はないけど、水着を着た方がいいのかしら。ん? 玩具って何?

「ねぇ、玩具って何の事?」
「さーて! まずはシャワー浴びて汚れを落とそうぜ」
 私の質問を遮って天野は身体をベッドから起こす。それから私の手を引いて起き上がらせる。
「待ってよ天野、玩具って」
「こーら。すぐに名字呼びに戻るんだな。今日はずっと悠司って呼べよな」
「う、うん分かったけど。悠司、玩具って」
「さぁさぁさぁ。シャワーだシャワー。ほら行った行った」
 玩具と聞く度に悠司は私の言葉を遮ってしまう。

 何故、悠司がこれ程に私の言葉を遮っていたのか? それは、玩具がびっくりするぐらいリアルな大人の玩具だったからだった。
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