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第一章
配属2日目
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花森沙穂、配属2日目のことーー。
花森は東御のデスク横で深々と頭を下げている。
「も、申し訳ございません……」
「請求書をシュレッダーにかけただと??」
「要らない書類の中に入っていたように見えまして」
「請求書は請求書フォルダの中にしか入れん!」
配属された初日は挨拶回りだけだったが、次の日からはデスク関係の仕事を任されていたのだ。そこで花森は早速やらかした。
「ど、どうすればいいんですかあああ」
「……紙で発行された請求書は再発行をしてもらうしかないだろうな」
「す、すいませんんん」
「もうやってしまったことは仕方ない。手分けして電話していくぞ」
「は、はい……!」
そこから東御と花森は請求書の発行元に一件一件電話をかけていった。
花森は頭を下げながら電話をして謝っており、東御も申し訳なさそうに電話をかけている。
東御が仕事でミスをすることはなかったので、社内はその異様な光景に花森を気の毒がった。東御の巨大な雷が落ちることが確定したからだ。
*
「ありがとうございました……!」
「全く……請求書を捨てられるとは思わなかった」
花森と東御は全ての依頼を終えると会社の休憩スペースにいた。
そこは8畳ほどの広さに簡易的な机と椅子が置かれた場所で、自動販売機だけが設置されている。
東御はブラックの缶コーヒーを手にその机に軽く腰を預けており、花森はその隣でお茶のペットボトルを持って立ち、東御に頭を下げていた。
「私、どうも抜けているところがあって……呆れられるのも仕方ないんです。やっぱり社会に向いてないんだと思います……」
「その辺にしておけ」
東御は、萎縮し続けている花森をじろりと見下ろす。
「こんなことをさせられたのは人生で初めてだった」
「……ですよね」
そこで東御はふっと笑う。人造人間のような凝り固まった顔が、急に人間らしい表情を浮かべている。
「いい経験になったよ」
「えっ……?」
「こちらがミスをすることなんてなかったからな」
「いや、それって地味にすごいんですけど……」
これまでの人生がミスだらけの花森にとって、ミスをしない人生とは一体どんなものかすら想像がつかない。
「花森のお陰で愉快な経験ができた」
東御は花森を見つめて嬉しそうに笑う。花森はそんな東御の顔に驚くばかりだ。
これは二人が出会って2日目のできごと。
東御八雲は初めて知った。
自分の好みは、間抜けな女だったのだ――。
花森は東御のデスク横で深々と頭を下げている。
「も、申し訳ございません……」
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そこから東御と花森は請求書の発行元に一件一件電話をかけていった。
花森は頭を下げながら電話をして謝っており、東御も申し訳なさそうに電話をかけている。
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*
「ありがとうございました……!」
「全く……請求書を捨てられるとは思わなかった」
花森と東御は全ての依頼を終えると会社の休憩スペースにいた。
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東御はブラックの缶コーヒーを手にその机に軽く腰を預けており、花森はその隣でお茶のペットボトルを持って立ち、東御に頭を下げていた。
「私、どうも抜けているところがあって……呆れられるのも仕方ないんです。やっぱり社会に向いてないんだと思います……」
「その辺にしておけ」
東御は、萎縮し続けている花森をじろりと見下ろす。
「こんなことをさせられたのは人生で初めてだった」
「……ですよね」
そこで東御はふっと笑う。人造人間のような凝り固まった顔が、急に人間らしい表情を浮かべている。
「いい経験になったよ」
「えっ……?」
「こちらがミスをすることなんてなかったからな」
「いや、それって地味にすごいんですけど……」
これまでの人生がミスだらけの花森にとって、ミスをしない人生とは一体どんなものかすら想像がつかない。
「花森のお陰で愉快な経験ができた」
東御は花森を見つめて嬉しそうに笑う。花森はそんな東御の顔に驚くばかりだ。
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東御八雲は初めて知った。
自分の好みは、間抜けな女だったのだ――。
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