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第三章
花森家の騒動 1
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東御は日曜の朝から車を運転している。
花森の実家は車で3時間程度の場所にあり、菓子折りを積んで高速道路を走っていた。
「許してもらえなかったら……またこの道を何度でも通う」
「まず大丈夫だと思います」
「どうしてそんな余裕なんだ。仮にも俺は6つも年上の上司なんだぞ?」
「私の実家に行けば全てが明らかになりますよ」
東御はそれなりに緊張している。
緩めたネクタイを左手で軽くいじりながら、カーナビに案内されるまま花森家に向かっていた。
こぢんまりした白い外壁の家に着くと、庭先にある2台分の駐車場の1台分が空いていた。
東御は花森の指示で車を駐車して、菓子折りを持っていつもより硬い表情で花森の隣に立っている。
「ただいまー」
花森はチャイムを押して玄関で声を上げる。
「はあーい」
中から女性の声がすると、花森がガラガラと玄関の引き戸を開ける。
廊下を小走りでやってきた頬がふっくらした中年女性が、花森を見て「沙穂ちゃん」と声を掛けた後で隣に立つ背の高い東御を目に入れる。
「きゃっ!」
急に叫び声があがり、東御がビクッと驚いた。
「おとーさーん!! ちょっと、麻里ちゃーん!!」
「お母さん、騒ぎすぎ」
花森母の呼び声に、花森父と花森姉が玄関にやってくる。
「見て、麻里ちゃん! 沙穂ちゃんの彼氏さん!」
「ちょっと沙穂!」
「さーちゃん!!」
わらわらと集まって東御と花森を交互に見る花森家の3人に、東御は固まる。
「東御八雲さん。会社の課長で、私の彼氏……です」
「初めまして、東御八雲と申します。沙穂さんとお付き合いさせていただいております」
東御が深々と頭を下げたので、「やだ沙穂ちゃん、彼氏さんのお顔が隠れたわよ」「彼氏さん、楽にしてください」「さーちゃん、早く上がってもらって」と花森家は騒がしい。
東御は菓子折りを花森母に渡すと、流れに任せて居間に案内され、6畳の和室に正座をした。
花森家の3人は和室の入口側に固まって、穴が開きそうなほど東御に視線を集中させている。
「この度は、急にお邪魔してお騒がせいたしました。どうか沙穂さんとの結婚を認めていただきたく……」
「沙穂でいいんですか?」
姉が心配そうに尋ねる。姉妹で目元がよく似ていた。
「沙穂さんがいいのでお願いをしに参りました」
「はあー……あらあ、そうなんですねえ」
花森母はパーマのかかったボブの髪を揺らしながら、興味深そうにうなずいている。
花森父は未だに東御しか見ていない。
「沙穂さんは非常に聡明で、いつも感心させられています」
東御が穏やかに花森家の3人に視線を向けながら話す。
「聡明……ですか」
「まあ、勉強はよくできるんですけどねえ、なにせうるさいでしょう……」
「家事は何もできませんよ?」
花森家の3人は気の毒そうに東御を見返した。
「ちょっと!」
花森は3人を咎める。
「だって、さーちゃんの……東御さん、さーちゃんに騙されてるんじゃないですか?」
「八雲さんの方が私のことを好きなんですーっ」
「はい、そうです。私が沙穂さんに惹かれて……」
東御があっさりと認めると、3人は顎が外れそうなほど口をあんぐりと開けた。
「なんで我が家側がそうなるの!」
「物好きなんですね、東御さん」
花森は自分の家族にひたすら怒るしかなかった。
花森の実家は車で3時間程度の場所にあり、菓子折りを積んで高速道路を走っていた。
「許してもらえなかったら……またこの道を何度でも通う」
「まず大丈夫だと思います」
「どうしてそんな余裕なんだ。仮にも俺は6つも年上の上司なんだぞ?」
「私の実家に行けば全てが明らかになりますよ」
東御はそれなりに緊張している。
緩めたネクタイを左手で軽くいじりながら、カーナビに案内されるまま花森家に向かっていた。
こぢんまりした白い外壁の家に着くと、庭先にある2台分の駐車場の1台分が空いていた。
東御は花森の指示で車を駐車して、菓子折りを持っていつもより硬い表情で花森の隣に立っている。
「ただいまー」
花森はチャイムを押して玄関で声を上げる。
「はあーい」
中から女性の声がすると、花森がガラガラと玄関の引き戸を開ける。
廊下を小走りでやってきた頬がふっくらした中年女性が、花森を見て「沙穂ちゃん」と声を掛けた後で隣に立つ背の高い東御を目に入れる。
「きゃっ!」
急に叫び声があがり、東御がビクッと驚いた。
「おとーさーん!! ちょっと、麻里ちゃーん!!」
「お母さん、騒ぎすぎ」
花森母の呼び声に、花森父と花森姉が玄関にやってくる。
「見て、麻里ちゃん! 沙穂ちゃんの彼氏さん!」
「ちょっと沙穂!」
「さーちゃん!!」
わらわらと集まって東御と花森を交互に見る花森家の3人に、東御は固まる。
「東御八雲さん。会社の課長で、私の彼氏……です」
「初めまして、東御八雲と申します。沙穂さんとお付き合いさせていただいております」
東御が深々と頭を下げたので、「やだ沙穂ちゃん、彼氏さんのお顔が隠れたわよ」「彼氏さん、楽にしてください」「さーちゃん、早く上がってもらって」と花森家は騒がしい。
東御は菓子折りを花森母に渡すと、流れに任せて居間に案内され、6畳の和室に正座をした。
花森家の3人は和室の入口側に固まって、穴が開きそうなほど東御に視線を集中させている。
「この度は、急にお邪魔してお騒がせいたしました。どうか沙穂さんとの結婚を認めていただきたく……」
「沙穂でいいんですか?」
姉が心配そうに尋ねる。姉妹で目元がよく似ていた。
「沙穂さんがいいのでお願いをしに参りました」
「はあー……あらあ、そうなんですねえ」
花森母はパーマのかかったボブの髪を揺らしながら、興味深そうにうなずいている。
花森父は未だに東御しか見ていない。
「沙穂さんは非常に聡明で、いつも感心させられています」
東御が穏やかに花森家の3人に視線を向けながら話す。
「聡明……ですか」
「まあ、勉強はよくできるんですけどねえ、なにせうるさいでしょう……」
「家事は何もできませんよ?」
花森家の3人は気の毒そうに東御を見返した。
「ちょっと!」
花森は3人を咎める。
「だって、さーちゃんの……東御さん、さーちゃんに騙されてるんじゃないですか?」
「八雲さんの方が私のことを好きなんですーっ」
「はい、そうです。私が沙穂さんに惹かれて……」
東御があっさりと認めると、3人は顎が外れそうなほど口をあんぐりと開けた。
「なんで我が家側がそうなるの!」
「物好きなんですね、東御さん」
花森は自分の家族にひたすら怒るしかなかった。
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