<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

文字の大きさ
87 / 107
< 本編 >

87. 執務室で君と:β枠会議(2)

しおりを挟む




教授から、打合せを始めよう、という声掛けがあり、やっと打合せが始まった。
教授の執務室に入室してから既に10分が経過していた。

「明後日に開催される予算割答弁の出席者リストを各タブレットに送付したので、確認をお願いしたい。本部役員には既に配布済みだ。」

比良坂教授が、コーヒーに口を付けながらそう言うと、さっきまでお経を唱えていた咲耶が口を開いた。

「……なあ、教授……このメンバーで出来る事って……何がある……?」
「そこは、測りかねているところだよ。……会長である黒木くんの動きは前年と変わらないものを学院側は求めている。そこで出席する生徒達との軋轢を防ぐ事が出来れば……及第点だな。」

俺たちの役目は……圭介さんの能力を活かしつつ、如何に穏便に、問題なく終わらせるか、だ。
俺の両親に挨拶をした時の、彼が、ふと頭をよぎった。

演技をすれば、いいのでは……?

「あの……圭介さんと、1度……打合せして、いいですか?俺、圭介さんに、やってみてほしい事があって……」
「そうか……!じゃあ、時任くんには、黒木くんをお願いしよう。他のメンバーは手分けして出席者の資料を確認しておいてくれ。何か、ヒントがあるかもしれない。」
「じゃ、教授……俺、圭介さんのところに行ってきま……って、……咲耶?手、離して?」

咲耶が俺の手を掴んで離さなかったから、俺は立ち上がる事が難しかった。咲耶の方にぐ、と寄せられる。

「……嫌だ……はなし、たく、ない」
「咲耶、お願い。俺、行かないと……離してくれないと……困る」
「……俺は……お前を、困らせたい、訳じゃ、ない。……分かった。いって、らっしゃい」

いってきます、と言って俺は教授の執務室を出ようとドアに手を掛けようとしたその時、ドアがキィ、と自動で開いた。

俺の気配に気付いて……自動ドアをしてくれる人なんて

この世で、ひとりしか、いない。

「……遅すぎる。待ち草臥れたぞ、士郎」
「圭介さん!……会いたかった……!今から、そっちに行こうと思ってたんだ。来てくれて……嬉しい」
「……っ。そうか。俺も、嬉しいよ。」

俺から彼に抱きついて。朝振りの体温を感じた。
離れてる間、半身がいなくなったみたいな、そんな感覚で。
くっついているとすっごく安心する。
圭介さんが優斗に言った「2時間離れてるだけで耐えられなくなる」発言を最初聞いた時は、圭介さんどれだけ……!とツッコんでしまったけど、俺は10分も耐えられなかったみたいだ。

優斗よりも圭介さんよりも。
俺が1番……子供かもしれない。

彼が俺を抱きしめてくれる腕が暖かくて……触れ合ってるところから嬉しさが込み上げた。
ずっと、こうしてたい。こうしてたいけど、大事な話を彼に提案しないといけない事を思い出して、彼の胸に預けていた顔を彼の方へ向けた。

「圭介さん……!明後日の予算割答弁、ちょっと提案したい事があるんだけど……1コマ目もうすぐ始まっちゃうから……お昼、執務室で相談したい……いい?」
「構わない。君の相談事なら何でも聞こう。ランチは……学食に行っていると遅くなってしまうから、執務室へデリバリーしてもらおう。メニューをスマホへ送っておくから、決めたら2コマ目が始まるまでにチャットを送っておいてくれ。頼んでおく。」

ありがと、と言いながら顔を綻ばせると、うっとりした顔の彼が口唇を俺に落とした。
すごく、嬉しい……もっと、くっつきたい……

くっついてないと落ち着かなくて……俺からも彼に口唇を落とすと、お互いに何度も口唇を啄みあった。
彼の匂いに、温度に、柔らかさに……安心、する。

「んんっ!仲がいいのは良いことだが……!そろそろ、終わろうか……!見てるコッチが、恥ずかしい……!」

彼とのキスに夢中になりすぎて、みんなが後ろにいるの……忘れてた……!

教授の咳払いで現実に引き戻されて。慌てて教授に向かって謝った俺に、教授はニコリ、と微笑んでくれた。
まるで、よかったな、って言ってくれてるみたいで。
胸がじわじわ、暖かくなる。



「咲耶くん……やめた方が、いいと思うよ……?士郎くん、すごく幸せそう……乱さないであげて、ほしい」
「……祥大……俺も、そう、思う。……でも、自分でもどうしようも出来ないんだ……、あの子が好きで、好きで好きで好きで……堪らない。あんなの目の前で見せつけられても……あの子を俺のモノにしたくて……あの子が欲しくてしょうがない。……こんなに欲しいと、願ったモノは……今まで生きてきて、ひとつもない。……士郎だけだ。俺を、満たすのは」
「咲耶くん……絶対、しんどいよ……?」
「知ってる。なんなら、もうキツい。でも……笑ってるあの子を俺の腕の中に……どうしても、欲しい。……ごめん、な。祥大と、アイツが……うまくいく様に。ちゃんと手伝うから。俺の事は、放っておいて。……折角、心配してくれたのに……ほんとに、ごめん」
「咲耶くん……」
「士郎しか、いらない……!こんな気持ち、生まれて初めてで……どうしたらいいか……、自分でも……困ってる」


祥くんと咲耶が2人で深刻な、話をして、る……?
俺は入り口にいて、離れたところにいる2人の会話は全く聞こえなかったけど……表情に深刻さが滲んでいた。


まさか、俺の話をしているなんて。

この時の俺は、まだ、知らない。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

処理中です...