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< 本編 >
88. ふたりの距離:side鷲宮
しおりを挟む好きだと自覚してから、あの子から届いたあの子の写真を何度も見て……耐性をつけたつもりだったけど。
つもりは、所詮、つもりで。
俺に笑顔を向けてくれるあの子は、写真なんて比じゃないくらい(いや、写真も本人なんだけどやっぱり生は違った……)全てが恐ろしく可愛くて……俺は心臓を何度もつぶされていた。
そんな士郎は、当たり前だが俺の気持ちに気付くこともなく……俺の手を離して、やってきた黒木の身体に自ら身を委ねた。
こちらの事は何も気にならない様子で、嬉しそうにアイツの口唇を楽しむあの子を見て、心が抉れそうで。
あの子は……間違いなく黒木しか、見えていない。
それでも俺は、士郎を、俺のモノにしたくて堪らない気持ちが……抑えられないでいて。
精神状態は最悪だった。
「咲耶……体調、大丈夫?顔色すごく悪いよ……?保健室、いく?」
一コマ目の講義が終わって、休憩時間に士郎から、優しく愛しく可愛い声(もう語彙力が崩壊してて表現がバグってるのは自分でもよく理解してるから、ツッコミは無しで頼む)で質問されて、胸が高鳴る。
隠してる俺の気持ちがバレない様に、笑顔を取り繕った。
「士郎……ありがと。やっぱ病み上がりだからかな……次の講義、休むわ。保健室、行ってくる」
思いの外、朝会のダメージが大きかったようで。
保健室で寝てた方がマシだな、と席を立つ。
士郎とふたりきりになると……いろんな感情をぶつけてしまいそうで……ひとりで保健室へ向かった。
士郎を見るたびに、抱きしめて、俺のモノにしたい、という欲望と……どう頑張っても手に入らない、という現実を突きつけられて……精神的にぐちゃぐちゃだ。
正直、歩くのもしんどい。
心が擦り減る事が今までなかった俺は心の不調が体調に影響する事を初めて実感していた。
「……1週間……休みます……?」
保健室の入り口の『1週間養護教諭不在』の張り紙に、プライベートで旅行に行っているという生徒たちの噂を思い出して、仕事しろよ、と悪態をついた。
いつもなら気にならない事が、最悪の精神状態だと気になってしまう事に情けなくなる。
保健室の入り口に凭れながら、深い、深い溜息を吐いた。
士郎を困らせたくはない。
士郎に拒否をされたら、俺はその先へは進めない。
これ以上、俺は……きっと、何もできない。
それでも、あの子への気持ちは溢れるばかりで……
進むことも戻ることも出来ないでいる。
「……どう、したら……いいんだ……」
「……?!咲耶?!大丈夫……?!」
愛しいあの子の声が聞こえて、驚いて後ろを振り向くと
士郎が、そこに、いた。
心臓が、早鐘を打つ。
頼んでないのに、頼ってないのに……
もうすぐ、予鈴がなるのに……なんで。
「そんな、壁に凭れないといけないくらいキツかったの……?!ごめ、俺……ここまで一緒に来るべきだった……!朝会の時、咲耶しんどいって言ってたのに……、っ。……肩、掴まって……?……歩ける?」
誰もいない保健室に、士郎の腕を引っ張って入り込んで、保健室のドアを鍵ごと閉めた。
もう、ごまかせない。
好きだ。
君が、死ぬほど。
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