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⭐︎大人になった彼
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「とにかく受け入れてもらわなきゃ困る。スーツ代もいくらかかったかな、確か……」
わざとらしく上を見つめながら指を数えている。
――意地悪だ。昔の朝日くんはいつも優しくてふんわりしてたのに、今の彼はとーっても意地悪だ。
どこをどう間違ってこんな“俺様”な大人に育ったのか。朝日くんが園児だったら、「そんな生意気なこと言っちゃって~」とくすぐっていたかもしれない。
……なんて、そんな仮定を想像したってどうしようもないけれど。
「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「顔赤いけど大丈夫?」
「うん。全然平気」
混乱した気持ちを抑えたくて、お手洗いに立った。というより冷静になりたくて一人の空間に逃げたくなったというべきか……。
私は肘掛けソファから立ち上がり、振り返ってドアの方へ一歩踏みだした。
その途端視界が揺れ、足がもつれて背もたれにかけていた手が滑った。
「あっ」
倒れると思った瞬間、朝日くんの手が腰に回り、間一髪で支えてくれた。
「ふぅ、大丈夫か?」
危なかった――。
朝日くんが受け止めてくれなければ、怪我をしていた。自分で気づかないうちに飲みすぎていたんだ。
「ありがとう。ごめんね」
斜めになった体を支えられたまま振り返ると、思いのほか朝日くんとの距離が近い。
見ると後ろに流されていた自然なダークブラウンの前髪が、咄嗟の動きで前に垂れている。
私は急に接近した端正な顔をまじまじと見つめてしまった。
くっきりした二重瞼の中にある綺麗なエメラルドグリーンの瞳。あいかわらずの長いまつ毛……。鼻筋もまっすぐに伸びていて、セクシーな唇もお酒のせいかピンク色に染まっている。どこを取っても美しい。
朝日くんて、大人になったらこんなに男前に成長するんだなぁ……などと呑気に観察していた。
ハッと我に返り、全体重を朝日くんの腕に預けていることに気づくと、早く起き上がろうともう一度お礼を言ってから胸を押して離れようとした。
なのに、力強い腕が離してくれない。
「朝日くん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「……」
大丈夫と言いながら、前後不覚になっているのだから信用してないのかもしれないけど、そろそろ下ろしてもらわないと。
「あの、朝日くん?」
何度問いかけても彼は何も言わず、ただ私の目をじっと見つめているだけ。
私もお酒を飲みすぎたせいで、支えられている体に力が入らず、身を任せる格好のままだ。
起き上がるには何かに掴まらないと、正しい姿勢に戻れないのにどうしたら……。
このまま目の前にいる朝日くんを掴んで立ち上がるしかない!
意を決して胸のあたりに無理やり掴まって勢いよくエイッ! と起き上がろうとしたのに、彼はさらに身を屈めてきた。
「あ、あれ? ごめん、やっぱり重いよね」
体ごと引っ張ったせいで、私の体重に耐えられず前のめりになったのだろう。
重くてごめん! と焦る。
なのにそんなことは気にする様子もなく、、間近に朝日くんの整った顔面が迫っている。
いっそのこと尻もちをついてもいいから、手を離してもらうしかない。
「本当にもう大丈夫だから、手を離すね」
落ちるのを覚悟して両手を離した。
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