生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

文字の大きさ
6 / 46

柊の葛藤①

しおりを挟む
 消化に良いものをと思い、柊は雑炊を作り、悠衣の部屋まで上がった。
 部屋の前で、トントンというノックと共に室内に踏み入る。
 と同時に、溢れ出る甘い香り。
 その香りは柊の本能を引き出し、思わず実の弟に欲情してしまいそうになるのを、何とか理性で柊は抑えた。
 ベッドの中でうずくまっている悠衣に、いつも通りを装って柊は声を掛ける。

「悠衣。ご飯、食べられますか?」
「……うう、ん……」

 返事か吐息か分からない声を漏らし、悠衣は起き上がった。
 どうやら寝ていたようで、潤んだ瞳が定まらない焦点の中、柊を捕らえる。

「柊、兄……」

 側にあった折り畳み式にテーブルを出し、その上に柊は雑炊を置いた。
 そんな柊の手を引き、悠衣はそのまま、流れるように柊の唇に自身の唇を押し付ける。

「ちょっ、悠衣!」
「……ダメ?」

 涙目で下から上目遣いで見られて、一瞬理性が崩れそうになった。
 けれど肩を押して距離を作り、そのままその体を引き寄せる。

「貴方の事が、大切なんです。こんな、気持ちではなく体だけをつなげるような行為……貴方に、してほしくはありません。それに、抑制剤も持ってきたので、それを飲んで眠ってください。そしたら少しは、楽になるでしょうから」

 ね? とあやすように頭を撫でると、「起き上がれますか?」とテーブルの前に悠衣を座らせた。

「……膝の、上が良い」

 いつもこうして座るときには、悠衣の事を後ろから抱きしめて座るというのが二人の間の日常だったため、隣に座ろうとした柊に、悠衣は縋るような視線で訴えた。
 それに唸るような息を漏らした後、いつも通り膝の上に悠衣を乗せる。
 悠衣の前で手を組み、悠衣がスプーンを手に取り食べ始める傍らで、柊の目には悠衣の首筋が目に入った。
 無意識にペロリと舐めるとビクンと悠衣も反応し、ハッとなって強く抱きしめる。

「すみません。もう、手は出しませんから」
「柊兄……柊兄は、どうして……僕にいつも、こんなことをするの?」
「こんな事、とは?」
「キス、とか」

 躊躇いがちに、悠衣が呟く。
 始まりは、いつだっただろうか。
 もう数年前になるだろうか。
 最初は、挨拶のようにほっぺにキスをしていたのを、いつからか唇に変わり、段々と兄弟での距離感ではなく恋人のような距離感になっていった。
 それに違和感は感じなかった。
 それが、当たり前のように互いに接していた。
 疑問を口に出したことは無く、二人とも自然にその行為を、感情を受け入れていた。
 それに今、悠衣が初めて疑問を口にする。
 それに驚きで目を見開きながらも、自然だと思っていた行為について、柊も考えてみることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...