生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

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柊の葛藤②

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「何故、でしょうね……。したかったからとしか……」
「それって、僕の事が好き……って、事?」
「……そうですね。悠衣の事は、大好きですよ」

 悠衣の恋愛の意味での問いかけから逃げ、分かっていながらも柊は兄弟としての愛情を回答した。
 遠回しな言い方にけれど、悠衣は笑顔で後ろを振り返る。

「なら、いいじゃん」
「いい、とは?」
「好きな人同士なら、良いんでしょ? 抱いて、柊兄」
「……自分が何を言っているのか、本当に分かっているのですか?」
「うん」
「後悔、しますよ?」
「しないよ、柊兄だもん」

 僕の事、誰よりも大切にしてくれるでしょ?
 そう言って笑う悠衣に、耐え切れず柊は口付けた。
 雑炊の味が微かに残る口内をじっくりと味わい、舌を押し入れる。

「んっ……あっ」

 いつもより何倍も甘い声が漏れる。
 頭がクラクラして、甘い芳香に当てられ、何も考えられなくなり、欲情のまま、本能のまま犯してしまいそうだ。
 それを堪え、柊はたっぷり口内を味わった後唇を離して、悠衣に薬を差し出した。

「ほら、これを飲んで、今日の所はもう休んでください。学校へは連絡は入れておくので、きっちり一週間、休むのですよ?」
「柊、兄」
「では僕は片付けがあるので」

 そそくさと逃げるように、柊は部屋を出ていく。
 あとに残された悠衣は、寂しそうに柊が出て行った扉を見つめていた。
 部屋の中には、荒い悠衣の息だけが響く。
 寂しさを紛らわせるため、言いつけ通りに薬を飲んだ悠衣は、ベッドの中に潜った。






「はあ」

 柊自身も夕飯を食べ、食器を片付けて。
 悠衣がいる部屋に目を向ければ、頭に浮かぶのは先ほどの悠衣の問いかけだった。

「この気持ちは……何なのでしょう」

 悠衣の事を考えると甘くうずく、ずっと側にいたい、誰にも渡したくない、離したくない。
 兄弟に向ける醜い独占欲、父が娘を嫁に出さないと宣言するように、悠衣の事を柊も誰にも渡したくはなかった。
 ブラコンと言われればその通りだ、けれど柊は……悠衣とのその先を、安易に想像できた。
 兄弟以上の感情、恋というにはあまりに毒々しい自己欲の強いこの感情を、どうしたらよいのか。
 そして離れていても感じてしまう悠衣のフェロモンに、自分はどこまで保つことができるのか。
 自嘲気味な笑みを零しながら、柊は両手を額につけ俯いた。

「どうか……無事、乗り切れますように」

 このアルファとしてオメガに欲情する本能を疎ましく思いながら、ただただ柊は願った。
 大事で大切な弟の悠衣、彼を自分から守るために。
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