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第33話
しおりを挟む「どういうことですか?」
だって、私は国外追放が言い渡されたはず。
それなのに、今更戻ってきてほしいというのは何を考えているんだろうか?
「王子がおまえを探しているそうだ。詳しい事情は分からないが、大聖女として何かお願いしようとしているんじゃないか?」
「……大聖女として」
「一度追放しておいて戻ってきてほしいとは……肝が据わっているというか、面の皮が厚いというか……まあ、とにかく豪胆な奴だな」
「豪胆、というか馬鹿というか能天気というか……とにかく、国王には向いていない方ですね」
私がずばっと言うと、エリックは苦笑していた。
「そういうわけだ。騎士団にも通達が来ているそうで、今ならまだすぐに逃げれば大丈夫なはずだ」
「……騎士団。つまり、ブレンドから話を聞いたと言うことですか?」
「ああ、そうだ。まだ見逃してやれるそうだ。だから――」
そういって私の手を握り外に出ようとした彼の手を握り返した。
「アーニャ?」
「戻りましょう王都に」
「……どういうことだ? 国外追放じゃないのなら、王都に戻って暮らしたいってことでいいか?」
「いえ、そんなことはありません。自由になれるのなら、自由でいたいです。でも……私は昨日の戦いに参加しています。私のことを知らない人のほうが断然多いとはいえ、まったくではありません。……誰かの口から洩れた場合、私を見逃したことでこの街の騎士たちの負担になってしまうかもしれません」
エリックは唇を一度噛んでから、私の肩を掴んできた。
その鋭い目とともに、こちらをじっと見てきた。
「王都に戻れば何をされるか分からないぞ?」
「分かっています。ですが、私は……私が原因でブレンドやケンリといった騎士の未来を奪いたくはありません」
私を見逃した、となればブレンドの立場が危ぶまれるはずだ。
「……気に、するな。それを覚悟の上でブレンドは俺に情報を流してくれたんだ」
「気にします。共に、王都まで来てくれますか?」
「……」
エリックは私と数秒見つめあってから、こくりと頷いた。
「それが、おまえの望みなら――俺はおまえの護衛だからな」
「ありがとうございます」
私たちは王都へ向かって、私たちは街を出発した。
王都行きの馬車へと乗った私たちは、何事もあく王都までついた。
久しぶりの王都に戻ってきた私は、それから背中を伸ばす。
「久しぶりですね」
「そうだな」
エリックはじっとこちらを見ていた。
私はそんなエリックに出来る限りの笑みを返した。
驚いたようにエリックがこちらを見る。
「なんだ、笑えたのか?」
「……普段はあまり笑ってはいませんね。感情の機微は魔力の安定性からかけ離れたものですから」
「激情を力にする人もいる。……もっと普段から笑うといい。その……似合ってる」
「……そ、そうですか? ありがとうございます」
もう一度微笑むと、エリックも笑った。
それから私たちは王城へと向かって歩きだす。
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