愛想がないと王子に罵られた大聖女は、婚約破棄、国外追放される。 ~何もしていないと思われていた大聖女の私がいなくなったことで、国は崩壊寸前~

木嶋隆太

文字の大きさ
34 / 37

第33話

しおりを挟む

「どういうことですか?」

 だって、私は国外追放が言い渡されたはず。
 それなのに、今更戻ってきてほしいというのは何を考えているんだろうか?

「王子がおまえを探しているそうだ。詳しい事情は分からないが、大聖女として何かお願いしようとしているんじゃないか?」
「……大聖女として」
「一度追放しておいて戻ってきてほしいとは……肝が据わっているというか、面の皮が厚いというか……まあ、とにかく豪胆な奴だな」
「豪胆、というか馬鹿というか能天気というか……とにかく、国王には向いていない方ですね」

 私がずばっと言うと、エリックは苦笑していた。

「そういうわけだ。騎士団にも通達が来ているそうで、今ならまだすぐに逃げれば大丈夫なはずだ」
「……騎士団。つまり、ブレンドから話を聞いたと言うことですか?」
「ああ、そうだ。まだ見逃してやれるそうだ。だから――」

 そういって私の手を握り外に出ようとした彼の手を握り返した。

「アーニャ?」
「戻りましょう王都に」
「……どういうことだ? 国外追放じゃないのなら、王都に戻って暮らしたいってことでいいか?」
「いえ、そんなことはありません。自由になれるのなら、自由でいたいです。でも……私は昨日の戦いに参加しています。私のことを知らない人のほうが断然多いとはいえ、まったくではありません。……誰かの口から洩れた場合、私を見逃したことでこの街の騎士たちの負担になってしまうかもしれません」

 エリックは唇を一度噛んでから、私の肩を掴んできた。
 その鋭い目とともに、こちらをじっと見てきた。

「王都に戻れば何をされるか分からないぞ?」
「分かっています。ですが、私は……私が原因でブレンドやケンリといった騎士の未来を奪いたくはありません」

 私を見逃した、となればブレンドの立場が危ぶまれるはずだ。

「……気に、するな。それを覚悟の上でブレンドは俺に情報を流してくれたんだ」
「気にします。共に、王都まで来てくれますか?」
「……」

 エリックは私と数秒見つめあってから、こくりと頷いた。

「それが、おまえの望みなら――俺はおまえの護衛だからな」
「ありがとうございます」

 私たちは王都へ向かって、私たちは街を出発した。
 


 王都行きの馬車へと乗った私たちは、何事もあく王都までついた。
 久しぶりの王都に戻ってきた私は、それから背中を伸ばす。

「久しぶりですね」
「そうだな」

 エリックはじっとこちらを見ていた。
 私はそんなエリックに出来る限りの笑みを返した。
 驚いたようにエリックがこちらを見る。

「なんだ、笑えたのか?」
「……普段はあまり笑ってはいませんね。感情の機微は魔力の安定性からかけ離れたものですから」
「激情を力にする人もいる。……もっと普段から笑うといい。その……似合ってる」
「……そ、そうですか? ありがとうございます」

 もう一度微笑むと、エリックも笑った。
 それから私たちは王城へと向かって歩きだす。


しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら
恋愛
侯爵家令嬢のミゼス・ワグナーは、何かあるとすぐに妹のリズのせいにして八つ当たりをした。 ある日ミゼスは、リズの態度に腹を立て、婚約者を奪おうとする。 リズはこれまで黙って耐えていた分、全てやり返すことにした……。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!

甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。 唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……

聖女だけど婚約破棄されたので、「ざまぁリスト」片手に隣国へ行きます

もちもちのごはん
恋愛
セレフィア王国の伯爵令嬢クラリスは、王太子との婚約を突然破棄され、社交界の嘲笑の的に。だが彼女は静かに微笑む――「ざまぁリスト、更新完了」。実は聖女の血を引くクラリスは、隣国の第二王子ユリウスに見出され、溺愛と共に新たな人生を歩み始める。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!舞踏会で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
デビュタント以来久しぶりに舞踏会に参加しています。久しぶりだからか私の顔を知っている方は少ないようです。何故なら、今から私が婚約破棄されるとの噂で持ちきりなんです。 私は婚約破棄大歓迎です、でも不利になるのはいただけませんわ。婚約破棄の流れは皆様が教えてくれたし、さて、どうしましょうね?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...