婚約破棄、国外追放しておいて、今さら戻ってきてほしいとはなんですか? 〜今さら戻るつもりなどない私は、逃げた先の隣国で溺愛される〜

木嶋隆太

文字の大きさ
13 / 37

第13話


 フェンリルの言葉に、リンダは顔を青ざめていた。

「な、何を言っているのですか……フェンリル様」
「君の体から、あの魔法陣を弄った魔力と同じ魔力を感じるんだ。君、あの時魔法陣に悪戯したんだよね?」

 冷静ながらもその声には怒りがはらんでいるように感じた。
 
「そ、それは……」

 リンダは言葉を詰まらせる。困惑した様子で、ウェンリー王子がこちらへと向かってきた。

「今、あの魔法陣はリンダによって弄られて正常に機能していないんだよ。おそらくだけど、今後もずっとその調子で満足に契約の儀は行えないだろうね。何も調べてないの?」
「なんだと!? す、すぐに調べさせろ!」

 驚いた様子で王子が声をあげる。……リンダ、まさかあの魔法陣を弄っていたなんて。
 彼女の顔がどんどん青ざめていくのを見るに、どうやら本当のことらしい。

「け、契約の儀ができないって……それじゃあ精霊たちはどうなる!?」

 王子が声を荒らげると、フェンリルがすぐに答えた。

「来年からは精霊と契約できないと思うよ。まだ数十年は今の精霊がいるから大丈夫だと思うけど、その先は……どうかな? 精霊魔法に頼らない生活が必要になると思うよ」

 フェンリルの言葉に、王子は顔を青ざめていた。

「ふぇ、フェンリル様なら直すことはできるのですか?」
「僕しか無理だと思うよ」
「な、直してください! お願します! 精霊がいない世界などで生きていけるはずがありません!」

 ウェンリー王子が頭を下げた。フェンリルがちらとこちらを見てきた。
 私の返事を待っているようだ。

「フェンリル、直す必要はありません」
「わかった!」
「な、何を言っているんだアルフェア」
「それは私のセリフです。私は散々――」

 あなたに酷いことをされたのだから……。信じてもらえなかったことがどれだけ苦しかったかを伝えようとした瞬間だった。魔力が溢れた。

「精霊魔法――!」

 それは、リンダからだった。彼女は狂ったような笑みとももに、こちらへと片手を向ける。

「け、契約者が死ねば……っ! 精霊との契約だって切れるでしょ!?」
「……何を言って」

 リンダは……私を殺すっていうの? 彼女はすぐに精霊魔法を練り上げようとしたが、次の瞬間魔力が霧散した。

「え!? ど、どうして!? せ、精霊! なんで!? あ、あれ! 契約が……っ!」

 リンダがうろたえていると、フェンリルが答えた。

「契約解除、したんじゃないのかな? ……さすがに、僕に喧嘩を売りたくはないんじゃないかな?」
「……そ、そんな――!」

 そこで王子が、はっとした様子で我に帰り、声をあげた。

「……おい! 騎士たち! このリンダという罪人をすぐに牢へとつれていけ!」
「ま、待ってくださいウェンリー王子! 私は国を思って――」

 リンダが必死に声をあげていたが、彼女は騎士に髪を引っ張られるようにして無理やり連れていかれる。
 美しい顔が台無しになるほど泣き叫んでいたが、ウェンリー王子は見向きもしていなかった。

 それから、彼はこちらへとやってきて、手を伸ばす。

「これで……すべて解決したな」

 え、なにやり切った顔してるのこの人?

「やり直そう、アルフェア。オレが悪かったよ」
「……あなたは、すぐに他者の言葉に惑わされます。例えば、今回の話もすべて嘘だったらとは考えないのですか?」
「もう、大丈夫さ。これからは、キミだけを信じるよ」
「あー、そうですか。ですが……あなたはリンダの言葉を信じ、一度私に対して酷い仕打ちをしましたね? これでまた、フェンリルが偽物だったとなれば、また私を追い出し、リンダを――とあなたはその場の状況に任せた対応しかできません。本質を見極める力がまるでないのです」
「……そ、それは仕方ないじゃないか!」

 私は逆切れしてきたウェンリー王子ににこりと微笑んだ。

「ですから、私はあなたと婚約はしませんよ? あなたが初めに言った通りに、私はこのまま国外へと行き、そこで『罪人』として生きようと思います。それでは」

 やっと……この言葉が言えたわ!
感想 164

あなたにおすすめの小説

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?

志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」  第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。 「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」 「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」 「そうですわ、お姉様」  王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。 「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」  私だけが知っている妹の秘密。  それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

佐藤 美奈
恋愛
クロエ・エルフェシウス公爵令嬢とガブリエル・フォートグランデ王太子殿下は婚約が内定する。まだ公の場で発表してないだけで、王家と公爵家の間で約束を取り交わしていた。 だが帝立魔法学園の創立記念パーティーで婚約破棄を宣言されてしまった。ガブリエルは魔法の才能がある幼馴染のアンジェリカ男爵令嬢を溺愛して結婚を決めたのです。 その理由は、ディオール帝国は魔法至上主義で魔法帝国と称される。クロエは魔法が一番大切な国で一人だけ魔法が全然使えない女性だった。 クロエは魔法が使えないことに、特に気にしていませんでしたが、日常的に家族から無能と言われて、赤の他人までに冷たい目で見られてしまう。 ところがクロエは魔法帝国に、なくてはならない女性でした。絶対に必要な隠された能力を持っていた。彼女の真の姿が明らかになると、誰もが彼女に泣いて謝罪を繰り返し助けてと悲鳴を上げ続けた。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?

ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)