オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました

木嶋隆太

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第1話

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「どうしたんだ?」

 会計を済ませようとした島崎(しまざき)治(おさむ)の前にいた美少女が、真っ青な顔でカバンを見ていた。
 息をのむほどの美少女だ。
 栗色の長い髪を揺らすようにしながら、彼女は今もカバンを漁っている。制服はきちっと着こなされ、彼女の真面目さがそこに表れていた。

 カバンをしばらく漁っていた彼女だったが、その顔が引きつっていた。
 その美しい顔には『絶望』という文字が刻み込まれていて、放っておけなかった治は声をかけていた。
 別に知り合いでも何でもない。怪しまれたらそこで会話を切り上げるそんなつもりだった。
 しかし、そんな治の心とは裏腹に、美少女は今にも泣きだしそうな顔でつぶやくように言った。

「さ、財布……忘れました……」

 彼女は絶望的な声をあげた。見知らぬ男に声をかけられ、特に警戒なく答えた彼女が持っていた伝票へと治は視線を向けた。

「……ちなみに、いくらなんだ?」
「え、えーと……その」

 彼女は戸惑い半分、恥ずかしさ半分といった様子で伝票をそろそろと治のほうに見せた。
 治はその伝票を見て、彼女がそのような反応をしたのが分かった。

「す、すげぇ食ったな……」
「す、すげぇくないです……っ! い、今時の女子高生はこのくらい普通に食べますよ……っ!」
「そ、そうなのか?」

 それは驚きの情報だった。治は改めて伝票を確認した。
 スパゲッティ、ラーメン、ハンバーグ、うどん。書かれていた炭水化物祭りに、治は小さく息を吐いた。
 一番下の金額を一瞥する。3000円あればお釣りが返ってくる程度の金額だった。

「次のお客様ー!」
 
 前の客が会計を終え、美少女の番となる。
 呼ばれた彼女が肩をびくんと跳ね上げ、体を震わせていた。
 
「わ、私犯罪者になってしまうのでしょうか……っ!!」

 治の頭には色々な対処が思いついていた。
 親を呼ぶなり、何か貴重品を置いて財布を取りに行ったり――しかし、目の前の彼女が酷く怯えていたため、治はその伝票を持ったまま、レジへと向かった。

「え?」
 
 戸惑いの声を背中に受けながら、治は二人分の会計を済ませる。
 合わせて4000円。治の分は1000にも満たないほどだった。
 レシートを受け取ったあと、治はそのまま店を出たが、その隣に先ほどの美少女が並んだ。

「あ、あの……その、ど、どどどどういうことですかぁ!?」
「俺が払っておいただけだ。別に気にするな……女子高生があんなにたくさん食うものだとは思っていなかったからな、貴重な話が聞けてよかったよ」

 治が素直に思ったことを伝えると、美少女は耳まで真っ赤にした。
 
「か、からかわないでください……っ! す、すみません払っていただいて……助かりました。その……家に帰ればお金はありますから、一緒に来てくれませんか?」
「……別に気にしなくても」
「私が気にします……っ! 見ず知らずの人にお金を出させたままではいられません!」

 ふんすー、と鼻息荒く彼女は声をあげた。
 治は本当に気にしてはいなかったが、彼女がとても気にしていたので諦めて嘆息をついた。

(……最近あんまり寝てなくてめちゃめちゃ眠いから……もう家に帰って寝たかったんだが、仕方ないか)

 治はじっと覗き込んでくる彼女に首肯を返した。

「分かった。それじゃあ、一緒に家まで行く」
「はい……お願いします」

 ほっとしたように美少女が微笑んだ。
 それから、彼女が小首をかしげた。

「そういえば、お名前を聞いていませんでした。私は飛野(ひの)咲(さき)といいます……あなたは?」
「俺は島崎(しまざき)治(おさむ)だ」
「島崎さんですね」

 それが、咲との出会いだった。
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