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4.異種間交流 生殖(?)編
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ユールの種が欲しい。
リファリールの願いに、ユールは困惑していた。
「意味わかってる?」
彼女は真剣な顔のまま頷いた。
「大切なものだってわかってます。先生に聞いたら、無闇にそういうお願いしちゃいけないって言われました。特別な相手にだけあげるものだから、って」
意味が既に食い違っている。
その上、さらに聞き捨てならないことも出てきた。
「待って。あいつに頼んだの?」
「あ、はい。初めて街に来た日に、色々お話して。先生は男の人なら、貰えませんかってお願いして、断られちゃいました。わたし、いきなり失礼でしたよね……」
「あの野郎がその流れで手出しするクズじゃなくてよかったよ」
ユールが難しい顔をしているのを見て、リファリールは肩を落とした。小柄な身体がさらにちいさくなった。
「あの……やっぱり、だめ?」
「そういう大事なこと、俺みたいなのに頼んじゃダメ。相手はもっと慎重に選んでさ。子供できたら一緒に育てるわけでしょ?」
リファリールは首を横に振った。
「種だけもらえればいいんです。それ以上の面倒はお願いしません。ルルーシアも一人でわたしを育ててくれたもの。わたしたち、お日様とお水があれば生きていけるから、森に帰ればなにも心配ないんです」
割り切りようがいっそ潔い。
しかし、はいそうですかと引き受けられる話ではなかった。
「……ごめん」
ユールがぼそりと言って、テーブルに沈黙が訪れた。
「そうですよね。困っちゃいますよね。ごめんなさい……」
「ごめん。でも焦ることないと思うよ? リファちゃんなら、絶対もっといい相手いるから」
「だって、わたし、獣のひととは全然違うもの。普通にわたしを好きになってくれて、種をくれるひとなんて、きっといない」
「そんなことないって」
少なくとも目の前の山羊は彼女が気になって仕方ない。
だが、今そう言うと話がややこしくなる。
「ユールさん、優しいですね」
無理に微笑むのが気の毒だった。
なぜ自分が振ったようになっているのか。どうしてやればいいのだろう。
答えを出せずに黙っていると、リファリールは水をひと口飲んで、グラスをそっと置いた。
「あの、じゃあ、別のお願い、聞いてもらえませんか」
「なに?」
次は叶えてやれる願いであることを期待して、ユールは促した。
あんまり難しいことじゃないです、と気を取り直したようにリファリールは言う。
「『娼館』ってお店、どこにあるか教えてください」
そう飲んだわけではないのに目眩を覚えた。
「なんでそんなこと知りたいの?」
「種をもらえないかお願いしようと思って」
「誰だそんなことリファちゃんに教えたの」
「救護室に来た傭兵さんたちがおしゃべりしてるのを聞いたんです。男の人って種が『溜まる』と、そのお店に『抜いてもらいにいく』んですよね? お店の女の人たちは、そういうお手伝いをするのがお仕事で……」
間違ってはいない。だが、リファリールはきっとわかっていない。
「わたしもそこで働かせてもらって、お客さんに、余って捨てちゃうくらいならくださいって、頼もうと思います」
ユールの脳裏に、ほぼ自動的にあるイメージが展開した。
桃色の魔灯に照らされた娼館の一室。
ほっそりと頼りない身体に、裸の方がまだ恥ずかしくない、扇情的な下着をつけたリファリールが、ベッドに座っている。
新緑の髪を下ろして、白い花から蜜の香りを漂わせる彼女は、客の男に微笑みかけて……
『お願い、わたしに種をもらえませんか?』
鼻先がかっと熱くなって、慌てて押さえた。
「ユールさん?」
「ダメ、それ絶対ダメ」
「わたしじゃ雇ってもらえない?」
雇う娼館はあるだろう。傭兵たちの評価では、リファリールの判定は「あり」と「なし」が二対八というところだ。
だが、ありと言ったものの支持は熱烈だった。リファリールのような少女を特別に喜ぶ男はいる。需要があれば供給もされる。
ユールが案内を断ろうが、リファリールは行くだろう。
話していてわかった。
種の入手について、彼女の意思は相当固い。そのために街に来たと始めから言っていたのだ。ユールには理解できなくても、成人した樹花族としては生殖のための、当然の行動なのだろう。
だからこんなに一直線に突き進んでいる。
でも。
「……俺は絶対嫌だ」
見知らぬ男が、彼女に触れるくらいなら。
「それくらいなら、俺としよう」
リファリールの顔が、ぱっと明るくなった。
「ユールさん、ありがとうございます。本当は知らないひとにお願いするの、少し怖かったの」
ベッドに腰掛けて、リファリールは上機嫌だ。
「ユールさんのお部屋、きれい」
「俺の部屋じゃなくて、今だけ借りてるんだよ」
結局、割引券を使うことになったのだから、ユールはもうラパンに何も言えない。
食事をした店に近くて、そういう宿のわりにけばけばしさがなく、内装も落ち着いている。
全部仕組まれているような気さえしはじめていた。
「そうなんだ。ふふ、わたし知らないことばっかり。このベッドも、ふわふわして面白いです」
ベッドのバネを確かめて、リファリールは揺れている。
たよりない、細い首。抱きしめたら折れてしまいそうな身体。淡い緑の無毛の肌は、どこもかしこもすべすべに見える。
そして、髪の蕾は綻びかけて、見る間に花になりそうだ。
生唾がわいてきてしょうがない。
あれだけダメだと言ってみせたくせに、こういう場所に連れ込んでしまえば、無性に触ってみたかった。
別に無理矢理するわけではない。
リファリールからの真面目な「お願い」なのだ。
行きずりの男に好き勝手にされるより、自分ができるだけ優しくするほうが、マシなはず。
言い訳を並べてみても、結局。
同族ならまだ子供くらいの体格のリファリールを、「あり」と判定している自分はクズだと思った。
「本当に、俺とでいい?」
「はい。ユールさんなら安心です」
「リファちゃんって、真っ白だよなあ」
「薄緑ですよ?」
ユールは喉奥で笑った。
なぜこんなに無邪気なのだろう。今から山羊に食べられてしまうのに。
「しよっか」
ユールがリファリールの横に座ると、角のある暗い影が彼女に被さった。男の腕が回ろうとしたとき、リファリールはぴょんとベッドから降りた。
「あ、ちょっとまって」
ぱたぱた軽い足音をたててシャワー室に向かい、洗面台からコップをとってきた。
「これにください」
肩透かしをくらって、軽く混乱しながらユールは頬をかく。
「えーっと?」
「種って、液なんですよね?」
「そこは知ってんだ?」
「絞ったりするって聞いた気がするから」
「誰そんな怖えこと言ったの」
急所なのだ。優しく扱ってほしい。
「……俺がここに出すとして、リファちゃんはどうするの?」
「飲みます」
「えっ」
「……だめですか?」
「そういうもんなの?」
「わたし、液なら髪とか肌からでも吸収できますけど、一番早くたくさん取り込めるのは口です」
桃色の空想が散っていく。かわりの提案は、それはそれで性的に新たな扉を開けてしまいそうな危うい行為な気がしたが、ユールは腹を括った。
「樹花族はそういうふうにするんだったら、わかった」
「はい。それで、どこにしまってあるんですか?」
「見て気持ちのいいもんじゃないと思うけど」
「絶対そんなことないです。見たいです。どうやるの?」
純粋に目を輝かせているのを断るのは悪い気がしたのが半分で、あとは悔し紛れだった。
ここまで悩ませて期待させておいて、リファリールが悪いとは言わないが、少々むごい。
並の男なら問答無用で押し倒しているところだ。
ユールは借り物の服を脱いでよけた。ベルトを抜いて、ズボンを下穿きごとおろす。
黒の硬い毛皮に覆われた下半身で、そこだけ赤黒い皮膚が露出している。
リファリールの思わせぶりに、もうやる気をだして、いくぶん首をもたげていた。
「ここから出るの?」
「下の袋に入ってて、触ったりとかすると先から出るよ。コップ貸して」
「はい」
リファリールは興味しんしんで顔を近づけてくる。恥ずかしげが全くないのが、逆に腰にきた。
この様子だと、触るのも咥えるのも、頼めば抵抗なくやってくれそうだ。
邪念は頭の中で留めて、ユールは自分でやりはじめた。
好きな子に見せながらの自慰で興奮している自分は、かなりまずい方向にいっていると思うが、止められない。
息がどんどん荒くなる。臍に向かって勃った先から、ぷくりと透明なものが漏れ始めた。
いけそう、さっさと終わらせよう……そう思った矢先。
いつのまにか、なにやら心配げな表情を浮かべたリファリールが、それに手を添えた。
「手伝いますね」
とたん、下腹がぶわっと熱くなった。
ユールは天を仰いで呻く。意識が飛んで――花畑が見えた。
白い花がどこまでも咲いていて、リファリールが満面の笑みで手を振って、「種、ありがとうございまーす」と……。
気がつけば、リファリールがユールの脚の間に顔を埋めていた。
指ですくって舐めて、先端を口を含んで、吸う。リファリールの口の中は冷たかった。
ユールは再び襲ってきた凄まじい快感を、シーツを掴んで耐えた。脚が暴れそうなのを抑える。自分が蹴飛ばしたりしてしまったら、リファリールは怪我ではすまない。
残った分も吸い出して、腹に飛び散った一滴まで熱心に舐めとって、彼女はようやく顔を上げた。
「すごい、いっぱい出て、コップじゃ上手く受けられなかったけど。ちゃんといただきました。ありがとうございます」
「リファちゃん、何した……?」
ユールは身体を起こす元気もなく訊く。
一滴残らず絞られていた。
「腫れてて辛そうだったから、治癒をちょっとだけかけました」
活性を上げる術式だ。そういう時に使うとこう作用するとは知らなかったし、身をもって知りたくもなかった。
「あれダメ。あれ癖になったら、俺、男として終わる……!」
ひっくり返ったまま涙目になって訴えるユールに、リファリールがしゅんとした。
「ごめんなさい」
見れば、彼女の髪は白濁でべたべただ。今度は一気に罪悪感がわいた。彼女なりによかれと思ってやったのだ。
過激だが天国も見せてもらった。
「いや、いいよ。それより、すごいことになってるから、シャワー浴びておいでよ」
「もったいないです。置いておけば吸収しますから」
「お願いだから流して。俺そこまで外道な趣味に目覚めたくない」
首を傾げながらも、リファリールはシャワー室に向かってくれた。
指一本動かすのも億劫な気分だったが、なんとか下着を穿いた。
しっとりと水気を纏ったリファリールが、ユールの枕元に戻ってきた。
「ユールさん、大丈夫ですか?」
「賢者タイムの最強版だよこれ……まじで眠い」
それに、急に空腹だった。
見透かしたように、リファリールは髪の花を惜しげもなく摘み取って、ユールの鼻先に差し出した。
「寝ちゃう前に、よかったら……。お礼です」
ユールはやはり、抗えなかった。
無言で、リファリールの手から直に花を食べた。苦くて甘くて、身体中が切ない。
リファリールはそんな彼をニコニコして見つめている。
ユールが、子供の頃にきいたお伽噺。
森の奥に住んでいる妖精の花は、食べちゃいけない。
食べたら最後、心を捕らわれて、二度と帰ってこられない。
「ふふ、おやすみなさい、ユールさん」
リファリールの楽しげな声を聞きながら、ユールは眠りに落ちていく。
――ああ、ばあちゃん。本当だったよ。
翌日。
「どーだった?」
「割引券使った?」
「素人童貞卒業?」
顔を合わせるなりかしましい三羽烏に、借りた服を返しつつ、嘘をつけないユールは答えた。
「……してない、あれは違う」
「うんうん、お兄さん今晩火龍亭で詳しく聞かせてもらおう」
「りふぁチャン呼ボウゼ!」
「リファちゃんはやめてくれ、頼むから」
ユールの沈んだ声音に、彼らはひととき黙った。
「あの子、お前らのノリで囃されたら驚くだろうし。応援してくれんのはありがたいけど、そっとしてくんねえかな。……俺、大事にしてやりたいんだよ」
「真面目だ」
「本気ダネ!」
「いいぞユール、お前はゆっくりだが着実に、男の階段を登っている。俺たち先輩として、引き続き温かく監視してやろう」
「だから愉快なポーズ決めてんじゃねえよ」
悩める黒山羊は、ようやく笑わせてもらったのだった。
リファリールの願いに、ユールは困惑していた。
「意味わかってる?」
彼女は真剣な顔のまま頷いた。
「大切なものだってわかってます。先生に聞いたら、無闇にそういうお願いしちゃいけないって言われました。特別な相手にだけあげるものだから、って」
意味が既に食い違っている。
その上、さらに聞き捨てならないことも出てきた。
「待って。あいつに頼んだの?」
「あ、はい。初めて街に来た日に、色々お話して。先生は男の人なら、貰えませんかってお願いして、断られちゃいました。わたし、いきなり失礼でしたよね……」
「あの野郎がその流れで手出しするクズじゃなくてよかったよ」
ユールが難しい顔をしているのを見て、リファリールは肩を落とした。小柄な身体がさらにちいさくなった。
「あの……やっぱり、だめ?」
「そういう大事なこと、俺みたいなのに頼んじゃダメ。相手はもっと慎重に選んでさ。子供できたら一緒に育てるわけでしょ?」
リファリールは首を横に振った。
「種だけもらえればいいんです。それ以上の面倒はお願いしません。ルルーシアも一人でわたしを育ててくれたもの。わたしたち、お日様とお水があれば生きていけるから、森に帰ればなにも心配ないんです」
割り切りようがいっそ潔い。
しかし、はいそうですかと引き受けられる話ではなかった。
「……ごめん」
ユールがぼそりと言って、テーブルに沈黙が訪れた。
「そうですよね。困っちゃいますよね。ごめんなさい……」
「ごめん。でも焦ることないと思うよ? リファちゃんなら、絶対もっといい相手いるから」
「だって、わたし、獣のひととは全然違うもの。普通にわたしを好きになってくれて、種をくれるひとなんて、きっといない」
「そんなことないって」
少なくとも目の前の山羊は彼女が気になって仕方ない。
だが、今そう言うと話がややこしくなる。
「ユールさん、優しいですね」
無理に微笑むのが気の毒だった。
なぜ自分が振ったようになっているのか。どうしてやればいいのだろう。
答えを出せずに黙っていると、リファリールは水をひと口飲んで、グラスをそっと置いた。
「あの、じゃあ、別のお願い、聞いてもらえませんか」
「なに?」
次は叶えてやれる願いであることを期待して、ユールは促した。
あんまり難しいことじゃないです、と気を取り直したようにリファリールは言う。
「『娼館』ってお店、どこにあるか教えてください」
そう飲んだわけではないのに目眩を覚えた。
「なんでそんなこと知りたいの?」
「種をもらえないかお願いしようと思って」
「誰だそんなことリファちゃんに教えたの」
「救護室に来た傭兵さんたちがおしゃべりしてるのを聞いたんです。男の人って種が『溜まる』と、そのお店に『抜いてもらいにいく』んですよね? お店の女の人たちは、そういうお手伝いをするのがお仕事で……」
間違ってはいない。だが、リファリールはきっとわかっていない。
「わたしもそこで働かせてもらって、お客さんに、余って捨てちゃうくらいならくださいって、頼もうと思います」
ユールの脳裏に、ほぼ自動的にあるイメージが展開した。
桃色の魔灯に照らされた娼館の一室。
ほっそりと頼りない身体に、裸の方がまだ恥ずかしくない、扇情的な下着をつけたリファリールが、ベッドに座っている。
新緑の髪を下ろして、白い花から蜜の香りを漂わせる彼女は、客の男に微笑みかけて……
『お願い、わたしに種をもらえませんか?』
鼻先がかっと熱くなって、慌てて押さえた。
「ユールさん?」
「ダメ、それ絶対ダメ」
「わたしじゃ雇ってもらえない?」
雇う娼館はあるだろう。傭兵たちの評価では、リファリールの判定は「あり」と「なし」が二対八というところだ。
だが、ありと言ったものの支持は熱烈だった。リファリールのような少女を特別に喜ぶ男はいる。需要があれば供給もされる。
ユールが案内を断ろうが、リファリールは行くだろう。
話していてわかった。
種の入手について、彼女の意思は相当固い。そのために街に来たと始めから言っていたのだ。ユールには理解できなくても、成人した樹花族としては生殖のための、当然の行動なのだろう。
だからこんなに一直線に突き進んでいる。
でも。
「……俺は絶対嫌だ」
見知らぬ男が、彼女に触れるくらいなら。
「それくらいなら、俺としよう」
リファリールの顔が、ぱっと明るくなった。
「ユールさん、ありがとうございます。本当は知らないひとにお願いするの、少し怖かったの」
ベッドに腰掛けて、リファリールは上機嫌だ。
「ユールさんのお部屋、きれい」
「俺の部屋じゃなくて、今だけ借りてるんだよ」
結局、割引券を使うことになったのだから、ユールはもうラパンに何も言えない。
食事をした店に近くて、そういう宿のわりにけばけばしさがなく、内装も落ち着いている。
全部仕組まれているような気さえしはじめていた。
「そうなんだ。ふふ、わたし知らないことばっかり。このベッドも、ふわふわして面白いです」
ベッドのバネを確かめて、リファリールは揺れている。
たよりない、細い首。抱きしめたら折れてしまいそうな身体。淡い緑の無毛の肌は、どこもかしこもすべすべに見える。
そして、髪の蕾は綻びかけて、見る間に花になりそうだ。
生唾がわいてきてしょうがない。
あれだけダメだと言ってみせたくせに、こういう場所に連れ込んでしまえば、無性に触ってみたかった。
別に無理矢理するわけではない。
リファリールからの真面目な「お願い」なのだ。
行きずりの男に好き勝手にされるより、自分ができるだけ優しくするほうが、マシなはず。
言い訳を並べてみても、結局。
同族ならまだ子供くらいの体格のリファリールを、「あり」と判定している自分はクズだと思った。
「本当に、俺とでいい?」
「はい。ユールさんなら安心です」
「リファちゃんって、真っ白だよなあ」
「薄緑ですよ?」
ユールは喉奥で笑った。
なぜこんなに無邪気なのだろう。今から山羊に食べられてしまうのに。
「しよっか」
ユールがリファリールの横に座ると、角のある暗い影が彼女に被さった。男の腕が回ろうとしたとき、リファリールはぴょんとベッドから降りた。
「あ、ちょっとまって」
ぱたぱた軽い足音をたててシャワー室に向かい、洗面台からコップをとってきた。
「これにください」
肩透かしをくらって、軽く混乱しながらユールは頬をかく。
「えーっと?」
「種って、液なんですよね?」
「そこは知ってんだ?」
「絞ったりするって聞いた気がするから」
「誰そんな怖えこと言ったの」
急所なのだ。優しく扱ってほしい。
「……俺がここに出すとして、リファちゃんはどうするの?」
「飲みます」
「えっ」
「……だめですか?」
「そういうもんなの?」
「わたし、液なら髪とか肌からでも吸収できますけど、一番早くたくさん取り込めるのは口です」
桃色の空想が散っていく。かわりの提案は、それはそれで性的に新たな扉を開けてしまいそうな危うい行為な気がしたが、ユールは腹を括った。
「樹花族はそういうふうにするんだったら、わかった」
「はい。それで、どこにしまってあるんですか?」
「見て気持ちのいいもんじゃないと思うけど」
「絶対そんなことないです。見たいです。どうやるの?」
純粋に目を輝かせているのを断るのは悪い気がしたのが半分で、あとは悔し紛れだった。
ここまで悩ませて期待させておいて、リファリールが悪いとは言わないが、少々むごい。
並の男なら問答無用で押し倒しているところだ。
ユールは借り物の服を脱いでよけた。ベルトを抜いて、ズボンを下穿きごとおろす。
黒の硬い毛皮に覆われた下半身で、そこだけ赤黒い皮膚が露出している。
リファリールの思わせぶりに、もうやる気をだして、いくぶん首をもたげていた。
「ここから出るの?」
「下の袋に入ってて、触ったりとかすると先から出るよ。コップ貸して」
「はい」
リファリールは興味しんしんで顔を近づけてくる。恥ずかしげが全くないのが、逆に腰にきた。
この様子だと、触るのも咥えるのも、頼めば抵抗なくやってくれそうだ。
邪念は頭の中で留めて、ユールは自分でやりはじめた。
好きな子に見せながらの自慰で興奮している自分は、かなりまずい方向にいっていると思うが、止められない。
息がどんどん荒くなる。臍に向かって勃った先から、ぷくりと透明なものが漏れ始めた。
いけそう、さっさと終わらせよう……そう思った矢先。
いつのまにか、なにやら心配げな表情を浮かべたリファリールが、それに手を添えた。
「手伝いますね」
とたん、下腹がぶわっと熱くなった。
ユールは天を仰いで呻く。意識が飛んで――花畑が見えた。
白い花がどこまでも咲いていて、リファリールが満面の笑みで手を振って、「種、ありがとうございまーす」と……。
気がつけば、リファリールがユールの脚の間に顔を埋めていた。
指ですくって舐めて、先端を口を含んで、吸う。リファリールの口の中は冷たかった。
ユールは再び襲ってきた凄まじい快感を、シーツを掴んで耐えた。脚が暴れそうなのを抑える。自分が蹴飛ばしたりしてしまったら、リファリールは怪我ではすまない。
残った分も吸い出して、腹に飛び散った一滴まで熱心に舐めとって、彼女はようやく顔を上げた。
「すごい、いっぱい出て、コップじゃ上手く受けられなかったけど。ちゃんといただきました。ありがとうございます」
「リファちゃん、何した……?」
ユールは身体を起こす元気もなく訊く。
一滴残らず絞られていた。
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活性を上げる術式だ。そういう時に使うとこう作用するとは知らなかったし、身をもって知りたくもなかった。
「あれダメ。あれ癖になったら、俺、男として終わる……!」
ひっくり返ったまま涙目になって訴えるユールに、リファリールがしゅんとした。
「ごめんなさい」
見れば、彼女の髪は白濁でべたべただ。今度は一気に罪悪感がわいた。彼女なりによかれと思ってやったのだ。
過激だが天国も見せてもらった。
「いや、いいよ。それより、すごいことになってるから、シャワー浴びておいでよ」
「もったいないです。置いておけば吸収しますから」
「お願いだから流して。俺そこまで外道な趣味に目覚めたくない」
首を傾げながらも、リファリールはシャワー室に向かってくれた。
指一本動かすのも億劫な気分だったが、なんとか下着を穿いた。
しっとりと水気を纏ったリファリールが、ユールの枕元に戻ってきた。
「ユールさん、大丈夫ですか?」
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それに、急に空腹だった。
見透かしたように、リファリールは髪の花を惜しげもなく摘み取って、ユールの鼻先に差し出した。
「寝ちゃう前に、よかったら……。お礼です」
ユールはやはり、抗えなかった。
無言で、リファリールの手から直に花を食べた。苦くて甘くて、身体中が切ない。
リファリールはそんな彼をニコニコして見つめている。
ユールが、子供の頃にきいたお伽噺。
森の奥に住んでいる妖精の花は、食べちゃいけない。
食べたら最後、心を捕らわれて、二度と帰ってこられない。
「ふふ、おやすみなさい、ユールさん」
リファリールの楽しげな声を聞きながら、ユールは眠りに落ちていく。
――ああ、ばあちゃん。本当だったよ。
翌日。
「どーだった?」
「割引券使った?」
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顔を合わせるなりかしましい三羽烏に、借りた服を返しつつ、嘘をつけないユールは答えた。
「……してない、あれは違う」
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「りふぁチャン呼ボウゼ!」
「リファちゃんはやめてくれ、頼むから」
ユールの沈んだ声音に、彼らはひととき黙った。
「あの子、お前らのノリで囃されたら驚くだろうし。応援してくれんのはありがたいけど、そっとしてくんねえかな。……俺、大事にしてやりたいんだよ」
「真面目だ」
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名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
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