神様な俺、住み込み勇者に口説かれてます。

兎騎かなで

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8 親友は忘れた頃にやってくる

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 訪れは唐突だった。俺はふと見知った気配が領域内に侵入したのを察知し、本から顔を上げた。

「お? まだ生きてたのかあいつ……って、カリオス?」

 カリオスが俺の友達に決死の特攻を仕掛けようとしている。おいおい危ないぞ? 大怪我なら治せるが死んじゃったら治せないんだからな?

「仕方ねえなあ、行くか」

 今日は城の図書室で読書三昧の予定だったんだがしょうがない。俺はカリオスのもとに目掛けて飛んだ。

 飛んだ先では人の背丈のゆうに十倍はある漆黒のドラゴンが、剣をたずさえたカリオスに向かって、今まさにブレスを放とうとしていた。

「待て待て、ストップ、一旦中止!」

 いかに鍛えられたカリオスといえども、ブレスを数秒も浴びれば消し炭になることは避けられないだろう。
 止めに入ると、爬虫類特有の縦筋が入った赤い瞳が、ギョロリと俺の姿を射抜く。重低音が頭上から降ってきた。

「何故止めるツカサよ。この虫ケラは我に敵意を持って攻撃を仕掛けてきたのだぞ」
「落ち着けってダークレイ。こいつは俺がお前と友達なのを知らなかっただけだ。カリオス、このドラゴンは俺の友達だから手を出さないでくれ」

 カリオスは緊迫した表情でダークレイを睨んでいたが、ダークレイが興味を失ったかのように視線を逸らしフンと鼻息を漏らすと、やっと剣を腰にしまった。
 そして信じられないとでも言いたげに俺を見つめる。

「ドラゴンと、友達……やはり貴方、魔王では?」
「だーかーらー何回言わせるんだよ、違うって」

 俺は神様だって言ってるだろー?
 カリオスは腕を組んで考えこんでいる。

「古今東西ドラゴンを従える存在は魔王と決まっているのですが」
「じゃあ今度からその常識に、神様もドラゴンを従えることがあるって追加しといて」

 正確には従えてるわけじゃねえけど。ダークレイはそういう細かいこと気にしねえ性格だし、カリオスが納得できるならもうそれでいいや。

「なるほど……ツカサはこのドラゴンよりも強いので、力が至上と考えるドラゴンの友人となれたのでしょうか。僕もこのドラゴンより強ければツカサは惚れてくれますか?」

 カリオスの物騒な発言に、ダークレイはピクリと反応する。

「ツカサ、この虫ケラは潰してしまっても構わんな?」
「ダメだってば、やめろダークレイ。カリオスも。俺は友達同士が戦って傷つくところは見たくないよ。だからやめてくれ」
「ツカサがそう言うのであれば」

 カリオスはやっと矛先を納めてくれた。

「ですが少し残念ですね、久しぶりに命の危険を感じて興奮したのですが」
「変態かよ」

 俺が半歩後ずさると、心外だとでも言いたげにカリオスは腕を腰に当てた。

「こんな風になったのは魔大陸に飛ばされたせいですよ。命の危機に立ち向かわないと即座に死ぬ環境だったもので、それに適応したらこうなりました」
「嫌な適応の仕方したんだな」
「つまり貴方のせいです、責任とって恋に落ちてください」
「いやその流れおかしくないか? ほんとにその性癖俺のせい? お前自身がもともと持ってた性質って可能性はないの?」

 俺とカリオスのやりとりに焦れたのか、ダークレイが大きな欠伸をする。
 グオオオオォォォ……と空の果てまで響き渡りそうな大きな欠伸を披露した彼は、ブルリと身を震わせると光を発しながら人の姿をとった。

 膝裏まである真っ直ぐな黒髪に、血のような赤目をした世にも眩しい美形だ。カリオスが男らしい美形だとしたら、ダークレイは中世的な美人といった感じ。
 線は細いものの背は高く、長身のカリオスと張るくらいに背丈がある。

 赤く陽光を反射する縦の虹彩をすがめ、ダークレイはうっそりと笑った。

「久しいなツカサ。まだその貧相な人の姿を好きこのんでとっているのか」
「貧相で悪かったな。いいんだよ、俺にとっては慣れ親しんだ体でいるのが一番気楽なの」

 人の姿をとることで窮屈な思いをしているらしいダークレイは、時々ドラゴンの姿をとることを勧めてくる。

 いやまあなれるけどさ? ドラゴン。なったこともあるけど、細かい動作ができなくて不便だし、尻尾の感覚が違和感マシマシだし、他のドラゴンに目をつけられて、やれナワバリがどうのこうのと面倒くさいことになる。だから一度変体してからは二度とやっていない。

 ダークレイの明け透けな物言いに、カリオスは剣呑な雰囲気を隠さない。

「このドラゴン、今ツカサに向かって貧相と言いましたか……? 訂正してください、ツカサはこんなにも美しいのに」
「お前、今まで耳が腐るほど褒めてきてたのって本気だったの? もしかして目悪い? なおしてやろうか?」
「いえ、視力はよい方です」
「そんじゃ俺みたいな顔の薄い貧相な男が好みってこと? 趣味悪いなあ」

 カリオスは憮然とした様子で腕を組んだ。

「訂正してくださいツカサ。貴方は無垢な少年のような瑞々しさに溢れている、麗しい存在です」
「誰よそれ……とにかく一度城に戻ろう。ダークレイもせっかく寄ってくれたんだからなにかご馳走するよ」
「ふむ、相伴にあずかろう」

 ダークレイは尊大な様子で片手を腰に当てた。みんなまとめて食堂に飛ばしてやる。
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