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30、三男と三人と一匹の夕食
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日付変わっちゃいましたね(^^;)
遅くなってすみません<(_ _)>
ーーーーーーーー
俺とレオンさんが料理を作り終えた少し後になって、『木漏れ日』での夕食の提供が始まった。
夕食はパンとクリームシチュー、オムレツ、そしてサラダだ。
サラダのドレッシングはレオンさん特製のやつで、味見をさせてもらったのだが、さっぱりした味で野菜の味を最大限活かすように出来ていた。
端的に言えば美味しかった。
野菜が美味しくないとこのドレッシングは生きないだろうから、それだけレオンさんは日々の食材に対して信頼しているのだろう。
いつもはハインツさんとリンダさんの野菜じゃないらしいけど、それでも十分美味しいそうだ。
もちろん二人の野菜には劣るので、お客さんはハインツさんとリンダさんの野菜が出る時はいつも以上に食べっぷりがいいとか。
俺は厨房の手伝いで見れないけど、いつかお客さんとして来た時に周りの人の反応も見てみたいな。
というか、そう思うと今日はハインツさんとリンダさんの野菜も、ダンさんの牛乳も卵もお肉も使われてる料理だらけだ。
なんてラッキーディだろうか。
たくさんの人がこの料理を食べて幸せになってくれるといいんだけど。
「…そろそろ、だ」
「はい!」
レオンさんの一言に、浮ついていた意識を戻した。
そしてお客さんの対応をしていたアシル君がやって来て、昼間のように注文を伝えてくれる。
俺とレオンさんはそれを聞いて動き始め、調理台に次々と用意していく。
アシル君はそれを持って表に出ていき、入れ替わるようにナンシーさんが現れ、新たな注文を伝えながら料理を運んでいく。
俺とレオンさんの手も止まらないけど、お客さんも止まらない。
待っている人はいないけど、誰かが食べ終わって席を離れたら、すぐにその席がうまってしまうって感じだ。
お客さんが食べてる間は足りなくなった分を新たに作ったり、食器を洗ったりして、お客さんが入れ替わったらまた提供してって感じで進んでいく。
マリは邪魔にならないようにと自分で判断して調理台の上で大人しくしてたり、時々移動したりしてる。
俺は忙しい中でも時々マリを見てるので、その様子を見てうちの子賢いと親バカのように思っていた。
もちろんその間も手は止めてないよ。
普段レオンさんは一人でこれをさばいてるんだよな。すごいな。
俺だったら多分次に何をするべきかっていうのが分からなくなってたと思う。
俺は普段バイトをしているわけじゃないし、家での家事も忙しいって感じじゃないからな。
今後の為にも、この忙しさを今回経験させてもらえて良かったのかもしれない。
「カスミお兄さん、これもお願い」
「分かった」
のんびり考えてる暇なんてなかった。
アシル君が食器を下げてきてくれたので、すかさず洗って水切りの上に並べて置いておく。
これなら使う時にはちょうど水が切れてるし、もし残っていてもサッと拭くだけで済むから便利だ。
次の注文ももうすぐ来るだろうから、前に洗っておいたお皿を少し拭いておこう。
パン用とオムレツ用のお皿は平たいから水が切れてたけど、シチュー用とサラダ用の深めのお皿は少し水が残っていたのでサッと拭いた。
掃除スキルのおかげか、俺が拭いたらそれだけで水もなくなり綺麗になる。
俺がお皿の綺麗さによしっと納得したとき、ナンシーさんが次の注文を持ってやってきた。
俺はレオンさんにパン用とオムレツ用のお皿を渡して、自分もシチュー用とサラダ用のお皿を持って準備する。
シチューをくるりと混ぜてからお皿に盛って、サラダはレタス、きゅうり、トマトの順でのせて、ドレッシングをかける。
レオンさんは注文分のパンを平たいお皿にのせて、焼いてあったオムレツをササッとフライパンで温めてからオムレツ用のお皿にのせて、ケチャップをベースにして作られたソースをかける。
そしてこれらを調理台に置いたら、アシル君とナンシーさんが持って行ってくれた。
アシル君とナンシーさんも、二人で表をまわすのは大変だよね。
今度はヒラハも引っ張ってきて手伝おうかな。
ヒラハはヒラハで忙しいかもだけど、食いしん坊なあいつのことだから、この宿屋の美味しい料理を食べれば手伝ってくれるかもしれないしな。
別に餌で釣ってるわけじゃない。ご褒美ってやつだ。
そんなことを考えながらも準備は止まらず、調理台に料理がのっては出ていくを何度も繰り返した。
そして全員に疲れが溜まってきた時、最後のお客さんがにこやかに帰って行ったことで、本日の夕飯の提供は終わったのだ。
「お疲れ様!みんなよく頑張ったわね」
「…おつかれ」
「おつかれさま!お母さん、お父さん、カスミお兄さん!」
「お疲れ様です。無事に終わって何よりです」
ナンシーさんとアシル君が表を、俺とレオンさんが厨房を片付けて、お互いに終えたところで全員集まり、それぞれ声をかける。
「いつもよりお客さんが多かったけど、何とかなって良かったわ」
「…ああ」
どうやら、今日の人数は多かったようだ。
個人的にはこの宿屋の素晴らしさを知ってもらいたいから、お客さんが増えるのは嬉しい。
ただ俺も手伝いはこれで終わりだし、今後お客さんが増えたままなら従業員を増やすとかも必要になるかもな。
まぁ、そこはナンシーさんとレオンさん、そしてアシル君が決めていく問題だから、俺は俺で定期的に手伝いに来たりしよう。
それで少しでも楽になってくれるのなら、俺としても嬉しいしね。
そんなことを考えてたら、ナンシーさんがパンっと手を打って言った。
「さ!頑張ったから夕食にしましょう!もうお腹がすいちゃったわ。もちろんカスミさんもね」
「え、お昼も頂いたのに…」
「いいの!決定よ!」
「…ありがとうございます。お世話になります」
「ええ。さ!準備よ!おなかと背中がくっつく前に終わらせないとね!」
「僕も手伝うからね!さっきも今もお腹がなりそうだもん。早く食べたいよ」
「…準備する」
「あ、手伝います」
お昼を食べたところの席をナンシーさんとアシル君が準備するのを見てから、俺は厨房に向かうレオンさんを追って行った。
レオンさんがオムレツを焼き始めたので、俺はシチューを温めなおし、サラダの準備をする。
今回はサラダは好きな量を食べてもらう形にしたいので、大皿にレタスときゅうりとトマト並べていく。
ドレッシングもかけないで、そばに置いておくことにしよう。
マリはそのままの方がいいかもだしね。
シチューはくつくつと煮込んでくるっと混ぜ合わせる。
温めるだけなんだけど、放置してたら焦げちゃうかもしれないしね。
シチューから白い湯気が溢れてきたのを確認してから火を止めて、俺は四つのお皿にシチューを盛っていく。
サラダの取り皿も用意したし、あとはあっちに持っていくだけだな。
レオンさんもオムレツが出来上がったみたいだし、パンはバスケットにいれてあるからそれを持っていけば準備完了だ。
飲み物は水が果実水だけど、お昼と同じなら果実水でいいのかな。
「飲み物ってどうします?」
「…果実水と果実酒を持っていこう」
「果実酒、ですか?」
「…売りはしてないが、ある」
名前からしてお酒みたいだし、俺は飲めないな。
こういう時、早く二十歳を越えたいなと思う。
というか、ふと思ったんだが発酵スキルでお酒作れるんじゃないかな。
俺は飲めないから味の確認とか出来ないけど、作ることは出来るかもしれない。
もし作れたらレオンさんに味見を頼んでもいいかな。
まぁ作れるかも分からないんだけど、目標の一つとして覚えておこう。
「…果実酒は俺がだす。果実水を頼む」
「わかりました!」
俺がお酒について考えてたら、レオンさんが続けてそう言ったので思考を切り替える。
果実水は冷蔵庫に入ってたから、取り出して、コップは四つ持っていく。
もちろん途中でマリを肩に乗せてからだけどね。
表の準備を終えたナンシーさんとアシル君も手伝ってくれて、料理も全て机に並べられていた。
俺が果実水を持っていった後に、レオンさんが果実酒を持ってきて、自分とナンシーさんのコップに注いだ。
俺は自分とアシル君のコップに果実水を注ぎ、取り皿を分けてから席に座った。
ナンシーさんは、俺がマリを肩から降ろして机に置いたのを確認してから声を出した。
「さっきも言ったけど、一日お疲れ様でした。カスミさんも、初めてだったのにいろいろ手伝ってくれてありがとうね」
「こちらこそ、沢山のことができて楽しかったです。ぜひまた手伝わせてくださいね」
「ぴっぴきゅ!」
俺の言葉に、マリも同意するように鳴いてくれる。
確かに大変だったけど勉強にもなったし、なにより楽しかった。
この宿屋に立ち寄った今日の自分を褒めたいくらいだ。
「…手伝い、お疲れ。助かった」
「俺の方こそ、いろいろと教えてくださってありがとうございました」
「カスミお兄さん、また一緒にお掃除しようね!」
「うん。もちろんだよ、アシル君」
ナンシーさんもレオンさんもアシル君も、次々と惜しむように話しかけてくれるのが嬉しい。
やっぱり、この宿屋に来れてよかったな。
「さて!積もる話もあるだろうけど、それはまた後ね。今は二人の美味しいご飯を食べましょう」
「うん!」
「あなた、よろしくね」
「…いただきます」
「いただきます」
「いただきま~す」
「いただきます!」
「きゅぴぴきゅぴ!」
少しだけしんみりとした空気が漂っていたのを、いつもの様にナンシーさんが場をまとめてくれた。
ご飯は楽しく食べたいから、ナンシーさんの行動はすごくありがたい。
そしてレオンさんの掛け声と共に、食事が始まった。
俺は暖かいうちにと思ってレオンさんのオムレツを口に含む。
ふわっと柔らかい卵を口に入れた途端、蕩けるようになくなっていった感覚に驚いた。
卵のまろやかな味とケチャップベースのソースの酸味はしっかりと口に残っているのに、オムレツ自体はすっかりなくなってしまったのだ。
ふわっしゅわって感じだった。
俺はそのオムレツの感動のままシチューを口に入れる。
自分で作ったからあまり感動はなかったけど、それでも牛乳の優しい味とバターのコク、そして具材たちの旨みが綺麗に合わさり、とても美味しく出来たんじゃないかなとは思う。
レオンさんの作ったパンを浸して食べれば、口の中でパンがじゅわっとシチューの旨みを溢れさせながら蕩けていき、パンの甘さとシチューの味が絡み合ってとても美味しかった。
サラダはそのまま食べてももちろん美味しいのだが、レオンさん特製のドレッシングをかけるとその美味しさは何倍にも膨れ上がった。
野菜の新鮮な味を活かすように作られたドレッシングは、この野菜たちの為にあるようなものだと思ったほどだ。
マリにも俺が食べる途中途中であげていたが、その度に花を咲かせながら顔を蕩けさせて美味しそうな声をあげていた。
今はお気に入りのトマトを齧りつつ吸いつつ幸せそうだ。
「美味しいな、マリ」
「きゅぅう~」
マリのために貸してもらった小皿にトマトをのせながら器用に食べるマリは、幸せそうに鳴いてまた食べ始めた。
今度浅漬けとか和え物とか作ってみようかな。
お肉も好きみたいだし、ロールキャベツとかもいいかもな。
マリが喜びそうなレシピはたくさんあるから、少しずつ試していこう。
「マリちゃんはお野菜が好きなのね。私と同じだわ」
「僕も好きだよ。あ、でもオムレツも好きだしシチューも好き!」
「あら、私も好きよ。果実酒を飲みながらご飯を食べるのが毎日の幸せだもの。ご飯が美味しいからなおさらね」
「…そうだな」
そして色んなものを作って、ナンシーさんレオンさん、アシル君にも食べてもおう。
美味しいかなんて分からないけど、上手く出来たら、きっと笑顔になってくれるはずだから。
こんなに幸せで優しい家族にお邪魔させてもらったのだから、そのお礼くらいはさせて欲しいものだ。
きっと言ったら遠慮されるから、今はまだ秘密だけどね。
お手伝い最後の夕食の時、俺はマリとナンシーさん、レオンさん、アシル君の幸せそうな顔を見ながら、そんなことを考えていた。
そしてそんな彼らに負けないくらいの幸せを感じながら、食事を続けるのだった。
遅くなってすみません<(_ _)>
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俺とレオンさんが料理を作り終えた少し後になって、『木漏れ日』での夕食の提供が始まった。
夕食はパンとクリームシチュー、オムレツ、そしてサラダだ。
サラダのドレッシングはレオンさん特製のやつで、味見をさせてもらったのだが、さっぱりした味で野菜の味を最大限活かすように出来ていた。
端的に言えば美味しかった。
野菜が美味しくないとこのドレッシングは生きないだろうから、それだけレオンさんは日々の食材に対して信頼しているのだろう。
いつもはハインツさんとリンダさんの野菜じゃないらしいけど、それでも十分美味しいそうだ。
もちろん二人の野菜には劣るので、お客さんはハインツさんとリンダさんの野菜が出る時はいつも以上に食べっぷりがいいとか。
俺は厨房の手伝いで見れないけど、いつかお客さんとして来た時に周りの人の反応も見てみたいな。
というか、そう思うと今日はハインツさんとリンダさんの野菜も、ダンさんの牛乳も卵もお肉も使われてる料理だらけだ。
なんてラッキーディだろうか。
たくさんの人がこの料理を食べて幸せになってくれるといいんだけど。
「…そろそろ、だ」
「はい!」
レオンさんの一言に、浮ついていた意識を戻した。
そしてお客さんの対応をしていたアシル君がやって来て、昼間のように注文を伝えてくれる。
俺とレオンさんはそれを聞いて動き始め、調理台に次々と用意していく。
アシル君はそれを持って表に出ていき、入れ替わるようにナンシーさんが現れ、新たな注文を伝えながら料理を運んでいく。
俺とレオンさんの手も止まらないけど、お客さんも止まらない。
待っている人はいないけど、誰かが食べ終わって席を離れたら、すぐにその席がうまってしまうって感じだ。
お客さんが食べてる間は足りなくなった分を新たに作ったり、食器を洗ったりして、お客さんが入れ替わったらまた提供してって感じで進んでいく。
マリは邪魔にならないようにと自分で判断して調理台の上で大人しくしてたり、時々移動したりしてる。
俺は忙しい中でも時々マリを見てるので、その様子を見てうちの子賢いと親バカのように思っていた。
もちろんその間も手は止めてないよ。
普段レオンさんは一人でこれをさばいてるんだよな。すごいな。
俺だったら多分次に何をするべきかっていうのが分からなくなってたと思う。
俺は普段バイトをしているわけじゃないし、家での家事も忙しいって感じじゃないからな。
今後の為にも、この忙しさを今回経験させてもらえて良かったのかもしれない。
「カスミお兄さん、これもお願い」
「分かった」
のんびり考えてる暇なんてなかった。
アシル君が食器を下げてきてくれたので、すかさず洗って水切りの上に並べて置いておく。
これなら使う時にはちょうど水が切れてるし、もし残っていてもサッと拭くだけで済むから便利だ。
次の注文ももうすぐ来るだろうから、前に洗っておいたお皿を少し拭いておこう。
パン用とオムレツ用のお皿は平たいから水が切れてたけど、シチュー用とサラダ用の深めのお皿は少し水が残っていたのでサッと拭いた。
掃除スキルのおかげか、俺が拭いたらそれだけで水もなくなり綺麗になる。
俺がお皿の綺麗さによしっと納得したとき、ナンシーさんが次の注文を持ってやってきた。
俺はレオンさんにパン用とオムレツ用のお皿を渡して、自分もシチュー用とサラダ用のお皿を持って準備する。
シチューをくるりと混ぜてからお皿に盛って、サラダはレタス、きゅうり、トマトの順でのせて、ドレッシングをかける。
レオンさんは注文分のパンを平たいお皿にのせて、焼いてあったオムレツをササッとフライパンで温めてからオムレツ用のお皿にのせて、ケチャップをベースにして作られたソースをかける。
そしてこれらを調理台に置いたら、アシル君とナンシーさんが持って行ってくれた。
アシル君とナンシーさんも、二人で表をまわすのは大変だよね。
今度はヒラハも引っ張ってきて手伝おうかな。
ヒラハはヒラハで忙しいかもだけど、食いしん坊なあいつのことだから、この宿屋の美味しい料理を食べれば手伝ってくれるかもしれないしな。
別に餌で釣ってるわけじゃない。ご褒美ってやつだ。
そんなことを考えながらも準備は止まらず、調理台に料理がのっては出ていくを何度も繰り返した。
そして全員に疲れが溜まってきた時、最後のお客さんがにこやかに帰って行ったことで、本日の夕飯の提供は終わったのだ。
「お疲れ様!みんなよく頑張ったわね」
「…おつかれ」
「おつかれさま!お母さん、お父さん、カスミお兄さん!」
「お疲れ様です。無事に終わって何よりです」
ナンシーさんとアシル君が表を、俺とレオンさんが厨房を片付けて、お互いに終えたところで全員集まり、それぞれ声をかける。
「いつもよりお客さんが多かったけど、何とかなって良かったわ」
「…ああ」
どうやら、今日の人数は多かったようだ。
個人的にはこの宿屋の素晴らしさを知ってもらいたいから、お客さんが増えるのは嬉しい。
ただ俺も手伝いはこれで終わりだし、今後お客さんが増えたままなら従業員を増やすとかも必要になるかもな。
まぁ、そこはナンシーさんとレオンさん、そしてアシル君が決めていく問題だから、俺は俺で定期的に手伝いに来たりしよう。
それで少しでも楽になってくれるのなら、俺としても嬉しいしね。
そんなことを考えてたら、ナンシーさんがパンっと手を打って言った。
「さ!頑張ったから夕食にしましょう!もうお腹がすいちゃったわ。もちろんカスミさんもね」
「え、お昼も頂いたのに…」
「いいの!決定よ!」
「…ありがとうございます。お世話になります」
「ええ。さ!準備よ!おなかと背中がくっつく前に終わらせないとね!」
「僕も手伝うからね!さっきも今もお腹がなりそうだもん。早く食べたいよ」
「…準備する」
「あ、手伝います」
お昼を食べたところの席をナンシーさんとアシル君が準備するのを見てから、俺は厨房に向かうレオンさんを追って行った。
レオンさんがオムレツを焼き始めたので、俺はシチューを温めなおし、サラダの準備をする。
今回はサラダは好きな量を食べてもらう形にしたいので、大皿にレタスときゅうりとトマト並べていく。
ドレッシングもかけないで、そばに置いておくことにしよう。
マリはそのままの方がいいかもだしね。
シチューはくつくつと煮込んでくるっと混ぜ合わせる。
温めるだけなんだけど、放置してたら焦げちゃうかもしれないしね。
シチューから白い湯気が溢れてきたのを確認してから火を止めて、俺は四つのお皿にシチューを盛っていく。
サラダの取り皿も用意したし、あとはあっちに持っていくだけだな。
レオンさんもオムレツが出来上がったみたいだし、パンはバスケットにいれてあるからそれを持っていけば準備完了だ。
飲み物は水が果実水だけど、お昼と同じなら果実水でいいのかな。
「飲み物ってどうします?」
「…果実水と果実酒を持っていこう」
「果実酒、ですか?」
「…売りはしてないが、ある」
名前からしてお酒みたいだし、俺は飲めないな。
こういう時、早く二十歳を越えたいなと思う。
というか、ふと思ったんだが発酵スキルでお酒作れるんじゃないかな。
俺は飲めないから味の確認とか出来ないけど、作ることは出来るかもしれない。
もし作れたらレオンさんに味見を頼んでもいいかな。
まぁ作れるかも分からないんだけど、目標の一つとして覚えておこう。
「…果実酒は俺がだす。果実水を頼む」
「わかりました!」
俺がお酒について考えてたら、レオンさんが続けてそう言ったので思考を切り替える。
果実水は冷蔵庫に入ってたから、取り出して、コップは四つ持っていく。
もちろん途中でマリを肩に乗せてからだけどね。
表の準備を終えたナンシーさんとアシル君も手伝ってくれて、料理も全て机に並べられていた。
俺が果実水を持っていった後に、レオンさんが果実酒を持ってきて、自分とナンシーさんのコップに注いだ。
俺は自分とアシル君のコップに果実水を注ぎ、取り皿を分けてから席に座った。
ナンシーさんは、俺がマリを肩から降ろして机に置いたのを確認してから声を出した。
「さっきも言ったけど、一日お疲れ様でした。カスミさんも、初めてだったのにいろいろ手伝ってくれてありがとうね」
「こちらこそ、沢山のことができて楽しかったです。ぜひまた手伝わせてくださいね」
「ぴっぴきゅ!」
俺の言葉に、マリも同意するように鳴いてくれる。
確かに大変だったけど勉強にもなったし、なにより楽しかった。
この宿屋に立ち寄った今日の自分を褒めたいくらいだ。
「…手伝い、お疲れ。助かった」
「俺の方こそ、いろいろと教えてくださってありがとうございました」
「カスミお兄さん、また一緒にお掃除しようね!」
「うん。もちろんだよ、アシル君」
ナンシーさんもレオンさんもアシル君も、次々と惜しむように話しかけてくれるのが嬉しい。
やっぱり、この宿屋に来れてよかったな。
「さて!積もる話もあるだろうけど、それはまた後ね。今は二人の美味しいご飯を食べましょう」
「うん!」
「あなた、よろしくね」
「…いただきます」
「いただきます」
「いただきま~す」
「いただきます!」
「きゅぴぴきゅぴ!」
少しだけしんみりとした空気が漂っていたのを、いつもの様にナンシーさんが場をまとめてくれた。
ご飯は楽しく食べたいから、ナンシーさんの行動はすごくありがたい。
そしてレオンさんの掛け声と共に、食事が始まった。
俺は暖かいうちにと思ってレオンさんのオムレツを口に含む。
ふわっと柔らかい卵を口に入れた途端、蕩けるようになくなっていった感覚に驚いた。
卵のまろやかな味とケチャップベースのソースの酸味はしっかりと口に残っているのに、オムレツ自体はすっかりなくなってしまったのだ。
ふわっしゅわって感じだった。
俺はそのオムレツの感動のままシチューを口に入れる。
自分で作ったからあまり感動はなかったけど、それでも牛乳の優しい味とバターのコク、そして具材たちの旨みが綺麗に合わさり、とても美味しく出来たんじゃないかなとは思う。
レオンさんの作ったパンを浸して食べれば、口の中でパンがじゅわっとシチューの旨みを溢れさせながら蕩けていき、パンの甘さとシチューの味が絡み合ってとても美味しかった。
サラダはそのまま食べてももちろん美味しいのだが、レオンさん特製のドレッシングをかけるとその美味しさは何倍にも膨れ上がった。
野菜の新鮮な味を活かすように作られたドレッシングは、この野菜たちの為にあるようなものだと思ったほどだ。
マリにも俺が食べる途中途中であげていたが、その度に花を咲かせながら顔を蕩けさせて美味しそうな声をあげていた。
今はお気に入りのトマトを齧りつつ吸いつつ幸せそうだ。
「美味しいな、マリ」
「きゅぅう~」
マリのために貸してもらった小皿にトマトをのせながら器用に食べるマリは、幸せそうに鳴いてまた食べ始めた。
今度浅漬けとか和え物とか作ってみようかな。
お肉も好きみたいだし、ロールキャベツとかもいいかもな。
マリが喜びそうなレシピはたくさんあるから、少しずつ試していこう。
「マリちゃんはお野菜が好きなのね。私と同じだわ」
「僕も好きだよ。あ、でもオムレツも好きだしシチューも好き!」
「あら、私も好きよ。果実酒を飲みながらご飯を食べるのが毎日の幸せだもの。ご飯が美味しいからなおさらね」
「…そうだな」
そして色んなものを作って、ナンシーさんレオンさん、アシル君にも食べてもおう。
美味しいかなんて分からないけど、上手く出来たら、きっと笑顔になってくれるはずだから。
こんなに幸せで優しい家族にお邪魔させてもらったのだから、そのお礼くらいはさせて欲しいものだ。
きっと言ったら遠慮されるから、今はまだ秘密だけどね。
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