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レベル0の魔物使い
旅立ち
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崩落した遺跡の隙間から、這い出すようにして外へ出た。 冷たい夜風が頬を撫で、自分がまだ生きていることを実感させる。背後では、アルドたちが逃げ出す際に放った魔法のせいで、入り口が完全に瓦礫で埋もれていた。
「あいつら、本当に僕を置いていったんだな」
暗い森の中、僕はぽつりと呟いた。 怒りよりも、冷めた諦めが胸を支配していた。三年間、使い捨ての道具のように扱われてきた日々の終止符が、これだったのだ。
足元で、シリウスが心配そうに僕を見上げている。
「大丈夫だよ、シリウス。もう、あそこには戻らない」
ギルドには、僕の居場所なんて最初からなかった。 これからは、僕を必要としてくれたこの子と一緒に、誰も僕を知らない場所へ行こう。自由な旅を始めよう。 そう決めた僕の心に、迷いはなかった。
だが、街を離れる前に、どうしても立ち寄らなければならない場所があった。 街外れの静かな丘に建つ、小さな隠居所。そこには、三年前に僕を引き取ってくれた先代ギルドマスターのバルカス様が暮らしている。
「失礼します」
扉を叩き、中へ入ると、白髪の老人が驚いたように目を見開いた。
「カイル。お主、生きておったのか」
バルカス様は震える手で僕の肩を掴んだ。ギルドには既に、僕が死んだという報告が届いていたらしい。ビーストグリズリーに襲われ、命を落としたと。
「よくぞ、よくぞ生きて帰ったな」
「すみません。心配をかけました。でも、どうしても最後に挨拶がしたくて」
僕は足元で静かに控えていたシリウスを指し示した。
「初めて、使役ができたんです。この子が、僕を助けてくれました」
その瞬間、バルカス様の表情が変わった。 彼はシリウスの持つ底知れぬ魔力と、神々しいまでの存在感に無意識のうちに戦闘態勢をとろうとしていた。
「グルル……」
シリウスもそれを敏感に察知し、喉の奥から低い唸り声を上げる。空気が、ビリビリと震えた。
「シリウス、ダメだよ! この人は僕の恩人なんだ」
慌てて僕が割って入ると、シリウスはフンと鼻を鳴らして殺気を霧散させた。バルカス様は大きく息を吐き出し、苦笑いを浮かべた。
「すまん。あまりの威圧感に、つい体が強張ってしまった。すまんな、シリウスといったか。お主は本当に素晴らしい相棒じゃ。カイルのことを頼むぞ」
バルカス様が手を伸ばすと、シリウスは寛大にもその頭を撫でさせた。
「やはり、お主はあいつの孫じゃ。その才能は儂の元で開花させてやりたかったが。今のおぬしらを見れただけで、儂は満足じゃよ。かつてのあいつを思い出したわい。まあ、あいつは魔物使いではなく、大斧使いじゃったがの」
快活に笑うバルカス様の姿に、僕の心も少しだけ軽くなった。 祖父は結局、僕を冒険者にしたがらなかった。けれど、その血は確かに僕の中に流れている。
「僕は、祖父を越えられますかね」
僕の問いに、バルカス様はシリウスと僕を交互に見つめ、力強く頷いた。
「その子とともに、信じた道を進めば、必ずや儂らなんか越えていくさ。カイル、お主の道は、お主自身が選ぶのじゃ」
僕は深く頭を下げ、その家を後にした。 街を出る僕の足取りに、もう迷いはない。 バルカス様に別れを告げて、僕らはこの街から旅立った。
「あいつら、本当に僕を置いていったんだな」
暗い森の中、僕はぽつりと呟いた。 怒りよりも、冷めた諦めが胸を支配していた。三年間、使い捨ての道具のように扱われてきた日々の終止符が、これだったのだ。
足元で、シリウスが心配そうに僕を見上げている。
「大丈夫だよ、シリウス。もう、あそこには戻らない」
ギルドには、僕の居場所なんて最初からなかった。 これからは、僕を必要としてくれたこの子と一緒に、誰も僕を知らない場所へ行こう。自由な旅を始めよう。 そう決めた僕の心に、迷いはなかった。
だが、街を離れる前に、どうしても立ち寄らなければならない場所があった。 街外れの静かな丘に建つ、小さな隠居所。そこには、三年前に僕を引き取ってくれた先代ギルドマスターのバルカス様が暮らしている。
「失礼します」
扉を叩き、中へ入ると、白髪の老人が驚いたように目を見開いた。
「カイル。お主、生きておったのか」
バルカス様は震える手で僕の肩を掴んだ。ギルドには既に、僕が死んだという報告が届いていたらしい。ビーストグリズリーに襲われ、命を落としたと。
「よくぞ、よくぞ生きて帰ったな」
「すみません。心配をかけました。でも、どうしても最後に挨拶がしたくて」
僕は足元で静かに控えていたシリウスを指し示した。
「初めて、使役ができたんです。この子が、僕を助けてくれました」
その瞬間、バルカス様の表情が変わった。 彼はシリウスの持つ底知れぬ魔力と、神々しいまでの存在感に無意識のうちに戦闘態勢をとろうとしていた。
「グルル……」
シリウスもそれを敏感に察知し、喉の奥から低い唸り声を上げる。空気が、ビリビリと震えた。
「シリウス、ダメだよ! この人は僕の恩人なんだ」
慌てて僕が割って入ると、シリウスはフンと鼻を鳴らして殺気を霧散させた。バルカス様は大きく息を吐き出し、苦笑いを浮かべた。
「すまん。あまりの威圧感に、つい体が強張ってしまった。すまんな、シリウスといったか。お主は本当に素晴らしい相棒じゃ。カイルのことを頼むぞ」
バルカス様が手を伸ばすと、シリウスは寛大にもその頭を撫でさせた。
「やはり、お主はあいつの孫じゃ。その才能は儂の元で開花させてやりたかったが。今のおぬしらを見れただけで、儂は満足じゃよ。かつてのあいつを思い出したわい。まあ、あいつは魔物使いではなく、大斧使いじゃったがの」
快活に笑うバルカス様の姿に、僕の心も少しだけ軽くなった。 祖父は結局、僕を冒険者にしたがらなかった。けれど、その血は確かに僕の中に流れている。
「僕は、祖父を越えられますかね」
僕の問いに、バルカス様はシリウスと僕を交互に見つめ、力強く頷いた。
「その子とともに、信じた道を進めば、必ずや儂らなんか越えていくさ。カイル、お主の道は、お主自身が選ぶのじゃ」
僕は深く頭を下げ、その家を後にした。 街を出る僕の足取りに、もう迷いはない。 バルカス様に別れを告げて、僕らはこの街から旅立った。
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