魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき

文字の大きさ
7 / 10
レベル0の魔物使い

旅立ち

しおりを挟む
崩落した遺跡の隙間から、這い出すようにして外へ出た。 冷たい夜風が頬を撫で、自分がまだ生きていることを実感させる。背後では、アルドたちが逃げ出す際に放った魔法のせいで、入り口が完全に瓦礫で埋もれていた。

「あいつら、本当に僕を置いていったんだな」

暗い森の中、僕はぽつりと呟いた。 怒りよりも、冷めた諦めが胸を支配していた。三年間、使い捨ての道具のように扱われてきた日々の終止符が、これだったのだ。

足元で、シリウスが心配そうに僕を見上げている。

「大丈夫だよ、シリウス。もう、あそこには戻らない」

ギルドには、僕の居場所なんて最初からなかった。 これからは、僕を必要としてくれたこの子と一緒に、誰も僕を知らない場所へ行こう。自由な旅を始めよう。 そう決めた僕の心に、迷いはなかった。

だが、街を離れる前に、どうしても立ち寄らなければならない場所があった。 街外れの静かな丘に建つ、小さな隠居所。そこには、三年前に僕を引き取ってくれた先代ギルドマスターのバルカス様が暮らしている。

「失礼します」

扉を叩き、中へ入ると、白髪の老人が驚いたように目を見開いた。

「カイル。お主、生きておったのか」

バルカス様は震える手で僕の肩を掴んだ。ギルドには既に、僕が死んだという報告が届いていたらしい。ビーストグリズリーに襲われ、命を落としたと。

「よくぞ、よくぞ生きて帰ったな」 

「すみません。心配をかけました。でも、どうしても最後に挨拶がしたくて」

僕は足元で静かに控えていたシリウスを指し示した。

「初めて、使役ができたんです。この子が、僕を助けてくれました」

その瞬間、バルカス様の表情が変わった。 彼はシリウスの持つ底知れぬ魔力と、神々しいまでの存在感に無意識のうちに戦闘態勢をとろうとしていた。

「グルル……」

シリウスもそれを敏感に察知し、喉の奥から低い唸り声を上げる。空気が、ビリビリと震えた。

「シリウス、ダメだよ! この人は僕の恩人なんだ」

慌てて僕が割って入ると、シリウスはフンと鼻を鳴らして殺気を霧散させた。バルカス様は大きく息を吐き出し、苦笑いを浮かべた。

「すまん。あまりの威圧感に、つい体が強張ってしまった。すまんな、シリウスといったか。お主は本当に素晴らしい相棒じゃ。カイルのことを頼むぞ」

バルカス様が手を伸ばすと、シリウスは寛大にもその頭を撫でさせた。

「やはり、お主はあいつの孫じゃ。その才能は儂の元で開花させてやりたかったが。今のおぬしらを見れただけで、儂は満足じゃよ。かつてのあいつを思い出したわい。まあ、あいつは魔物使いではなく、大斧使いじゃったがの」

快活に笑うバルカス様の姿に、僕の心も少しだけ軽くなった。 祖父は結局、僕を冒険者にしたがらなかった。けれど、その血は確かに僕の中に流れている。

「僕は、祖父を越えられますかね」

僕の問いに、バルカス様はシリウスと僕を交互に見つめ、力強く頷いた。

「その子とともに、信じた道を進めば、必ずや儂らなんか越えていくさ。カイル、お主の道は、お主自身が選ぶのじゃ」

僕は深く頭を下げ、その家を後にした。 街を出る僕の足取りに、もう迷いはない。 バルカス様に別れを告げて、僕らはこの街から旅立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...