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第3章
金獅子の襲来
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王都の喧騒が遠くに聞こえる『漆黒の鴉(ブラック・レイヴン)』の拠点前。その静寂を不器用に切り裂いたのは、大地を揺らすような重厚な足音と、怒号に近い呼びかけだった。
「漆黒の鴉のライオット! いるのは分かっている、さっさと表へ出ろ!」
門扉が震えるほどの声に、僕は思わず肩を跳ねさせた。
昨日までの旅の疲れがまだ抜けきっていない体には、その鋭い声はあまりに刺激が強すぎる。隣で寝そべっていたシリウスも、即座に姿勢を正して低い唸り声を上げた。
その金色の瞳は、扉の向こう側にいる「ただならぬ気配」を鋭く見据えている。
「……朝っぱらから、どこのどいつだよ。二日酔いの頭に響くぜ」
奥の部屋から、槍を杖がわりに引きずりながらライオットさんが現れた。
頭を乱暴にかきむしり、その表情はひどく億劫そうだが、声の主に見当がついているのか、瞳の奥には冷めた光が宿っている。
「カイル、開けてやれ。どうせ開けなきゃ、あいつは扉をぶっ壊して入ってくる」
「は、はい……!」
僕が恐る恐る重い木製の扉を開けると、そこには陽光を跳ね返すほどに磨き上げられた白銀の甲冑を纏った女性が立っていた。
燃えるような赤髪を一本に束ね、腰には使い込まれた一振りの長剣。その凛とした佇まいは、僕が今まで見てきたどの冒険者よりも「騎士」という言葉が相応しい。
背後には数人の兵士が控え、通りを歩く人々も遠巻きにその光景を眺めている。
「……あの、どちら様でしょうか」
僕が震える声で尋ねるが、彼女は僕を一瞥することさえせず、その鋭い視線を奥にいるライオットさんへと固定した。
「しらばっくれるな、ライオット! 我がギルドの者が、貴殿に無抵抗なまま暴行を受けたと泣きついてきたぞ。……幼馴染のよしみで、穏便に済ませてやろうと思って来てみれば、その面は何だ。反省の色もなしか!」
ライオットさんと、この人が幼馴染?
驚く僕を余所に、ライオットさんは露骨に顔をしかめて鼻で笑った。
「無抵抗、ねえ。あいつら、そんな面白い冗談が言えるようになったのか。王都一の看板が泣いてるぜ、クラリス。てめえの目は節穴か?」
「貴様。看板を汚しているのはどっちだ! 仲間が受けた屈辱を返させてもらうぞ。力ずくでもその傲慢さを正してやる!」
クラリスと呼ばれたその女性は、彼女は僕を突き飛ばさんばかりの勢いで踏み込むと、迷いなく腰の長剣を引き抜いた。
鋭い金属音が響き、抜き放たれた刃が朝日にぎらりと輝く。
「やめてください! ライオットさんは僕を……!」
僕が間に入ろうとした瞬間、ライオットさんの腕が僕を後ろへと制した。
「下がってろ、カイル。クラリス、てめえの仲間を信じるのは勝手だが、信用しすぎるのも大概にしろ。言っておくがな、このカイルはうちのギルドの大事な仲間だ。…たとえお前が相手でも、手出しはさせねえよ」
ライオットさんの声から、つかみ所のない軽薄さが消えた。
彼が槍を構え、クラリスさんが剣を正眼に構える。
二人の間に、肌を刺すような高濃度のマナが渦巻き、一触即発の空気が拠点前を包み込んだ。
「漆黒の鴉のライオット! いるのは分かっている、さっさと表へ出ろ!」
門扉が震えるほどの声に、僕は思わず肩を跳ねさせた。
昨日までの旅の疲れがまだ抜けきっていない体には、その鋭い声はあまりに刺激が強すぎる。隣で寝そべっていたシリウスも、即座に姿勢を正して低い唸り声を上げた。
その金色の瞳は、扉の向こう側にいる「ただならぬ気配」を鋭く見据えている。
「……朝っぱらから、どこのどいつだよ。二日酔いの頭に響くぜ」
奥の部屋から、槍を杖がわりに引きずりながらライオットさんが現れた。
頭を乱暴にかきむしり、その表情はひどく億劫そうだが、声の主に見当がついているのか、瞳の奥には冷めた光が宿っている。
「カイル、開けてやれ。どうせ開けなきゃ、あいつは扉をぶっ壊して入ってくる」
「は、はい……!」
僕が恐る恐る重い木製の扉を開けると、そこには陽光を跳ね返すほどに磨き上げられた白銀の甲冑を纏った女性が立っていた。
燃えるような赤髪を一本に束ね、腰には使い込まれた一振りの長剣。その凛とした佇まいは、僕が今まで見てきたどの冒険者よりも「騎士」という言葉が相応しい。
背後には数人の兵士が控え、通りを歩く人々も遠巻きにその光景を眺めている。
「……あの、どちら様でしょうか」
僕が震える声で尋ねるが、彼女は僕を一瞥することさえせず、その鋭い視線を奥にいるライオットさんへと固定した。
「しらばっくれるな、ライオット! 我がギルドの者が、貴殿に無抵抗なまま暴行を受けたと泣きついてきたぞ。……幼馴染のよしみで、穏便に済ませてやろうと思って来てみれば、その面は何だ。反省の色もなしか!」
ライオットさんと、この人が幼馴染?
驚く僕を余所に、ライオットさんは露骨に顔をしかめて鼻で笑った。
「無抵抗、ねえ。あいつら、そんな面白い冗談が言えるようになったのか。王都一の看板が泣いてるぜ、クラリス。てめえの目は節穴か?」
「貴様。看板を汚しているのはどっちだ! 仲間が受けた屈辱を返させてもらうぞ。力ずくでもその傲慢さを正してやる!」
クラリスと呼ばれたその女性は、彼女は僕を突き飛ばさんばかりの勢いで踏み込むと、迷いなく腰の長剣を引き抜いた。
鋭い金属音が響き、抜き放たれた刃が朝日にぎらりと輝く。
「やめてください! ライオットさんは僕を……!」
僕が間に入ろうとした瞬間、ライオットさんの腕が僕を後ろへと制した。
「下がってろ、カイル。クラリス、てめえの仲間を信じるのは勝手だが、信用しすぎるのも大概にしろ。言っておくがな、このカイルはうちのギルドの大事な仲間だ。…たとえお前が相手でも、手出しはさせねえよ」
ライオットさんの声から、つかみ所のない軽薄さが消えた。
彼が槍を構え、クラリスさんが剣を正眼に構える。
二人の間に、肌を刺すような高濃度のマナが渦巻き、一触即発の空気が拠点前を包み込んだ。
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