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色々な考え方があるよね
しおりを挟むさてさて。大臣サマの執務室に辿り着いたのは良いんだけど。
なんだあの書類の山。机に積まれすぎてて奥が全く見えん。
まさかこれを一人で全部片付けるのか?
どんなハードワークだよ。
「あれ、書類の追加ですか? それでしたら机に……は置けませんので、床に置いてってください」
うおっと。足音も立ててないのに侵入に気付かれたか。
さすがに魔王軍最強って言われるだけあるな。
でも私だってことまでは気付かれてないみたいだし、ちょっろイタズラしてみよう。
私の特技である声真似を披露するときが来たようだ。
サファイアさんの声は……ん、こんな感じかな。
「アメジスト様。そろそろ休憩されては如何でしょうか」
「あれ、サファイア? でもまだ半分しか終わらせてないよ?」
半分って言ったかこの子。え、この倍量あったの?
どんだけ仕事してんだよ。
うーん。魔王ちゃん行ってみよう。
「実はリリィ様がこちらへ向かっているとの情報が入りました。歓迎の際の会話内容をまとめておいた方がよろしいのでは?」
「リリィちゃんが!?」
ゴンッ!
「あいったああああ!?」
あ、どっかぶつけたなこれ。
「既に王城内にいらっしゃっているようです。急いだほうがよろしいかと」
「え、待って! そんなに時間無いの!?」
「微塵もありませんね」
「うわ、どうしようサファイア! 会話デッキ増やしてないよ!」
「それでしたら良い案があります」
「さすがだね! ちゃんと私の為に考えて来てくれるなんて、やっぱりサファイア私の事好きでしょ!」
お、イキりだしたな。これもこれで可愛いんだけど、ちょっとイジメてみよう。
「いえ、職務だから行っているだけです。そのような感情はありません」
「そうなの!?」
「よろしいではないですか。アメジスト様にはリリィ様がいらっしゃるでしょう」
「ねえええ! なんでそんなこと言うの!? 今朝寝坊したから怒ってるの!?」
「冗談です。愛していますよ、アメジスト様」
「え? えへへ、いやぁ、そこまで言われると照れちゃうって言うか……うん、私もね、サファイアのこと」
声真似解除。
「愛してるよ、アメジストたん」
「……え、は、あれ? え、サファイア?」
おー。分かりやすく混乱してんな―。
「いや、私の声真似。サファイアさんは最初からいないよ」
「……リリィちゃん? 声真似? え、だっていま」
「(声真似で)愛していますよ、アメジスト様」
「いやああああああああ!!」
ばたんっ! ごろごろごろ! どすんっ!
えーと。後ろに倒れて、転がって、壁にぶつかった音、かな?
ていうかいい加減顔を見せるか。
「にゃっはろー。会いに来たよー」
「ほわぁっ!? ほほほ本当にリリィちゃんだ!」
「本物だよー。てかそれ、大丈夫?」
なんか、うん。アメジストたんがぶつかった壁がへこんでるんだけど、
「え? 何のこと?」
まじか、小首を傾げてきょとんとしてらっしゃる。
なんでこんなに平然としてんだこの子。
まさかこれ、日常なのか?
「いや、なんでもない。ところでさ、この書類全部ひとりでやるの?」
「そうだよ。これは夜までに終わるから、その後は軍事関係と内政関係のお仕事があるよ」
まだ仕事あんのかよ。大丈夫かアメジストたん。
「あー……じゃあ忙しいね。また今度来るわ」
「えっ……その、お話とか。したいなって、思ったんだけど。そっか、帰っちゃうなら……仕方ないよね。うん、私ちゃんと我慢できるよ」
「ここに永住するわ」
なんだこの生き物、可愛すぎるだろ。
メチャクチャ寂しそうなのに健気に微笑む姿を見て、放っておける奴なんていないと思う。
いたら出てこい。説教してやるから。
「アメジストたんが時間あるならちょっとお邪魔しようかな」
「ほんと!? 嬉しい! じゃあえっと、お部屋の方に行こ!」
「はいよー。手とか繋ぐ?」
「いいの!? 繋ぐ! 絶対繋ぐ!」
私の両手を取って飛び跳ねるアメジストたん、マジ天使。
守りたい、この笑顔。
「ところでサファイアさんは?」
「今はちょっと席を外してるの。あ、来客の準備って言ってたから、リリィちゃんのお迎えの準備してるのかも!」
「なるほど。じゃあ待ってた方が良いかな?」
「そうだね! えっと、一緒に待っててくれる……?」
「うん。じゃあちょっとお喋りでもしてようか」
「あっ……ごめんなさい、あのね、会話デッキがまだ増えてないから、その……あぅぅ」
あぁ、なんかさっき言ってたな。
「んじゃこっちから話題振るよ。アメジストたんの好きな動物は?」
「ヒガシゲルニカオオイワモドキウサギ!」
なんて?
「……えーと、ウサギ?」
「うん! ヒガシゲルニカオオイワモドキウサギだよ!」
「東ゲルニカって所にいるに大岩みたいなウサギなの?」
「うぅん、南ユークリアの浜辺にいるんだよ」
「……うん、そっかぁ」
ごめん、まったく意味が分からん。
でもとりあえずウサギって事は理解した。
「ウサギかぁ。そういや私『ウサギ』のスキル持ってたな」
「そうなの!? すっごい珍しいスキル持ってるんだね!」
「珍しいの?」
「初代勇者様が持ってる伝説のスキルだよ」
伝説のスキル。何か活用法があるんだろうか。
ただウサギに好かれるスキルって説明されてんだけど。
「あのね、魔族にはウサギの血が混じってる人が多いの。だからたくさんの魔族と仲良くなれるんだよ」
やばい、理解が追いつかない。
それってウサギと魔族が子ども作ったって事だよな。
……いやまぁ、異世界だし何でもありなのかもしれないけど。
「あ。もしかしてエリーゼも?」
「軍団長? 確かそうだったと思う」
「なるほど。謎が一つ解けたわ」
そっかー。言われてみればエリーゼって目が赤いもんなー。
「リリィちゃんはどんな動物が好きなの?」
「アミメニシキヘビ」
「……ヘビ?」
「うん。アミメニシキヘビ」
黄色くてデカいのに顔立ちが可愛いんだよな、あいつら。
昔はよく体に巻き付かせて遊んだものだ。
ちなみにヘビが身体に巻き付くのは、その対象を丸呑みできるか計っているらしい。
だからって遊ぶの辞めなかったけどな。
「ヘビかぁ……私は苦手かなー」
「ヘビ苦手な子って多いもんね」
「うん。小骨が多くて食べにくいから」
え、好きってそういう?
じゃあさっきのなんちゃらウサギもそういう事?
あー。まぁこの子、真っ青なハンバーグを美味しそうに食べてたもんなぁ。
「そっかそっか。じゃあさー」
とまぁこんな感じで。
サファイアさんが呼び来るまでの間、ちょっとぶっ飛んだ会話が続けられた。
アメジストたんの感性ってよく分からん。
でも可愛いからどうでもいいわ。可愛いは正義だ、うん。
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−−−−−−
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