2 / 21
第一章はじまりのうた
終わりと始まり
しおりを挟む
目を開けるとそこには父上と兄様が心配そうにこちらを見ていた。
また、やってしまった。魔法が発動する度にものを破壊してしまうこの現状に憤りを感じつつ無事であることを告げると、緩んだ顔つきになった。
しかし今回も力が抑えられず物を壊してしまった。今まで壊したものはソファや壁なんかでは済まされない。木が生え、小鳥のさえずりがよく聞こえ、うさぎが駆け回り、木漏れ日がとても気持ちよかった父のお気に入りの森を壊滅させてしまい、そこにしか無かった希少な植物まで絶滅に追いやってしまった。本当に魔力の制御すらまともに出来ない自分が憎い。
暫くして落ち着くと、今日はゆっくり休んでおけと言われ、そのまま寝た。
◆◇◆
煩いくらいの朝日が肌を、小鳥のさえずりが耳を刺激しゆっくりと目を開ける。そしていつも通りの天井を見つめ、体を起こす。
父上と兄様が朝食を食べるため、着替えて食堂につくと、父上と兄様だけがいた。そう、普段ならいるはずの母上の姿はなかった。
それから出てくる料理に目を輝かせ、ふと考える、最後にまともなご飯を食べたのはいつだろう。おそらく10年前か?
1歳の誕生日に属性測定の儀で測定不能と出てから、まともにご飯は食べてない。
いつも父上や兄様がこっそりご飯を持ってきてくれて、何とか生きながらえていた。
暫く黙っていると父上が口を開いた。
「リドル、座りなさい。」
慌てて座ると、悲しそうな目で見られた。
何でだろうと首を傾げていると、
「すまない、リドル」
そう言い抱きしめられた。事態に困惑していると兄様が泣きそうになりながら言う。
「地べたなんかに座らなくていいんだよ、リドル。ちゃんと椅子に座って食べよう。あの人はもう居ないんだから。」
「?食べていいんですか?こんなに豪華なご飯を、綺麗な椅子に座って。」
信じられなかった。
何せ今まで食事の時間は、床以外に座ることは許されず、ご飯を食べることも許されない、許されるのは居ることと、息を吸うこと。割と貧乏なので使用人も少なく、その代わりに食器を片付け、掃除をさせられる。
苦痛以外の何物でもなかった。それなのに……
「いいに決まってる……!」
父上……
「ごめん……な…さい。ちち…うえ」
気づいたら目から大量の水が出てきた。すごく邪魔だから止めようとしても上手くいかない。
「謝ることなんて何も無いんだ、リドル。謝るのは僕の方だ。こんなになるまで何も出来なくてすまなかった。」
僕を抱きしめる腕はいつの間にか4本に増え、苦しいくらいに力強く、がっしりとしたその4本の腕に、言葉にならないくらい安心し、余計に水が出てきた。
「父上……兄様……!」
自分が憎らしくて、嫌いで、情けなくて、だらしなくて、悔しくて。水を止めることも出来ず、全員が落ち着くまでとても長い時間がかかった。
そして席に着くと父上がキッパリと宣言した。
今日限りで、フレイム男爵家は解散すると。
兄様はマードック公爵家へ、僕はアビスガード公爵家に養子として引き取られる。
父上はこの先、平民として暮らしていくことになる。
母上は母親としての育児放棄や虐待などを罪に問われ、裁判の結果、投獄された。さらには僕の謎の属性に関する国をあげての研究の妨げとして、国家反逆罪としても裁かれた。
そして父上も裁判の結果、執行猶予4年を言い渡されたらしい。
いつの間にそんな事が……って父上が執行猶予4年?なんで……?おかしいよ、そんなの。だって父上は何もしていないのに。
「何もしなかったのがダメだったんだよ。」
考えてた事が口に出ていたことに気づき、うっとした顔をすると、兄上がふふっと顔をほころばせた。
そんな変な顔をしていたのかなと、考え込むが多分大丈夫だと思いたい。
それから聞いた事は予想外所の騒ぎではなかった。
どうやらこの国では、親が子に暴力やそれに準ずる行為をかなり厳しく取り締まっており、今回の母上の行為は国家反逆と同じくらいの罪の重さと言われている。
ここまで罪が重くされた経緯については完全に謎であるが、家族関係のトラブルはかなり大きな罪として取り扱われる。
そして何も出来なかった父上もその責任を問われたのだそう。兄様も最初は裁判にかけられたそうだが、父上の全力の弁護により無罪となった。
これは後で噂程度に聞いたものだが、なぜ何も出来なかったかと言うと、母上は元伯爵家の令嬢であり、その伯爵家は王族の血を引いており繋がりも深かったため、常に脅されていたのだそう。
そんな話をしている時に父上からぐぅ~と音が鳴った。
「ぶほっ!」と思わず吹き出す兄様に顔を赤くしながらやめてくれという父上はとても愛らしかった。
それから食べようかと父上が言い、僕は慣れない手つきで料理を口に運ぶ。初めて食べるその味につい「美味しい」と言葉を零すと、嬉しそうで泣きそうな顔で父上と兄様が見つめてきた。
そして次に父上が言ったのは、この食事の後に家族の絵を書いてもらうらしい。これは最後に父上がいつでも愛する息子を思い出せるようにと願ったことによるものだそう。
暫くして画家の方が到着し、下書きが終わったらしく解放されると絵が完成するまでかなり時間がかかるとの事。できた時には僕と兄上に見せてから、父上に届けるとのことで、絵を見られる事に安堵した。
その後お茶をしたり、一緒に街に出たりして、楽しい時間を過ごした。
そうしてフレイム男爵家の最後の1日が終わった。
◆◆◆(sideブーム・フレイム)
私はブーム・フレイム。男爵だ。
と言っても明日からはただの平民な訳だが。
今日は今までで1番幸せだった。堂々とリドルを愛せて、アルバも幸せそうだった。今まで出来なかった、リドルとの食事やリドルのとびっきりの笑顔を見て、思わず泣いてしまった。
永く続いたフレイム男爵家の歴史をここで終わらせてしまうことを両親に申し訳なく思いつつ、この幸せな時間をもっと過ごしたいと思ってしまった。
もう戻ることは出来ないが、息子である、アルランディス・ルナ・マードックとリドル・ルナ・アビスガードの幸せをこれからも願う。
また、やってしまった。魔法が発動する度にものを破壊してしまうこの現状に憤りを感じつつ無事であることを告げると、緩んだ顔つきになった。
しかし今回も力が抑えられず物を壊してしまった。今まで壊したものはソファや壁なんかでは済まされない。木が生え、小鳥のさえずりがよく聞こえ、うさぎが駆け回り、木漏れ日がとても気持ちよかった父のお気に入りの森を壊滅させてしまい、そこにしか無かった希少な植物まで絶滅に追いやってしまった。本当に魔力の制御すらまともに出来ない自分が憎い。
暫くして落ち着くと、今日はゆっくり休んでおけと言われ、そのまま寝た。
◆◇◆
煩いくらいの朝日が肌を、小鳥のさえずりが耳を刺激しゆっくりと目を開ける。そしていつも通りの天井を見つめ、体を起こす。
父上と兄様が朝食を食べるため、着替えて食堂につくと、父上と兄様だけがいた。そう、普段ならいるはずの母上の姿はなかった。
それから出てくる料理に目を輝かせ、ふと考える、最後にまともなご飯を食べたのはいつだろう。おそらく10年前か?
1歳の誕生日に属性測定の儀で測定不能と出てから、まともにご飯は食べてない。
いつも父上や兄様がこっそりご飯を持ってきてくれて、何とか生きながらえていた。
暫く黙っていると父上が口を開いた。
「リドル、座りなさい。」
慌てて座ると、悲しそうな目で見られた。
何でだろうと首を傾げていると、
「すまない、リドル」
そう言い抱きしめられた。事態に困惑していると兄様が泣きそうになりながら言う。
「地べたなんかに座らなくていいんだよ、リドル。ちゃんと椅子に座って食べよう。あの人はもう居ないんだから。」
「?食べていいんですか?こんなに豪華なご飯を、綺麗な椅子に座って。」
信じられなかった。
何せ今まで食事の時間は、床以外に座ることは許されず、ご飯を食べることも許されない、許されるのは居ることと、息を吸うこと。割と貧乏なので使用人も少なく、その代わりに食器を片付け、掃除をさせられる。
苦痛以外の何物でもなかった。それなのに……
「いいに決まってる……!」
父上……
「ごめん……な…さい。ちち…うえ」
気づいたら目から大量の水が出てきた。すごく邪魔だから止めようとしても上手くいかない。
「謝ることなんて何も無いんだ、リドル。謝るのは僕の方だ。こんなになるまで何も出来なくてすまなかった。」
僕を抱きしめる腕はいつの間にか4本に増え、苦しいくらいに力強く、がっしりとしたその4本の腕に、言葉にならないくらい安心し、余計に水が出てきた。
「父上……兄様……!」
自分が憎らしくて、嫌いで、情けなくて、だらしなくて、悔しくて。水を止めることも出来ず、全員が落ち着くまでとても長い時間がかかった。
そして席に着くと父上がキッパリと宣言した。
今日限りで、フレイム男爵家は解散すると。
兄様はマードック公爵家へ、僕はアビスガード公爵家に養子として引き取られる。
父上はこの先、平民として暮らしていくことになる。
母上は母親としての育児放棄や虐待などを罪に問われ、裁判の結果、投獄された。さらには僕の謎の属性に関する国をあげての研究の妨げとして、国家反逆罪としても裁かれた。
そして父上も裁判の結果、執行猶予4年を言い渡されたらしい。
いつの間にそんな事が……って父上が執行猶予4年?なんで……?おかしいよ、そんなの。だって父上は何もしていないのに。
「何もしなかったのがダメだったんだよ。」
考えてた事が口に出ていたことに気づき、うっとした顔をすると、兄上がふふっと顔をほころばせた。
そんな変な顔をしていたのかなと、考え込むが多分大丈夫だと思いたい。
それから聞いた事は予想外所の騒ぎではなかった。
どうやらこの国では、親が子に暴力やそれに準ずる行為をかなり厳しく取り締まっており、今回の母上の行為は国家反逆と同じくらいの罪の重さと言われている。
ここまで罪が重くされた経緯については完全に謎であるが、家族関係のトラブルはかなり大きな罪として取り扱われる。
そして何も出来なかった父上もその責任を問われたのだそう。兄様も最初は裁判にかけられたそうだが、父上の全力の弁護により無罪となった。
これは後で噂程度に聞いたものだが、なぜ何も出来なかったかと言うと、母上は元伯爵家の令嬢であり、その伯爵家は王族の血を引いており繋がりも深かったため、常に脅されていたのだそう。
そんな話をしている時に父上からぐぅ~と音が鳴った。
「ぶほっ!」と思わず吹き出す兄様に顔を赤くしながらやめてくれという父上はとても愛らしかった。
それから食べようかと父上が言い、僕は慣れない手つきで料理を口に運ぶ。初めて食べるその味につい「美味しい」と言葉を零すと、嬉しそうで泣きそうな顔で父上と兄様が見つめてきた。
そして次に父上が言ったのは、この食事の後に家族の絵を書いてもらうらしい。これは最後に父上がいつでも愛する息子を思い出せるようにと願ったことによるものだそう。
暫くして画家の方が到着し、下書きが終わったらしく解放されると絵が完成するまでかなり時間がかかるとの事。できた時には僕と兄上に見せてから、父上に届けるとのことで、絵を見られる事に安堵した。
その後お茶をしたり、一緒に街に出たりして、楽しい時間を過ごした。
そうしてフレイム男爵家の最後の1日が終わった。
◆◆◆(sideブーム・フレイム)
私はブーム・フレイム。男爵だ。
と言っても明日からはただの平民な訳だが。
今日は今までで1番幸せだった。堂々とリドルを愛せて、アルバも幸せそうだった。今まで出来なかった、リドルとの食事やリドルのとびっきりの笑顔を見て、思わず泣いてしまった。
永く続いたフレイム男爵家の歴史をここで終わらせてしまうことを両親に申し訳なく思いつつ、この幸せな時間をもっと過ごしたいと思ってしまった。
もう戻ることは出来ないが、息子である、アルランディス・ルナ・マードックとリドル・ルナ・アビスガードの幸せをこれからも願う。
1
あなたにおすすめの小説
愛を知りたくて
輪道響輝
BL
僕にはとある記憶がある。
それは呪いの記憶。
どうしようもない後悔と深い深い未練が交差する記憶。
もっと彼を見ていれば、もっと彼を愛せていたなら。もっと違う結末になったのかな。
一体僕の望みはなんなのか。
それは愛が知りたい。
◆◇◆
後悔と未練の呪いを抱えたクズ男が愛を知る、ドロドロの成長ストーリー。
この結末はきっと幸せだ。
好きなわけ、ないだろ
春夜夢
BL
放課後の屋上――不良の匠は、優等生の蓮から突然「好きだ」と告げられた。
あまりにも真っ直ぐな瞳に、心臓がうるさく鳴ってしまう。
だけど、笑うしかなかった。
誰かに愛されるなんて、自分には似合わないと思っていたから。
それから二人の距離は、近くて、でも遠いままだった。
避けようとする匠、追いかける蓮。
すれ違いばかりの毎日に、いつしか匠の心にも、気づきたくなかった“感情”が芽生えていく。
ある雨の夜、蓮の転校の噂が流れる。
逃げ続けてきた匠は初めて、自分の心と正面から向き合う。
駅前でずぶ濡れになりながら、声を震わせて絞り出した言葉――
「行くなよ……好きなんだ」
誰かを想う気持ちは、こんなにも苦しくて、眩しい。
曇り空の下で始まった恋は、まだぎこちなく、でも確かにあたたかい。
涙とキスで繋がる、初恋の物語。
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる