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第二章 代償と揺らぎ
透明な夢
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あぁ、完全に死んでしまった。バルバトスなら僕を殺せると思ったのに。やっぱり人間に殺させるのが1番確実か。いや、その必要はないか。この森はアビスの力がすごく強い。ならば、ここにずっといればいつかは……
「リドル君!!!」
?
気のせいか?ここは荊棘の森の中心部。そんなとこまで人が来ることは無いはずだ。それにこの声、ヘルブラム殿下?あれからまだそんなに時間は経ってないのに。どうして?
あれ、おかしいな目が滲む。視界がどんどん悪くなってくる。
次の瞬間、暖かい腕が体を締め付けた。少し苦しいのに、心地よいその腕に体を預ける。すると力強いその腕に何故か安心感を感じた。
そう言えば最近というか、アビスガード家に来てから抱き締められる事が心地よくなった気がする。
前までは良く分からない人にずっと嫌なことをされていたから、抱き締められることに抵抗があった。最近になってあの頃させられていた行為の意味を知り、かなり震えたのを覚えてる。
なのになんでこんなにも心地いいんだろう。なんで安心出来るんだろう。なんで涙が出止まらないんだろう。
ずっと辛かった。
嫌なことをさせられて、殴られて、蹴られて、でも僕のせいでみんなが不幸になるのはもっと苦しくて……もう消えたい。何も誰もいないところに1人でずっと消えていたい。
本当に疲れたんだ。
ぽつりぽつりと思いが溢れ出る。
「消えたいだなんて言うな!!」
パチンと頬が鳴る。少しヒリヒリとする頬を抑え、また思いが漏れ出す。
「もう……どうしようもないじゃないですか。どれだけ頑張っても、みんなを傷つけてしまう、幸せを奪ってしまう。」
「それならどうしてブライト君は君を助けた?!命を懸けて君を守ったんだ!!それはリドル君に生きていて欲しかったからなんだ!」
頭をガツンと殴られたようだ。
どうして、気づかなかったんだろう。考えようともしなかった。この命は、ライが紡いでくれたんだ。ずっと蓋をしていたんだ。本当に僕はバカだな。
「ライ、ヘルブラム殿下。ごめんなさい。自分勝手でした。」
ふとヘルブラム殿下を見ると綻びた顔をしている。いつも人に助けて貰ってばかりで、まだ何も出来ないけれど、それでも生きていこう!
ライや実父、アルバ兄様にヘルブラム殿下、義父上に義母上。みんなが紡いでくれたこの命を無駄にしてはいけないな。
◆◇◆
しばらくして、義父上が合流し、少し大変だった。バルバトスが倒されたり、僕が新たな魔法を使ったりして報告する事が山のようにあるらしい。
今回僕が使ったのは転移魔法と浄化魔法らしい。
聖属性と魔属性にしか使えない転移魔法。それからアビスガードの血を継ぐものにしか扱えない浄化魔法が使えると言うだけでかなりやばいらしい。今までの魔法の基礎が大きく揺るがされることになる。そうなると研究ももっと大きくなる。
まだ分からない事の方が多い属性だが、もっと研究が進めば白い目で見られることも無くなるかもしれない。でも……よく考えてみるとおかしい気がする。この世界で初めての属性って、つまり今まで誰もこの属性を持つことがなかったって言うことだよね。この長い歴史の中で本当に誰も居なかったのだろうか?
「リドル君、行くよ。」
まぁ今はいいや。今はただ幸せなこのひと時を噛み締めていたい。
ヘルブラム殿下の手を取るとコロッとした笑顔をして、馬車まで案内された。この後学園には戻らず、そのまま王宮に行き、フリーナ陛下に呼び出され、今回のことを事細かに説明した。
気持ちが落ち込んで、気づいたら転移魔法が発動していたこと、普通の転移魔法と違うところがあったこと、バルバトスを無意識に倒したことなど、様々なことがあった。
フリーナ陛下への説明もおわり、用意されている部屋に向かう。部屋に入ると、グランドピアノが黒く光を反射している。久しぶりにピアノが弾きたくなり、義父上におねだりしてみたら、快く頷いてくれた。
鍵盤を押すとポロンと音が出る。適当に押したその一音は、あの時の歌の一音目と同じ音。そこからどんどんと指が動き、思い出に残るあの歌が零れ出てくる。
彼のように美しく、繊細な声は出せない。けれど、歌を歌っていると、何故か心がとても軽くなる。
これが彼の言っていた歌の力なのだろう。どんどん思いが溢れ出てきて、ピアノの音と声に変わる。部屋に入ってきたヘルブラム殿下や、アムール様にも気づかず、夢中で奏でていた。
歌が終わると、拍手が聞こえてきた。
「リドル君!!! 」
その声で初めてお二人がいることに気がついた。アムール様に至ってはぐちゃぐちゃな顔をしながら手を叩いていた。
その後は3人で小さなお茶会をし、そのままアムール様は帰られた。ヘルブラム殿下と部屋に向かいながら、少し話をした。
過去の話や、未来の話、そして愛について歌うライのこと。そしてリドルという名の由来まで、色んなことを話した。部屋に着いてからもまだ続き、気づいたら一緒に寝ていて、起きた時とてもびっくりした。
◆◇◆
久しぶりに学園に行ったら、僕の姿を見たアルバ兄様が昨日のアムール様みたいな顔をしながら、拘束してきた。周りのすごい視線を感じながら、身を任せていると、呆れを切らしたアムール様に剥がされてた。
アルバ兄様は少しぷすっとしていて、血は繋がってないけどすごく兄弟をしていた。
そんなこんなで特に何事もなく、行くはずもなく。まもなく試験だという現実を突きつけられた。
何がやばいかと言うとここ1ヶ月近く学園に来れなかったためとても勉強が遅れている。やばいとてもやばい。詰んだと言う顔をしていると、それを見たヘルブラム殿下が必死に口を抑えて腹筋を鍛え始めた。そんなに面白いのかな?
それよりもどうやって、試験対策をしようか……
問題集かそれとも教科書か、教えて貰うのもいいかもしれない。
色々悩んだ末、教えて貰いながら問題集をする事にした。そうと決まればヘルブラム殿下の部屋に突撃するしかない。よしっと覚悟を決めてヘルブラム殿下の部屋のドアをノックし、声をかけるが……返事がない。仕方が無いのでドアを開けると……そこには……ヘルブラム殿下があられもない姿でゴロゴロとしていた。
え?
ヘルブラム殿下どうしたの?なんでそんな姿を?ていうか抱いてるのまさか……僕があげた猫の抱き枕の失敗作。絵面がすごいことになってる。
僕に気づいた殿下は顔を赤くしていて可愛かった。
ちなみに試験は無事に学年9位を取りました。
まだまだ努力が足りないからもっと頑張ろうと思う!!
なんてことを考えていると、突然魔法が発動した。今回は………時属性の魔法?なんだろうこの映像。
ライと義父上が何かを話している。
これは…………なんだ?
「リドル君!!!」
?
気のせいか?ここは荊棘の森の中心部。そんなとこまで人が来ることは無いはずだ。それにこの声、ヘルブラム殿下?あれからまだそんなに時間は経ってないのに。どうして?
あれ、おかしいな目が滲む。視界がどんどん悪くなってくる。
次の瞬間、暖かい腕が体を締め付けた。少し苦しいのに、心地よいその腕に体を預ける。すると力強いその腕に何故か安心感を感じた。
そう言えば最近というか、アビスガード家に来てから抱き締められる事が心地よくなった気がする。
前までは良く分からない人にずっと嫌なことをされていたから、抱き締められることに抵抗があった。最近になってあの頃させられていた行為の意味を知り、かなり震えたのを覚えてる。
なのになんでこんなにも心地いいんだろう。なんで安心出来るんだろう。なんで涙が出止まらないんだろう。
ずっと辛かった。
嫌なことをさせられて、殴られて、蹴られて、でも僕のせいでみんなが不幸になるのはもっと苦しくて……もう消えたい。何も誰もいないところに1人でずっと消えていたい。
本当に疲れたんだ。
ぽつりぽつりと思いが溢れ出る。
「消えたいだなんて言うな!!」
パチンと頬が鳴る。少しヒリヒリとする頬を抑え、また思いが漏れ出す。
「もう……どうしようもないじゃないですか。どれだけ頑張っても、みんなを傷つけてしまう、幸せを奪ってしまう。」
「それならどうしてブライト君は君を助けた?!命を懸けて君を守ったんだ!!それはリドル君に生きていて欲しかったからなんだ!」
頭をガツンと殴られたようだ。
どうして、気づかなかったんだろう。考えようともしなかった。この命は、ライが紡いでくれたんだ。ずっと蓋をしていたんだ。本当に僕はバカだな。
「ライ、ヘルブラム殿下。ごめんなさい。自分勝手でした。」
ふとヘルブラム殿下を見ると綻びた顔をしている。いつも人に助けて貰ってばかりで、まだ何も出来ないけれど、それでも生きていこう!
ライや実父、アルバ兄様にヘルブラム殿下、義父上に義母上。みんなが紡いでくれたこの命を無駄にしてはいけないな。
◆◇◆
しばらくして、義父上が合流し、少し大変だった。バルバトスが倒されたり、僕が新たな魔法を使ったりして報告する事が山のようにあるらしい。
今回僕が使ったのは転移魔法と浄化魔法らしい。
聖属性と魔属性にしか使えない転移魔法。それからアビスガードの血を継ぐものにしか扱えない浄化魔法が使えると言うだけでかなりやばいらしい。今までの魔法の基礎が大きく揺るがされることになる。そうなると研究ももっと大きくなる。
まだ分からない事の方が多い属性だが、もっと研究が進めば白い目で見られることも無くなるかもしれない。でも……よく考えてみるとおかしい気がする。この世界で初めての属性って、つまり今まで誰もこの属性を持つことがなかったって言うことだよね。この長い歴史の中で本当に誰も居なかったのだろうか?
「リドル君、行くよ。」
まぁ今はいいや。今はただ幸せなこのひと時を噛み締めていたい。
ヘルブラム殿下の手を取るとコロッとした笑顔をして、馬車まで案内された。この後学園には戻らず、そのまま王宮に行き、フリーナ陛下に呼び出され、今回のことを事細かに説明した。
気持ちが落ち込んで、気づいたら転移魔法が発動していたこと、普通の転移魔法と違うところがあったこと、バルバトスを無意識に倒したことなど、様々なことがあった。
フリーナ陛下への説明もおわり、用意されている部屋に向かう。部屋に入ると、グランドピアノが黒く光を反射している。久しぶりにピアノが弾きたくなり、義父上におねだりしてみたら、快く頷いてくれた。
鍵盤を押すとポロンと音が出る。適当に押したその一音は、あの時の歌の一音目と同じ音。そこからどんどんと指が動き、思い出に残るあの歌が零れ出てくる。
彼のように美しく、繊細な声は出せない。けれど、歌を歌っていると、何故か心がとても軽くなる。
これが彼の言っていた歌の力なのだろう。どんどん思いが溢れ出てきて、ピアノの音と声に変わる。部屋に入ってきたヘルブラム殿下や、アムール様にも気づかず、夢中で奏でていた。
歌が終わると、拍手が聞こえてきた。
「リドル君!!! 」
その声で初めてお二人がいることに気がついた。アムール様に至ってはぐちゃぐちゃな顔をしながら手を叩いていた。
その後は3人で小さなお茶会をし、そのままアムール様は帰られた。ヘルブラム殿下と部屋に向かいながら、少し話をした。
過去の話や、未来の話、そして愛について歌うライのこと。そしてリドルという名の由来まで、色んなことを話した。部屋に着いてからもまだ続き、気づいたら一緒に寝ていて、起きた時とてもびっくりした。
◆◇◆
久しぶりに学園に行ったら、僕の姿を見たアルバ兄様が昨日のアムール様みたいな顔をしながら、拘束してきた。周りのすごい視線を感じながら、身を任せていると、呆れを切らしたアムール様に剥がされてた。
アルバ兄様は少しぷすっとしていて、血は繋がってないけどすごく兄弟をしていた。
そんなこんなで特に何事もなく、行くはずもなく。まもなく試験だという現実を突きつけられた。
何がやばいかと言うとここ1ヶ月近く学園に来れなかったためとても勉強が遅れている。やばいとてもやばい。詰んだと言う顔をしていると、それを見たヘルブラム殿下が必死に口を抑えて腹筋を鍛え始めた。そんなに面白いのかな?
それよりもどうやって、試験対策をしようか……
問題集かそれとも教科書か、教えて貰うのもいいかもしれない。
色々悩んだ末、教えて貰いながら問題集をする事にした。そうと決まればヘルブラム殿下の部屋に突撃するしかない。よしっと覚悟を決めてヘルブラム殿下の部屋のドアをノックし、声をかけるが……返事がない。仕方が無いのでドアを開けると……そこには……ヘルブラム殿下があられもない姿でゴロゴロとしていた。
え?
ヘルブラム殿下どうしたの?なんでそんな姿を?ていうか抱いてるのまさか……僕があげた猫の抱き枕の失敗作。絵面がすごいことになってる。
僕に気づいた殿下は顔を赤くしていて可愛かった。
ちなみに試験は無事に学年9位を取りました。
まだまだ努力が足りないからもっと頑張ろうと思う!!
なんてことを考えていると、突然魔法が発動した。今回は………時属性の魔法?なんだろうこの映像。
ライと義父上が何かを話している。
これは…………なんだ?
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