愛について歌うきみと

輪道響輝

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第二章 代償と揺らぎ

悪夢は再び

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 ※本話では不同意性行や強姦、暴力など、トラウマを誘発しうるシーンを含みます。




 〰



 音が途切れるとヘルブラム殿下が入ってきた。ご飯の時間だ。ピアノを弾くのに夢中で着替えをしていなかったので急いで準備をすると大きくて頼もしい手を差し出された。喜んでその手を取るとしっかりと鍛えられたその手はゴツゴツとしていて、少し安心できる手だった。小さくてすべすべとした僕の手とは真逆の手。

 そのまま手を繋ぎながら、現れた僕たちを見てまたしてもゾファン殿下にからかわれ、そこにフリーナ陛下とウィリアム王配殿下も参加してきた。本当になぜこうなった?

 ………でも僕は将来何をしているのだろう。
 王宮にいるのか、はたまたまた別の何かをしている可能性も……

「りっリドル君!この人たち……止めて……!」

 ヘルブラム殿下を見ると顔を真っ赤にして全力で否定していた。腕をブンブン回して、体が小さく見えて、その姿まるでハムスター。

「可愛いな」

 思わず零れ落ちたその言葉は、ゾファン殿下によりしっかりと拾われてめちゃくちゃにからかわれた。
 終いにはフリーナ陛下に真剣な眼差しで、ヘルブラム殿下との婚約を打診され、本気で反応に困った。

 その後、憂鬱な学園の支度を終え、馬車に乗る。さっきの事もあり、ヘルブラム殿下と2人きりになるこの時間は少し気まずい。

 ◆◇◆

 その後無事に学園につき、教室に行く。いつもギリギリに来るようにしているので、それに合わせたアムール様と合流し、教室に行くと、いつも通りの冷たい空気が流れていた。

 いつもの事とはいえ、この空気の中教室に入るのは、躊躇ためらってしまう。するとなんとも気にしないヘルブラム殿下とアムール様に手を引かれて強制的に入れられた。

 いつも「気にしないでいい」と言ってくれるが、それでも気になるものは仕方がない。それに元々男爵家なうえに、謎の属性、それにライの事や、魔法の暴走など、こうなっても仕方がない原因は色々ある。
 僕なんかを庇ってライは死んだし、本来なら、色んな人と交流を深めているはずのヘルブラム殿下を、1箇所に縛り付けているのも僕だ。だからこそ、朝の件も断り、ライの想いを受け取って今生きている。

 今でも思う。皆に求められていたライを殺しておいて、自分はのうのうと生きていていいのかと。ヘルブラム殿下を縛り付けて何をしているのかと。

 1人になりたいな

「ヘルブラム殿下、少し御手洗に行ってきます。」

 そう言い、一人で教室から出た。なんの行先もなく一人でぽつぽつと歩いていて気付いたら周りには誰もいない、裏道にいた。ちょうどいいので座り込んで顔を膝に埋め込む。するとふと声が聞こえた。

「やっと1人になったか。」

 次の瞬間意識が飛んだ。

 そして、起きた時には、地獄が待っていた。

 ◆◇◆

 起きるとそこは薄暗く、見た事のない場所で、淀んだ空気が流れていた。少し寒くて、ぶるっと震えると、人が入ってきた。それは少し背の高く、薄暗い緑色をした髪を垂らし、シュミーズドレスをまとった女性だった。

「穢れた魔力の持ち主よ、お前はなぜ生きているのだ?ジジにあれだけぞんざいに扱われ、穢れた力だと疎まれ、アビスガード家の御子息を殺し、殺されかけたのに、なぜ今も生きている?存在価値がないのになぜのうのうと生きていれる?」

 だ……れ?
 それに……生きて……いる……理由?
 そんなの……………代償でしか…………ない。
 僕も何度も消えたいと願った。何度死のうとした事か。なんで?そんなの分かりきってる。それは…………僕に課された…………罰…………あるいは、対価。

 僕に幸せになる権利はないし、死ぬことも許されない。それに、本来であればもうないこの命は穢れている。そんなものを持っていくのは地獄でも天国でもない。

「これは…………罰…………だよ。穢れている、僕への罰。」

「ふっ、なら苦しめばいい。お前たち、入っていいぞ。」

 その言葉と同時に体の大きな男が数人入ってきた。その中には昔、実母の命令でやらされた人もいた。体が無性に震える。女はいつの間にか命令を下していて、1人の男が服を脱がしてくる。もう1人は、赤く光る焼印のようなものを持ってこちらに近づく。そして。それを背中に押し付けられた。

 肌が、燃えるように熱く、火傷のような痛みが襲う。
 痛い。痛い。そう叫ぶうちに喉はかすれ、もうろくに声も出せない。そして傷口にどす黒い魔力が流れてくる。魔属性の毒魔法だ。効果は術をかけた当人が決めれる。

 少しの時間が経ち、背中の痛みも少しマシになった頃それはやってきた。毒が体に回ってきた。体が熱くて、頭がふわふわする。視界がぼやけて、並行感覚もほとんど無くなる。

 そして、意識だけ残ったまま思考が停止した。

 ◇◆◇

 リドルに毒が回ったのを確認した男たちは、ケラケラと笑っていた。リドルは意識ははっきりするものの、抵抗するほどの力はなく、程なくして行為が始まった。

 男たちは無理やりに肉棒をリドルへ挿れ、欲望のままに犯した。抵抗すらできないリドルはいつの間にか打たれていた媚薬により、さらに壊れていく。

 しかし、搾取されるだけの行為に快感も興奮も全くもってなく、ただただ終わるのを待つだけだった。一人とやってまた1人。全員終わったかと思えばまた新しい者が来て、また1人、また1人と、それは一日に収まらず、いつまでも続いた。
 無論、食事や睡眠、入浴などは全くもってさせて貰えず、意識がなくなってもまた続いた。

 一方で王宮では、学園でまたも失踪したリドルを捜索し始めていた。今回は、魔力の痕跡から、リドルの意思に反した、拉致だと結論づけられ、早急に会議が開かれた。

 この会議では、フリーナによる手配で、王族に近しいキルア派の貴族だけが集められた。
 これはキルア派以外の宗派ではリドルの力が穢れた力として見られているのが原因だ。

 これはかつてのバアル・ゼブルがキルア派以外の宗派に危害を加え、その宗派の主となる神を邪神と罵ったことにより、似た力をもつリドルにも矛先が向いた。

 それにフリーナとしては、これから国を、世界を救いうる力を手放すのは、惜しいし、何よ、兄弟との比較により自信を無くし、心の底から笑えることの無くなった、ヘルブラムを笑顔にしてくれたリドルへの感謝もある。

 だからこそ、ヘルブラムの伴侶にリドルを進めたのだ。リドルなら、ヘルブラムを幸せにしてくれると信じているのだ。

 会議では、国内全ての土地を一斉に調査する運びとなった。

 ◆◇◆

 会議から1ヶ月がたった。
 リドルはまだ見つからない。
 国の領土は全て調べた。王宮の中から、貴族の領地、平民の家、貴族の邸、それから禁止区域や森のかな、海の中、そして国境ギリギリまで調べた。しかし、どこにもいないのだ。

 そして国外にも捜索範囲を広げた。幸い、2ヶ国だけは許可が出たが、それ以外の国からはきっぱり断られた。ヴィーナス国以外の国はあまり外交的でないため、2ヶ国許可が出ただけでも運がいいほうだ。

 しかしその2ヶ国にもリドルはいなかった。ここまでで約5ヶ月。もうそろそろヘルブラム達は進級するタイミングだ。ここまでで見つけ出したかったとヘルブラムは悔しくて泣いた。

 そして今、フリーナは、国際裁判所にて会議を開いていた。

「皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。」

 その厳粛な挨拶から、リドルの事を事細かに話した。一部ではとやかく言われたが、そんなものは気にしていなかった。何せ、自身の愛する息子の婚約者(仮)であり、国どころか、世界の救世主になりうる希望の星が奪われたのだ。黙って見過ごす訳には行かない。
 それに王の座に着いた時に「国民一人ひとりは国の宝だ」と言う教えを受け取っていて、それを大切に守って来た。

 しかし、頷くものは終ぞ現れなかった。やはりフリーナを女だからと舐めているものも多い。それは今に始まった事ではないが、それでも彼女に募る怒りは当然ある。いつもは我慢出来るその怒りも今ではリミッターが外れてしまい、気づいたら叫んでいた。

「この子は、宝だ!国の財産であり、希望であり、未来である。その喪失を黙って見ていろ?ふざけないで頂きたい!それに事件からもう5ヶ月経っている。あの子は今どこでどんなことをされているのかも分からない。それに1部からは疎まれる存在だ!そんなものが、丁寧な扱いを受けていると思いますか?もしかしたらもう死んでしまっているかもしれない。それでも、遺体だけでも、拾ってあげるのが、あの子のためになる。それなのに、あなた方はそれすらもさせない。この際、宣言致します。貴方が、態度を改めないようでしたらこちらは敵意があるとして判断し、兵力を持って無理やりにでも捜索をします。」

 その叫びは収まることを知らない。今まで耐えてきた怒り、焦燥、悲しみ、全てが出てきた。国際会議はここで終わり、決断はそれぞれが持ち帰り、何の成果もないまま完全に終わった。

 ◆◇◆

 あれからどれだけたったんだろう?僕の計測が間違ってなければ2ヶ月。2日に1回食事をとり、水を浴びる。もはや人間の扱いはされていない。

「うわっ本当にいい顔してんね。女みたいだ。」
「だろ?で、これを飲ませたら最高になる。最高峰の媚薬だ。これを使っておきる中の痙攣がすごいいいんだ。」

 そんな事を話しながらまた男が入ってきた。そしてそのまま媚薬を飲まされ、また抱かれる。もちろん、性病の対策なんかもないし、法外な薬も使われる。そのおかげで吐き気と目眩が止まらない。そしてやはり、搾取されるだけの行為に快感はない。

このままここで終わるのかな?

「おら!もっと声出せ!」

痛い、痛い、痛い、いた……い。
あ………………また…………いしき…………が…………………………

「こいつ、気絶してるぞ!」
「貧弱だな。それで、どうだった?」
「発散にちょうどいいわ。」

ほん…………とうに………………きも…………ちわ……る……
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