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しおりを挟む「愛してるよ……カタリナ」
婚約者が私に甘い口づけをしてから、愛の言葉を私に囁きました。
私はその言葉を心の底から信じていました。
そして、彼と同じくらいに私も彼のことを愛していました。
きっと、これは嘘じゃない。
本当のアイ。
「私も愛していますわ……」
私も小さく彼の耳元で囁き、その夜はお互いを求め合いました。
いつもと変わらない、二人だけの夜。
私はとても満ち足りた気持ちで、彼の腕のなかで心地よい眠りにつくのでした。
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その日、私は真っ暗ななかを漂った。
夢のなかか分からないような、不思議な空間。
そこには歪な形をした黒い小さく不気味な星の輝く、ハートがたくさん浮かんでいた……
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パチリと目が覚めた。
そして私はすぐに彼の温もりが無いことに気が付いたのです。
「今日は抱きしめていてくれなかったのですね」
いつもなら、私が目覚めると彼がおはようのキスをしてくれていました。
しかし今日はその温もりが隣にはありませんでした。
「どうしたのでしょうか。お手洗いにでもいったのでしょうか」
私はいつもとは違う朝の空気に少しだけ不穏さを感じています。
変化とは大抵の場合、悪い方向へとむかいます。
そして今のこの状況が私にはとても良いものとは思えないのです……
「今日は幼馴染のシーニャが来る日だったわよね……。まさか……ね」
私は今日の予定を思い出し、ふと最悪のシナリオが思い浮かんでしまいました。
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あの夢のなかで現れた漆黒のアイの結晶が再び心のなかに現れてきました。
これは果たしてアイなのでしょうか。
私にはわかりません。
この胸のなかにあるゴオゴオと黒い炎をあげて燃え上がる、この漆黒は……
果たして……
「はぁ…はぁ……」
私は気が付いたら走っていました。
寝起きの重い体で全力疾走しました。
屋敷に雇っているメイドたちが私のことを驚いた様子で見て、何かを言いながら追いかけてくるのがわかります。
しかし、私はそんなことを気にしていられません。
今はもう……
私の全てが……
漆黒に……
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「カタリナはここにいます!!!!!!」
私はなかば確信を抱いて、庭園の影、いつしかの日に彼と密会をしていたあの秘密の場所に駆けこんでいったのです。
「カタリナはこ、ここに……」
すると、そこには幼馴染のシーニャが私の婚約者と淫らに抱き合っている姿がありました。
「………やっぱりそうだったのですね」
わかっていました。
私は見ない振りをしていただけだったのです。
そうだと分かっていながら、わからないふりをして自分を騙していたのです……
彼のアイは偽物で……
いつしか私のアイもマガイモノになっていたことを……
私は知っていたのです……
『ぼうっ』
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これは私の嫉妬
怒り
憤怒
哀愁
憐憫
憎悪
全ての負の感情の集合体。
私はその感情に支配されて……
幼馴染も
婚約者も
もう何もかもどうでもいい。
全て壊れてしまえばいい……
『ゴオオオオオッ』
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ゆらゆらと燃える私の漆黒。
全てを消し去ってしまえ。
幼馴染との思い出も……
婚約者との、少しの思い出も……
全て……
「うあああああああああああああああ!!!!!!!!」
私は思いっきり彼らのもとに突っ込んでいきました。
「な、ななななんあなな!!!!」
「えっカタリナ!!!?? どうしてここに!!??」
2人の困惑の声が聞こえます。
しかし私はなおも突っ込んでいきます。
突っ込んでからどうするのかなんて考えていません。
やぶれかぶれ、というやつです。
「ちょっとまって!! カタリナ……落ち着いて!!!!」
シーニャの声が聞こえた瞬間でした。
婚約者が大きな悲鳴を挙げました。
「あっシーニャ、いま動いたら!!!! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「えっ……」
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
『ぼきっ!!!!!!』
「えっ……」
…………
「えっ?????」
ぐったりとする彼を抱えるシーニャと私は目が合いました。
それが全ての終わりでした。
婚約者の終わりの合図でした……
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どれほどの時間が経ったことでしょう。
今では私は3人の可愛い息子と娘に恵まれ、幸せな結婚生活を送っています。
あのころの元婚約者との記憶はすでに薄くなりつつありますが、唯一鮮明に覚えていることがあります。
それはたまにふとした瞬間にフラッシュバックするのです。
それほどまでに鮮烈なひとつの出来事。
「あっ……あのひと……昔」
私は部屋から見える庭園の景観を長めながら、こう呟くのでした。
「ちんぽ折れたのよね……」
【完】
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