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7「夏の学校、校舎裏に流れる清流で~改~」

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 セミの鳴き声がうるさくなり始めた7月。

 木々は青々と生い茂り、生命の力をまっすぐに感じる。

 何をしていなくても、自然と汗が流れる。それを心地いいと思う人にとって、7月ほど最高な季節はないだろう。

 僕は7月の学校が好きだ。汗が噴き出る季節が好きだ。生きているって感じがして、安心する。

 そして、僕はそんな大好きな季節、7月に初めての彼女ができた。

 高校2年生にして初めての彼女。周りと比べたら、遅い方かもしれない。でも他人との比較なんて気にならないほどに、僕は彼女に夢中になっていた。



「ねぇ、私と付き合ってよ」



 彼女は淡白すぎる性格をしていた。サバサバしているんだけど、それが全然似た目にあっていない。顔はとっても幼くて、世間でいうロリ顔というやつだろうか。とにかく、高校二年生ながらも幼女と見間違えるような姿をしていた。

 それに合わせて、彼女の服装のセンスも幼女にピッタリのものだったから、なおさらだ。

 もしかすると、彼女は自ら進んで幼女として生きているのかもしれない。


「僕でよければ……」


 そんなぎこちない返事で、僕たちは付き合うに至った。ひどく事務的な感じがしないでもなかったが、それは僕にとっては些細なことだった。付き合えたという実感が、僕の中ではとても満ち足りた気持ちをもたらしてくれて、僕は有頂天になった。それは必然のことだった。


 数週間ほど、僕は彼女と一緒の時間を過ごした。




 学校の屋上で一緒にご飯を食べた。

 屋上からは、見渡す限りの緑。僕たちの高校は四方を山々に囲まれていた。防災マップなどでは、土砂災害の危険がある地域として登録されているような場所だ。

 その緑がとても夏を感じさせてくれた。緑に囲まれながら、食べるお弁当は教室の騒然とした空気の中で食べるそれとは、全く違っていた。明らかにこちらの方が美味しい。何倍も、何百倍も。彼女と一緒ということもそれを手伝ったのかもしれない。



 授業中、こっそり抜け出して彼女と落ち合ったりもした。


 その時に、僕は初めて彼女とエッチをした。それは唐突にやってきて、一瞬のうちに僕を動物にかえらせた。僕は必死で彼女を求めた。僕と同じように彼女もまた、激しく、僕以上に激しく……僕を求めていた。

 その彼女の気持ちに僕はいっぱいになって、彼女のなかに思いっきり射精した。とてもとても、気持ちよくて、満ち足りた気持ちになれた。


 彼女の柔らかな肌の感触に一生埋もれていたいと感じられた。



 それから、僕たちはエッチに夢中になった。


 毎日、彼女とセックスしていた。それはもう、数えきれないほど。


 中でも、学校裏にある涼やかな清流でセックスをしたことが忘れられない。


 放課後のオレンジ色の光が空気を包み込む時分だった。少しだけ憂いのような気持ちが心に降り立ってくるときだ。


「ねぇ、私たちって本当にこれでいいのかな」


「どういうこと?」


「このままでいいのかな?」


 彼女はセックス中にそんなことを口にした。その声が何かを必死で訴えているような気がした。行為中の震えた声で、そう言うものだがら、ひどく滑稽なものに聞こえてしまう。

 彼女の目には少しだけ涙が溜まっていたように見えた。


 でも僕は……


「愛しあっているんだから、いいと思う。僕たちはこのままでいいと思う」


「うん、そうだよね……」



 僕と彼女は必死で腰を振り合った。僕も、彼女も、お互いがお互いを求め合った。


 二人の体が完全に溶け合って、深く深く混ざり合っていくような感覚が、そこにはあった。


 足元の冷ややかな清流が、僕たちの足元を通り過ぎていく。


 確かにそこには夏があった。


 忘れられない夏があった。









 その翌日。



 彼女は僕の元から消えていた。


 この町を出て、都会へ引っ越すのだそう。


 詳しい行き先は分からなかった。


 急いで、SNSを確認すると彼女の方からブロックされていた。


 あまりにも唐突だった。


 あまりにも無慈悲だった。


 あまりにも冷徹だった。


「なんだよ、これ」


 僕は何も考えられなくなって、ひどく落ち込んだ。これ以上、悲しめないと言ったところまで悲しんだ。


『私たちって本当にこれでいいのかな』


 僕はずっと、ずっと、この言葉の意味を考え続けている。


 時は無慈悲に過ぎていく。


 その中で僕はずっと、ずっと……


 ……

 ……

 一体

 ……

 ……

 何を考えている?

 ……

 ……

【完】
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